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評㉚劇団☆新感線いのうえ歌舞伎『神州無頼街』@ブリリア、A席11800円
劇団☆新感線42周年興行春公演・いのうえ歌舞伎『神州無頼街』@ブリリア、A席11800円。S席14800円、ヤングチケット2200円。4/26~5/28(大阪3/17~3/29、静岡4/9~4/12)。3時間15分(休憩20分含む)。
座付き作家・中島かずきの書き下ろし伝奇時代劇、劇団主宰・いのうえひでのり演出、福士蒼汰、宮野真守ら出演
※今回、古田新太は出ていない
※パンフ買わず
よく知らなくて観ている新感線(と言い訳)
例によって事前にほとんど情報は手に入れていない。
そして、今回は新感線に関する無知から話が始まる(すみませんすみません)。
この公演を観た個人的理由は、
1.劇団☆新感線は「人気劇団だし」のノリで、以前2本観た。大勢の演者がよく動いて、エンタメ感満載で楽しめるので、時々観たい
2.〇〇歌舞伎のうち、スーパー歌舞伎とコクーン歌舞伎は観たが、「いのうえ歌舞伎」を観たことがないので観ておこう(=勘違いと後で判明!)
以下は、観劇後に調べて知る。新感線のことあまり知らず、結構メジャーらしい『髑髏城の七人』すら観てないのに書く。芝居を集中して観始めたのは2018年半ば以降。
・『神州無頼街』は2020年公演予定がコロナで涙を呑んで延期、今回2022公演にこぎつけたらしい。
・重要な役どころの高嶋政宏って、あの高嶋兄弟のお兄さんか。気づかなかった……ww
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いのうえ歌舞伎って何、スーパー歌舞伎とコクーン歌舞伎と違うんだ!
・新感線で二本目に観た『けむりの軍団』(2019年7~8月)@赤坂アクトシアターは、いのうえ歌舞伎だった。知らんかった。そうだったんか。
……ちなみに、最初に観たのは『メタルマクベス disc1』(2018年7~8月)。まだ自分の観劇歴初っ端の頃で、360度展開で円形客席の「IHIステージアラウンド東京」での観劇を体験したい!、が優先で選んだ。客席が回るのでやや酔う感覚。役者がぐるぐる回っていて体力あるな~と思った記憶。トイレの個室はかなり多かったな。
劇団☆新感線の演目のうち、歴史や神話をモチーフとした作品は、いのうえ歌舞伎、だそう。いのうえが演出するから。
歌舞伎役者が出演して、そこここに伝統歌舞伎の匂いのするスーパー歌舞伎やコクーン歌舞伎とは違うものだった。歌舞伎という言葉をそう使うのが自由なら、そういうことでいいと思う。
そうだ、まだ観てないのは「木下歌舞伎」だ。。
加齢の自分が「ついていけない」の、新感線とNODAの違い
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全体はエンタメ感満載で面白い。それは間違いない。
が、多分会場がライブ的で(自分には)うるさくて、かつ台詞が早めで聞き取れない気がする部分がある。音楽のせいか。メタル音楽を多用するらしいので、もはや若くない自分の耳では「ついていけない」部分があるのだろう。前後の文脈で脳内補正し、劇についていく。
脳みその中はカーニバル状態。
加齢の影響か。
NODA・MAPも「ついていけない」ことが多いが、状況がやや異なる。あちらは言葉や内容はきちんと聴きとれるのだが、台詞がポンポン速くて役者の動きも速くて脳みそが面倒くさくなり、「どうせ伏線回収する野田秀樹に委ねよう」と、途中で“無駄な抵抗”を止める(『フェイクスピア』の場合)。そして、伏線回収。
脳みその中は、走りながらミステリの謎解きした状態。
やはりここも加齢の影響か。
音楽は今忘れているので大同小異だったら、すみません。
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福士蒼汰の声と使い方
というわけで、特に誰かをお目当てで観たわけではない。
そうそう、ブリリア3階席は全体を見渡す「神の視点」席で観たのだ。見切れはなかった。
大筋は、バディが悪者退治に出向く、である。
福士蒼汰(28、今日がちょうど誕生日で29になったかな)を初めて舞台で観る。宮野真守(38)はおそらく初めて知る(すみません)。で、福士が『髑髏城の七人』Season月 上弦の月に出て、宮野がその下弦の月に出て、今回は初共演と。なるほど。
さて、演者たちは、マイクを頭につけているが、それでも声の響きの違いはわかる。宮野は声優で舞台経験も多く、抑揚もあり、他の役者たちと同じように全体に響く。
対し、これはあくまで自分の感覚である、福士は声が低め安定、あまり音楽活劇っぽくないように感じた。いわゆるストレートプレイっぽい発声に聴こえた。周囲が音楽活劇、ミュージカルっぽい発声の中で、落ち着いた声に、自分には聴こえた。滑舌が悪いという話ではない。
ふむ。『髑髏城の七人』もいのうえ歌舞伎だし、いのうえは当然福士の発声を知っているはず。そして、『神州無頼街』に起用した。これは何かの効果を狙ったのか。そういう役どころなのか。
前回とは役どころが違うのか否かも知らん。
もちろん、一介の素人にはわからん。
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福士の立ち回りはカッコよかったと思う。殺陣は訓練されていると思ったし、細面の顔は美少年的で、姿も遠目からでも美しかった。
10歳上の宮野が「柔」でひらひらと舞うように演技したとすれば、福士は「剛」でまっすぐな感じとすれば、バランスはとれていたと言えるだろう。
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宮野、松雪、髙嶋
宮野は器用だった。多分「剛」も「柔」もできるところ、今回は「柔」の役回りをこなしているのだろうと、勝手に推測。
松雪泰子。好きなんだな。舞台で見かけると、わくわく嬉しくなる。そして、期待を外さない。演技は安心して見ていられるうえに、華があって「女」を体現できると思う。新感線では5度目らしい。
今回が新感線初出演の髙嶋政宏。いやあ、気が付かなかった(すみません)。もちろん、髙嶋政宏という字は目に入っているのだが、いかんせん新感線のメンバーをよく知らないので(すみません)、そちらかと思った。まあ、それだけ、融け込んだのか?? お見事に世界に作っていた。
美味しいところを持って行った感は、はらぼてお梅=山本カナコ、棺桶屋のお銑=村木よし子かな。特に後半、お銑は存在感がどんどん増した。
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そうそう、構成だが、一幕は正直「説明」ぽく、わかりやすく「主人公」と「悪役」のように感じた、ある程度そういう作りだろう。二幕になって、悪役たる「偽の家族」にそれぞれの経緯と思いがあることが浮き彫りにされ、背景の読みが深くなったと思う。
身をゆだねてしまえ……?? とならず
さて、このメタル? ロック? 音楽と照明と走り回り踊り歌う人々に身をゆだねてしまえ! とささやく自分B。非日常、カタルシス、ストレス発散に向く。
しかし、自分Aは、今日もふむふむと観ていた。それもあり。単に耳の機能が衰えてきた人、とも言える。
開演直前まで寝ていた隣の席の人は、始まるや否や拍手拍手手拍子、最後はいち早くスタンディングオベーション。
終演後、「またお金貯めて来ます!」とスタッフに声をかけている別の女性。
近くの店に入ったら、女性二人組が「秋公演も行こうね!」と盛り上がっている。また、今回の公演の時に電話かけて云々の話。
ああ、新感線ファンなんだ。楽しみにしてる感が伝わってきて、劇場近辺ぽくていいな。自分は委ねられなかったけど、人は人、それはそれ。
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そして、ぷはー。
お疲れさまでした。