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【実験01】やんばるでキャンプしながら共同売店とエネルギーについて考える

2024年5月、沖縄県の北部に位置する国頭村いわゆる「やんばる」にて、共同売店とエネルギーを考えるキャンプ企画を実施しました。

この企画は、愛と希望の共同売店プロジェクトとして昨年度から関わっているトヨタ財団助成プロジェクト「キャンプが生む自治基盤組成の検証と実践」という、"キャンプと自治"の可能性を探るプロジェクトの一環としてトライしているもの。

私たちが製作した「共同売店magazine 2」にも登場している、CAMP-Oのともつぐくんとみらいくん(CAMP-O協同組合)がプロジェクトの軸となって、私たちも一緒にキャンプの可能性を探っているというわけです。

未来くんと友嗣くんの似顔絵

キャンプ×共同売店?

共同売店について考える時、「自治」はコア部分に位置する重要なキーワードですが、これを地域やコミュニティの中でどう醸成していくのかというのは難題…。悩ましいところ。それを醸成するためにキャンプというツールは有効なんじゃないか?という仮説を考えています。

キャンプと自治(共同売店)?と思う方もいると思います。「キャンプ」と「自治」の二つは、一見関係がなさそうですが「自分たちの生活に関することを自分たちで選んでつくること」という意味で共通していると思うのです。共同売店の前で、夜な夜なおじいたちが宴会を開いているあの感じと共通しているような…。そして今回の企画も、共同売店プロジェクトの中で自治を醸成していくための何かのヒントになるかもしれないと感じたのでした。

プロジェクトのメンバー

このプロジェクトには、各分野で自治的な集団(コミュニティやアソシエーション)を目指し活動している方々7〜9名が参画していて、昨年度は"キャンプと自治"について議論を重ね、時には一緒にキャンプをしていました。

プロジェクトメンバーのみなさん

分野は、「環境」「社会」「文化」の大きく3つに分かれていて、参画している方々の活動は以下の通り(ぜひリンクをご覧ください)。

<環境>
奄美・沖縄ガイドネットワーク
おきなわ未来エネルギー会議

<社会>
愛と希望の共同売店プロジェクト
(一社)災害プラットフォームおきなわ
久米島シェアアイランドプロジェクト

<文化>
Art Initiative Okinawa
沖縄音楽制作事業協同組合(仮)

様々な分野で自治的な何かを模索している皆さんと「キャンプ」や「自治」について考える時間はとても楽しいものだったんですが、正解がないようなテーマなので、座って話すだけでは見えてこないものも沢山ありました。

そして今年度はいよいよ実践・実験の年ということで、2024年5月に第1弾企画を立てたというわけです。

企画のはじまり

第1弾企画のタイトルは「キャンプを通じて"自治"を見つめるスタディツアー/やんばるの自然と集落で考えるー自分たちの暮らしを自分でつくるためにできることとはー」。少し長いタイトルですが、以下の趣旨で企画・お招きしました。

沖縄において、「やんばる(山原)」は、森林資源が薪になったり水源からダムを通して水が運ばれ暮らしを支えてきました。これからは観光資源などの経済の起点としても注目されており、今も昔も、もしかしたらこれからも、沖縄本島では山原の恩恵を受けていくのかもしれません。
そんな山原の地でキャンプを通じて自然に身を委ね・巡り・話し、非日常と日常の暮らしの間を思考や身体が行き来することは、私たちの暮らしの理想像と今後あってほしい沖縄の社会や環境の姿との接点を探る良い機会になると思います。

また、地域福祉を担う共同売店を訪問し、区長さんのお話を聞き、自然の中でのエネルギー利用実験をしてみる。その土地の食材をBBQで美味しくいただき、季節のはざまでいきいきと活動する動植物や自然を観察する。地域の暮らしやエネルギーのテーマとも通じる映画「おだやかな革命」の上映会を行い、共同売店やエネルギーについて触れ、自身の暮らしや身近なコミュニティの在り方について考えてみる。そんな時間をともに過ごせたら嬉しいです。

企画趣旨

こんな感じで、2泊3日の企画に、プロジェクトメンバー含めて延べ20人近くの参加者が集まりました。そして今回のキャンプではいくつかのグランドルールや問いを設定し、キャンプを通して得られる変化や学びなどを蓄積していくことを目指します。

【グランドルール】
・キャンプの過ごし方:お客さんにならずに協力し合う(自己完結)/いつもと違う自分や環境を歓迎する(心理的柔軟性)
・共同売店:お邪魔しますの気持ち/共同売店は商店にあらず
・エネルギー:無限ではありません/電気の個人利用はポータブルバッテリーから

【目的・問い】
・自分の活動の領域や暮らしと重ねて見つめる(内省)
・キャンプを通して各テーマへの当事者性の変化を味わう(体験)
・各テーマの視野が広がる可能性はどこにあるか(人が集まるとは)
・エネルギー自給率が上がるには/共同売店が続くとは

これらを念頭に置きながら過ごしてもらうようにして、LINEグループに思ったことや感じたこと、撮った写真などを都度自由に投稿してもらえるようにしました。最終日にはそれらをお互いに発表しあい、「自治とは何か」に紐づけて、各自が考察を深めます。

1日目

初日はオクマリゾートを有する桃原区の立派な桃原公民館(芝生が広くて素敵!)で集合し、区長の金城さんにガイドをお願いしました。ガイドブックを片手に集落散策しながら地域の歴史や特徴について学び、共同売店でお買い物をします。

