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2025シーズン京都サンガF.C.陣容チェック

早いものでJリーグ2025シーズン開幕まであと2週間。今シーズンを終えると2026年は半年シーズン→昇降格なしで夏に26/27シーズン開幕となるため、今季の成績が相当大きな意味を持つ。
そのため、J1もJ2もJ3も多くのチームは大きな冒険を避け、継続路線(現状維持+α)で臨もうとしているのが今オフの特徴だ。もちろん監督を代えて陣容を大きく変革したクラブもあるが、割合としては少数派。京都サンガも前者・「継続派」で、それもかなり強めの現状維持で今季を戦う構えとなっている。

IN・OUTおさらい

まずは昨シーズン(の最終的な登録)からのIN・OUTの動向がこちら。OUTから見ると…

《OUT》
金子 大毅 [出場]26試合1743分_[得点]0 →J2磐田
豊川 雄太 [出場]25試合1449分_[得点]4 →J2大宮
三竿 雄斗 [出場]15試合1019分_[得点]1 →パース・グローリー(オーストラリア)
鈴木 冬一 [出場]15試合499分_[得点]0 →J1横浜М
宮吉 拓実 [出場]8試合213分_[得点]1 →J2山口
松田 佳大 [出場]6試合209分_[得点]0 →《レ》J2山口
《レ》塚川 孝輝 [出場]3試合78分_[得点]0 →レ終・J1F東京
《レ》ルーカス オリヴェイラ [出場]5試合26分_[得点]0 →レ終・ヴァスコ・ダ・ガマ(ブラジル)

※2024シーズン終了時に所属していた選手

昨季後半戦の主力はほぼ全員残り、シーズンフルタイムの半分(1710分)以上出ていたのは金子のみ。その金子も終盤戦は欠場がちで終盤のスタメンはほぼそのままの陣容が残った。
戦力的尺度のみでみるとマイナスは金子、前半戦まで主力で4得点の豊川、中盤戦で存在感を見せた三竿くらいで、あとはあまりゲームに絡めなかった面々になる。

プラスマイナスを考えればマイナスの部分を埋める補強があればいい訳だが、OUTに伴う補強必須ポジションは
・金子=アンカー/守備的MF
・豊川=FW(ストライカー/右サイド)
・三竿=左SB/左CB
ということになっていた。そしてINの蓋を開けてみると…

IN》
永田 倖大←明治大学
須貝 英大←J1鹿島 [出場]13試合141分_[得点]0
長沢 駿←J2大分 [出場]28試合1488分_[得点]6
《レ》ジョアン ペドロ←ヴィトーリア(ブラジル)
飯田 陸斗←レ復・J3奈良 [出場]2試合67分_[得点]0
パトリック ウィリアム←リオ・アヴェ(ポルトガル)
奥川 雅也 ←アウクスブルク(ドイツ)

※昨季出場済の中野は含まない

さて、これで前述した「マイナスの部分を埋める補強」になっているのだろうか。全体の陣容を見ながら探っていこう。


2025シーズンの陣容をチェック

上図に凡例を加えると、選手名の下のマスは出場時間(1マス300分)、★は得点数。Lはレフティ。濃い色が新加入(復帰の飯田含む。中野は昨季出場しているので既存扱い)

GK~ようやく落ち着く。ただし年齢層高め~

OUT→なし

GKは昨季後半戦から変化なし。近年はやたらと外国人GKを取ったりしたがハマらず、GKの陣容が妙に不安定だったが、ようやくこの面々で落ち着いた。
特記事項としてはクソンユンが負傷中。太田はチームメイトからの信頼を勝ち取り安定感もあるが、昨季まで秋田の堅守を支えた圍にもチャンス到来だ。
気になるのは、4人中3人が30代という年齢バランスの悪さ。そういう意味でも若原智哉(長崎→千葉)の復帰があればバランスは良かったのだが…。

△陣容は落ち着いた
▼クソンユンが負傷中
▼3人が30代と年齢バランスが悪い

DF~バリエーションは増えるか?~

OUT→ルーカスオリヴェイラ、松田(佳)、三竿、鈴木(冬)

昨季主力はそのまま。三竿OUTに対応するINは須貝だが、須貝は左右両SBが可能で、CBも、何ならサイドの前目もこなせる。
ルーカスオリヴェイラが不発だったCBには新外国人のウィリアム。松田佳大が抜けたが大卒新人の永田が加入。怪我からの復帰が期待される麻田を含め、CBは左利きが多い。育成型レンタルから復帰の飯田もレフティだが、戦力としてはまだ計算が立たない。

