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教師と時間

 大学生活は部活動をしていたら知らぬ間に過ぎ去っていたわけであるが, 就職活動もろくにしていなかった私のポケットには教員免許しかなかった. 特に目指していたわけでもないが, そんなこんなで教員になった. 新卒1年目は中学校で常勤講師として働いた. これがなかなか大変であった. 何が大変であったかといえば, とにかく時間がないことが大変であった.

 数学の常勤講師として採用されたのだから, 数学を教えていく気概は十分にあったのだが,  想像と実際はいつもはっきりと乖離しているもので, とても大変であった. 幸運にも私の場合は良い仲間に囲まれて充実した(過酷な)1年間を過ごせた. 中でも特に充実した経験は部活動指導であった. 平日の朝練と土日の指導を含めれば1ヶ月あたり70時間時間は残業していたわけで, その中で独創的で画期的な指導など当時の私にはできなかった. 幾分時間を確保できるようになった現在では, 自分らしい指導ができているようなきがしないでもないが, 少なくとも当時はできていなかった. 自分で言葉にするのも烏滸がましい話であるが, どんな才能も多忙の前には無力になると考えている. 独立した思考のためにはある程度沈黙して考える時間が必要であるという意味である. 数学然り, 運動然り, 仕組みを理解し自分なりに解決するためにはよくわからないことに時間を割くわけにはいかない. 教員生活1年目はこのよくわからないことに慣習的に時間を割いてしまっていた. 今になった思えばここ日本は法治国家であるわけで, 法律に従って行動をしていればよかっただけの話だった. 

 教育公務員は[地方公務員法第32条]により, 上司の職務上の命令に従わなければならないわけであるから, もし時間外勤務を命じられて場合は従わなければならない. しかしながらこの時間外勤務の命令にも制限があって, 上司は何でもかんでも命令ができるわけではない. [公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法]によれば, 上司は教員に対して原則として時間外勤務を命じないとした上で, 臨時または緊急のやむを得ない必要があつ場合のみ以下のいずれかに該当する業務に関して, 時間外勤務を命令することができるとされている : 実習に関する業務, 行事に関する業務, 職員会議, 非常災害や緊急を要する生徒指導. 
 
これらの法律に関心がなかった私は, 当時は進んでボランティアとして残業を行っていたことになる. 23歳の若造が自らの勉強時間よりもボランティアを優先していたというのはなんとも, 恥ずかしいことをしていたことであろうか… しかしながらこのような状況が全国各地で慣習的に起こっているらしい. 

 教育公務員の在り方とはどのようなものか, などの話がしたいわけではなく, 私個人がどうありたいかを述べる. 私は数学を通じて教育活動を行っていきたい. 数学の普遍性は, 現代を生きる私の救いになっている. 私のように封建的な社会に違和感を覚え辛い感情を抱いている生徒とお話しする時間を少しでも増やしたい. そのためには生徒指導の時間もさることながら, 自ら数学をする時間を確保することが必要である. 簡単に言えばボランティアではなくて数学に時間を使いたいということである. ただの愚痴のような文章になってしまった… 

 

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