キャンプにぴったりの広ーい芝生がある桃原公民館からスタート
集落内のお家に生えているかなり立派なマンゴーの木
知らなかった桃原区の歴史を教えてもらう贅沢な時間。翌日はビーチクリーンもできました。
桃原共同売店でお買い物
共同売店の外でみんなでアイスを食べたり

夜には私たちの大先輩、共同売店ファンクラブの真喜志さんをゲストに迎え、地域自治の要である共同売店という存在について区長さんからもお話を伺いながら理解を深めつつ、参加者の親睦を深めるBBQで1日を終えました。

公民館前でみんなでBBQ

2日目

2日目は、桃原公民館の視聴覚室をお借りして、エネルギーラボ沖縄の宮城やすともさんによるエネルギーのお話会からスタート。

大きいモニターは、使った量が可視化しやすいようにポータブル電源から電源をとっています
映画見る前のエネルギーのお話会。みんなめっちゃ学びました
お話聞きながらのグラレコ

人類が手にした初めてのエネルギーから産業革命、そして沖縄のエネルギー事情に至るまで幅広く。これからの未来のエネルギーについて考えるとき、地域の特性、住民の合意、循環経済、地域連携を考える必要があるため、そこにはコモンズが生まれるきっかけがあるかもしれないとのことでした。なんだかアツイぞ。

その後映画「おだやかな革命」を鑑賞。地域にある資源を活用して、自分たちの手で電気を作って暮らすということ。日本各地で起きているムーブメントに多様なステークホルダーが参画していて、その根底にはそれぞれの「自治」の精神が流れていることを感じました。

ランチしながらグループに分かれて感想を共有

ランチ後は各自荷物をまとめ、夕方から国頭村森林公園へ移動。バンガローエリアの芝生に思い思いにテントを張り、夜に向けての準備をします。

設置したファイヤーピットを中心に自然と皆が集まり、料理をしたり、エネルギーや共同売店について話したりしながら夕食。

みんなで焚き火を囲みながらゆったりごはん
保育士・調理師の方が振る舞ってくれたクラムチャウダー。他の方はフランスパンを持ってきていてそれもシェアしていただきました。持ち寄りスタイルのポットラックの良さ!

天気の変わりやすい、梅雨直前の沖縄。不意のにわか雨などもありつつ、みんなで食事をしたあとは共同売店の短編映画上映会です。

単なる買い物の場というだけではない多彩な役割を果たす共同売店には、地域福祉や伝統文化の継承などの側面もあることが映画の中で語られています。共同売店の存在は知っていても、どのような役割を果たしてきたのかは沖縄の人でも知らないことが多く、上映後も参加者による意見交換で盛り上がったのでした。

キャンプ場の東屋の中で即席映画上映会

夜も更けてきた頃、森の生き物たちが活発に動き出す時間。ガイドによるやんばるの森散策ツアーが始まります。梅雨が明けるかという季節柄、蛍もチラホラ。いろんな生き物の鳴き声をBGMに、ヤンバルクイナを探したりしながらワクワクする時間を過ごしました。

夜遅く、森の生き物たちが動き出す頃の散策

3日目

夜中に降った雨でテントや芝生がしっとり濡れている朝。日が昇り、それぞれ朝ごはんを食べた後はお片付け。テントを畳んで、桃原公民館に戻ります。さぁこれから、今回の合宿の振り返りとまとめの時間。

今回のキャンプ全体の振り返りをみんなで!

振り返りはKeep(やってみてよかった、続けたいこと)/Problem(改善したいこと)/Try(やってみたこと)に加え、今回の2泊3日のキャンプ体験の中で印象的だった瞬間の写真にコメントを添えて各自発表しました。たくさんあったけど、その中でいくつかをご紹介。

まとめ

実際にキャンプしながら共同売店とエネルギーについてみっちり考えた二泊三日。個人的にはキャンプを始めたばかりの初心者なので、テント張ったりご飯のこと考えたりと割と忙しく、ゆっくり考えたり感じたりする余裕があまりなかったかも。

でもこうしてプロジェクトを共にするみんなと過ごす時間、しかも単なるBBQや飲み会のような場だけじゃなく、朝起きて夜寝るまでの時間を過ごすというのは、それぞれの時間の過ごし方や生活リズムに合わせた動き方を程よい距離感で垣間見れて、なんだか「一致」とか「連帯」という言葉がこういう感じで生まれていくんだろうなと思ったのでありました。

テントを張るタイミングや準備、何があって何が足りないのか。自分だけで完結するのか分け合うのか。共に楽しむのか個人で楽しむのか…。

共同売店やエネルギーといったコンテンツについてもそうだけど、それ以外の時間の中で垣間見たこれらの要素をもっとぐつぐつ煮込んで煮詰めていくと、大きな団体として、もしくは個人としての「自治」という言葉にフィットしていくのかもしれないですね。

今回のように、仮説をもとに体験して感じたり考えたりしながら検証したことが、どんな風に共同売店プロジェクトの中で具体的に役立てられるかはまだわからないけれど、「一時的な暮らしを共にしてみる」「来訪者と地域の人が無理なく、暮らすように入り混じる場所をつくる」という体験はどこかで展開してみたいなと思います。そのためにはもう何回かキャンプしなくちゃだなぁ。

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