新外国人のウィリアムは、チームの戦術にハマるかどうか。最終ラインから球出しできるとの触れ込みだが、そもそもそういうサッカーをあまり志向してない気もするが…。

今季の1つの注目ポイントは宮本の起用法。昨季は応急処置的にCBをやっていくうちに欠かせない存在となったが、身長171cmは弱点になる場面もあった。麻田の復帰や新戦力のフィット次第では2CBの組み合わせは変わりうる。一方で宮本の走力やカバリング能力(+根性)が比類なく、代えが効かないのもまた事実。

両SBはかなり層が薄い。ただ、須貝が加わったことで起用パターンは増えるだろう。左に麻田、右に宮本を回すことも可能。特に麻田の左SBは、悪い流れを耐えたい時の重要な手駒になる。

オプションとして3バックもこなせそうな陣容。左利きCB+鈴木orウィリアム+宮本(須貝)のようなイメージか。怪我の離脱等がなければ昨季よりも組み合わせのバリエーションは増えるだろう。

△INOUTの収支はややプラス
4枚→3枚等バリエーションは増えそう
◇宮本の起用法が注目ポイント
◇ウィリアムはチーム戦術に合うのかどうか
▼両SBの層は薄い

MF~変化の乏しい中盤~

OUT→金子、塚川

中盤は昨季の陣容から金子と(ほぼ稼働しなかった)塚川が抜けただけ。その金子枠には新外国人・ジョアンペドロが加わった。ペドロは中盤ならどこでもできるとの情報で、あるいはインサイドハーフが主戦場になるかもしれない。

インサイドハーフは似たようなタイプの選手が多く、昨季から(平戸を先発で使うと)このポジションに入ってゲームの流れを変えられるようなタイプがいなかった。昨季終盤はマルコトゥーリオや平賀が中盤に回ったこともあったが、さほど効果的でもなく…。今季も結局陣容に変化はない。ペドロが豊富な運動量でガンガン前に出ていけるようタイプなら面白いのだが。

変化を付けられるタイプがいなければ、今季もFW勢を中盤前目に起用せざるをえないが、ドイツ帰りの奥川ならマルコや平賀よりもインサイドハーフ適正はありそうだ。

△陣容に変化は少ないが、計算は立つ
◇INOUTの収支はプラマイゼロ(ペドロ次第)
▼インサイドハーフに似たタイプが多い

FW~看板3トップ頼み~

OUT→豊川、宮吉

原大智、ラファエルエリアス、マルコトゥーリオという昨季後半戦を牽引した看板3トップがそのまま残ったのは頼もしい。だが、J1昇格以来得点源を担い続けてきた豊川が抜けた“穴”はかなり大きい。
そこに1月23日になってから奥川が電撃加入。豊川とはタイプは異なるものの、両サイドも中盤前目も可。昨夏から大熊清GMが注目していたとのことで、コンディションを取り戻せばオールマイティカードになりうる存在だ。

前線は昨夏に山﨑凌吾や一美和成が抜けた上、宮吉もいなくなった。ここには長沢を加えたものの、どうしても物足りなさを感じる。主力3人が90分出ずっぱりで全試合戦える訳はないので、FWの4番手、5番手の力というのはチームの成績に直結するのだ。

となれば鍵を握るのはムリロコスタだろう。日本のサッカーに慣れ、仕掛けて敵陣を切り裂くようなパワーを発揮できれば理想的だが…。捕らぬ狸の何とやらで、ムリロが無理で平賀や安齋が伸びなければ一気に苦しくなる。その場合、結局松田天馬が左のFWで走り回るのだろう、たぶん。

△看板3トップがそのまま残った
◇豊川の穴を埋めるのは奥川か
◇鍵を握るのはムリロコスタ
▼INOUTの収支はマイナス(の可能性が高い)
▼層が薄く、若手の成長がないと苦しい

陣容全体を眺めて

「昨季主力は残ったものの、層は薄くなった」
これが陣容全体を見渡しての感想。とりわけスタメンとサブの差が大きいのでは?と映る。昨季の神戸をみても、J1上位はサブメンバーの質が高く、層も厚い。スタメンがみんな好調で怪我をしない前提ならよいのだが、負傷や疲労でスタメンが欠け始めた時、それをカバーできるほどの分厚さは残念ながら感じられない。

