レモンちゃんとの日々①
23歳だったころ、レモンちゃんという23歳年上のおじさんと仲よくしていた。
レモンちゃんは本当はまあちゃんなんだけど、本人がレモンと名乗っていたのでレモンちゃんと呼んでいた。
レモンちゃんはUFO研究会みたいのに所属していて、そこの仲間である40代の三田佳子に似た女性からストーカー被害にあっていると常々愚痴っていた。佳子は既婚で小学生の子供が2人いて、旦那様は単身赴任で留守、寂しいのでレモンちゃんにかまちょしていたが無視されたのでストーカー化したらしい。
「さいちゃん(わたくし)、怖いよ!佳子から毎日メールが来るんだけど!」レモンちゃんは大変怯えていた。
「なんて?」
「幽体離脱して毎晩僕に添い寝してるって!」
幽体離脱!?
しかも佳子は、来たことないレモンちゃん宅の間取りやお母さんの服装まで当てたという。
「さいちゃん、怖いよどうしたらいいの?」
「警察に言えばいいじゃん。」
「僕が狂ってると思われて終わりだよ、真面目に聞いてくれよ!」
しかし、そのあとすぐ、思いがけずストーキングは止む。
佳子はレモンちゃんが飼っているインコが恐ろしくて仕方ないと言い、連絡してこなくなったそうだ。
「相談に乗ってくれてありがとう、お礼にUFOを呼ぶ呪文を教えるね!」
かれが教えてよこした呪文をベランダに立ち、夜空に向かって唱えたがUFOは来ず、わたくしは23歳にもなって母から「夜中にわけわかんないこと言ってんじゃないよ!」と叱られた。
レモンちゃんとはたびたび長電話をしていたが、かれは笑い上戸だったためちょっとのことでバカ笑いし、そのつどレモンちゃんのお母さんが
「うるさい!何がそんなにおかしいの?!鏡でも見てるのか?」と暴れ込んでくることも少なくなく、ある日お母さんが「スーパーに行くからついてこい」と電話中に爆笑していたレモンちゃんに命じた時になぜだかレモンちゃんがいきなり怒り出し、「お母さんなんてUFOにさらわれればいいよ!!マイクロチップ埋め込まれてしまえばいいんだよ!」と叫んだ。
彼は怒り狂ったお母さんにぶん殴られ、わたくしは「うちの息子がバカになる!」と難癖をつけられ、それ以来付き合いが途絶えてしまった。
ちくしょ