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雑感ノ門 ~ウタカ史上最高のウタカ

その筋の方々の皆さんこんにちは(こんばんにゃ)。

毎年のように異なるチームで活躍する助っ人ウタちゃんことピーター・ウタカさん(37)。「近年の当たり年である2016年に匹敵する出来」とか、「ここ10年で最高の出来」とか、「史上最悪の順位だがウタカの品質は別。ポストプレーとゴールのバランスが良く軽やか」とか「2016年、2019年と並び、珠玉のストライカーとして歴史に刻まれる」とか「天候などの条件は厳しかったが、有望で生産者のテクニックが重要な年」とか、毎年のように評価を受ける中、今季は「ウタカ史上最高のウタカ」との呼び声も。その魅力を、古巣・甲府戦直前の今、ひもといてみよう。

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(年度別ウタちゃんデータ。出典は football-labさんより)

衰えぬシュート精度

→2:54~/ピックアップのゴールシーン

曺貴裁監督曰く「ゴール前の嗅覚であったり、決める力は日本有数ですし、シュートへの自信はかなり高いレベル」。厳しいマークを受けようが、シュートコースが限定されていようが、ゴールを撃ち抜く力、強引にでも決めきる力は今のJ2では頭ひとつ抜けている。27節東京V戦のゴールなんかはどうやって防げばいいのこれ?ってレベル。だがしかし、実は決定率(ゴール/シュート数)自体は年々落ちてきている模様【上記football-labの年別データ参照】。実際、今季は外してるシーンも結構ある。それでもシュート精度自体の衰えは感じさせない。

円熟味を増す冷静さ

→1:28~/ピックアップのゴールシーン

20節岡山戦の先制ゴール。パッと見、相手の連携ミスなのだが、まずはチェイシングから相手をミスが起こりやすい状況へと追い込んでいる。そして相手GKがクリアキックに入る直前にワンタッチでボールを動かして、躱しながらゴールの位置と距離を冷静に見極め、ロングレンジのボレーシュート。競ったボールを強靭なフィジカルでマイボールとして確保するなら普通だが、ボールをあえて争点から離して優位な位置を作るという円熟のプレー。今季は特に競り合いの場面での冷静さが目立つ。24節町田戦の先制ゴール(※下に動画あり)なども、競ったあとに相手が上手く処理しきれないのを、冷静に見定めてから振り抜いている。

むしろ上達中?のテクニック

→0:44~/ピックアップのゴールシーン

26節水戸戦の先制点は「ラインブレイクの感覚」+「(ロングボールを)競りながらの落とす技術」+「空中でボールを動かすテク」が重ね合わさったウタちゃんの魅力詰め合わせゴール。特に空中にあるボールを相手より先に右足で触ってその流れのまま左足のシュートモーションに入る動きは超絶テクとしか言いようがない。スピードやパワーは全盛期より落ちているかもしれないが、しなやかなテクニックは衰え知らず。いや、むしろ経験値の裏打ちされた余裕と予測能力によって上手くなっているのではないか。

新境地!2列目ウタカ、3列目ウタカ

→3:26~/ピックアップのアシストシーン

24節町田戦では、後半頭からイスマイラが入り、ウタちゃんはトップ下のようなポジションに。プレッシャーの手薄な場所でボールを持つと、卓越したチャンスメーカーへと転じた。トップ下といっても2列目固定な訳でなく、流れの中では味方が追い越せば3列目の位置にいたり。中盤の底からボールを捌く姿は、まるで晩年のジェイジェイ=オコチャのよう。全盛期は前目のテクニシャンだったオコチャも、日韓W杯の頃にはフリーマンのように受けては中盤の底から悠然とゲームを動かす司令塔になっていた。2列目、3列目に下りたウタカのチャンスメイク能力を見ると、ナイジェリアの大先輩になぞらえてしまいたくなる。27節東京V戦でも後半からイスマイラを前に置いてフリーマンっぽく振る舞って相手を混乱と恐怖に陥れた。イスマイラの存在が“司令塔ウタカ”の新境地を引き出しつつある。

フィニッシャーから万能FWへ

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football-labさんより昨季と今季のウタちゃん比較(※以下の比較も同様)

ウタちゃんは毎年違うチームでプレーしていたが、京都では異例?の2シーズン目となる。昨季と今季を比較すればその違いは一目瞭然。ゴール数やシュート数のペースはだいたい同じながら、アシスト数やラストパス数は既に去年の数字を上回っている。読み取れるのは、「フィニッシュ専門ストライカー」から「パスで周囲を使える万能ストライカー」への変化。去年はいわば「ウタカ頼み」だった。その内容についてはこちらのエントリーの「金久保さんの言う通り」で詳しく書いた。

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では京都以外のチームではどうだったか?2019年甲府でのデータと比較しても同じ傾向。むしろ甲府ではアシストはわずか2で、よりフィニッシュワークに特化された存在だったということになる。(上記表には入ってないが)敵陣空中戦の数値が高く、最前線でポストプレーを求められながらも、20点は奪う助っ人点取り屋みたいなやつである。

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J1で得点王(レアンドロと同点)を取った広島時代。決定率16%を誇ったフィニッシャーながら、33試合で8アシストとそれなりにチャンスメイクにも関与。しかし今季の24試合時点で9アシストには及ばない。ゴールの決定率自体は年齢とともに落ちているのだが、今季は全盛期に比べてもアシスト数、パス数、ラストパス数などか跳ね上がっているのだ。いや、フットボーラーとしては今が全盛期かもしれない。

戦術ウタカから戦術的な駒へ

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京都は一応ピッチを5レーン(または7レーン)に縦割りして、選手が並ばないような原則を取るが、ウタちゃんは必ず中央3番レーンにいる訳ではない。1番にいたり、4番にいたりして、一見勝手に動いているように見えるが、それに合わせて周囲の選手はレーンが被らないようにポジションを取っている。なのでウタちゃんが動いてしまえば中に誰もいなくなる…という状況が今季の京都にはあまりないのである。10節山口戦を例に見てみよう。

→1:06~/ピックアップのアシストシーン | →2:27~/宮吉拓実のゴール

1点目のシーンでは、ウタちゃんが中央レーン(3番)で荻原拓也にはたいたあと、荻原が2番レーンにいるので大外左レーン(1番)に開いてボールを受けて持ち上がってクロス。中央レーンで若干人数はかぶっているものの、中央レーンに入った松田天馬が決めるという流れ。これはウタカが1番レーンに動けば、2番レーン、3番レーンに味方がきちんと入っているという典型的なシーン。去年までの「ウタカ頼み」「戦術ウタカ」とは決定的に違うのは、ウタカも戦術的な駒のひとつなのだいういうことだ。
同じ動画の2:27~の宮吉拓実のゴールは、中央レーンの武田将平に入ったところでウタちゃんがすぐ脇の2番レーンで受けるという動きがある。そしてウタちゃんがシュートに入る時には、ウタカより前に4~5人もいる。「ウタカに入れて、あとは何とかしてくれ状態」だった去年とはまったく違う役割を担っていることがわかる。

やはり今季は「ウタカ史上最高のウタカ」なんじゃないか。何より楽しそうにサッカーしてるウタちゃんはかわいい。

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