「左利きが激減した」
のも、トピックスのひとつ。CBに3人いるものの、前目ではラファエルエリアスと武田、ムリロコスタのみ。サイドプレイヤーは飯田だけ。当然フリーキックやコーナーキックのバリエーションは減る。必然的にプレスキッカー=平戸になるので、相手も読みやすいだろう。セットプレーの重要性は年々上がっているのだが、プレスキッカーは少ない。

そしてもうひとつ編成面で気づくのが、
「監督人脈の新加入がなくなった」

こと。

2021シーズン
→松田天馬、武富孝介、白井康介、中川寛斗
2022シーズン
→山﨑凌吾、金子大毅、アピアタウィア久、佐藤響
2023シーズン
→三竿雄斗
2024シーズン
→宮本優太、鈴木冬一
2025シーズン
→なし

曺貴裁監督就任以降、上記のように互いをよく知る選手が加わってきたが、今季はゼロに。既に就任5年目ということもあるが、編成面においては独自の人脈を持つ大熊GMの影響力が大きくなったとみることができる。

ただし、これをもって監督とGMがバラバラの方向を見ているという訳ではない。両氏が志向しているサッカー観は近く、思い描く完成図は似通っている。昨季後半戦に大熊氏が就任してから回帰した「ハイインテンシティ・ハイプレス&切り替えスピードの速さ」での勝負を遂行するための現状維持+αなのだろう。「+α」が日本未経験の外国人中心で、蓋を開けるまでわからないが。

生え抜き勢、帰ってこない問題

冒頭のOUTのところではサラッと流したが、宮吉の契約満了は京都サンガを語る上ではとてつもなく大きな出来事だった。ドライな言い方をすれば、戦力的にはマイナスではないのだが、クラブにとって宮吉との別れは甚大なるマイナスである。
たとえば福岡の城後寿がそうであるように、京都にとっては宮吉は「チームにいること自体に意味がある選手」だった。もちろん、宮吉本人がもっと試合に出たい、プレーしてこそサッカー選手であると考えるのもプロとして当然のこと。彼がチームを出ていく決断をしたのも尊重するし、去りゆく宮吉に対するクラブ側の態度も温かいものだったと思う。

という話を前提として、その後昨季レンタル等で外に出ていた選手がまったく復帰せず、次々に去っていくという事態が連発した。

谷内田 哲平(レ・安養)→大宮に完全移籍
木村 勇大(レ・東京V)→東京Vに完全移籍
若原 智哉(レ・長崎)→千葉に完全移籍
植田 悠太(レ・大宮)→千葉にレンタル
山田 楓喜(レ・東京V)→CDナシオナル(ポルトガル)にレンタル

昨年のサポーターズカンファレンスで安藤淳強化部長が「山田も木村もサンガで活躍するために外に出している」という話をしていたのだが、こういう結末となった。他クラブでは、武者修行→復帰→戦力化というサイクルができているところもある中、生え抜きがまるで帰ってこないのでは、チームの幹は太くならない。

さらに今オフは、札幌を早々に契約満了になった駒井善成を「宮吉に代わるクラブの象徴に!」と熱望する声もかなり多かったはずだが、駒井は横浜FCが獲得。外で活躍しているアカデミー育ちの選手たちがあまりにも戻ってこないのは、古くからのファン・サポーターにとってはかなり淋しいことだった。

編成権が安藤強化部長から大熊GMに移行し、「過去のアカデミー出身者などは軽く見ているのだろうか」「クラブはファンサポーターの気持ちなんて汲んでくれないのか」などと憂いていたら、10年前にヨーロッパに旅立った奥川が突如帰ってきた。京都新聞によれば奥川復帰を主導したのは大熊GMだったようで、これが意外だった。決してアカデミー出身者や過去に所属した選手たちを軽視している訳ではないということなのか、どうか。

おそらくチーム編成において「愛着」のようなウェットな感情を優先しようとするのは、甘い考え方なのだろう。それでも、宮吉のようなクラブの象徴になりうる選手がやはりチームにいてほしいとの願いもある。目先の「勝つためのチーム編成」も大切だが、「(地域やファンに)愛されるチーム編成」は将来を見据えた時には重要だと思う。

そんなこんなで、まもなく2025シーズンの幕が開く。長々と書いてきたけど、雑にまとめると今季はラファエルエリアスと心中やー!

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