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仕込さんの体験 3⃣

仕込さんの体験2⃣のつづきでございます。
夕方の仕込さんの仕事で、一つ書き忘れていた事がありました。
【紐持ち】です。
舞妓さん、芸妓さんは、お座敷にあがる時は、基本正装です。
芸舞妓さんの正装とは、お顔は【白粉】でお化粧をして赤いお紅をさし、
舞妓さんは振袖にだらりの帯、芸妓さんは留袖にお太鼓結び、どちらも裾が長い【裾引き又は、お引きずり】を着ます。

舞芸妓さんのお衣装は、普通の着物と違い裾もお袖も長く、帯も幅が広く厚みもあるので、一人で着ることが出来ません。舞妓さんのだらりの帯は、幅も広く、約5~6mと長く、一人では着られません。(芸妓さんの帯はお太鼓なので、一人で着る方もいます。)
なので、【男衆さん】に着せてもらいます。

夕方、白粉を終えた若い(序列の)舞妓さんから順番に、お衣装を着付けていくのですが、【男衆さん】が着付ける時に仕込さんは【紐持ち】をします。肌襦袢の段階から着せてもらうのですが、【紐持ち】をするには、まず着物の着付ける順番を覚えなければなりません。
『舞妓さんのちのまかないさん』の一場面でもありましたが、順番を間違えると着付けの邪魔になってしまいます。「じゃま邪魔~!」てな感じで(^^;)

【男衆さん】は一人で何人もの芸舞妓さんを受け持っていて、夕方のお座敷に遅れないように、置屋さんや芸妓さんのお家を着せに回ります。
1人の舞妓さんを着付けるのに、かかる時間は10分程度。
ですので、【男衆さん】が少しでもスムーズに着付けが出来るようにお手伝いをします。
【紐持ち】は腰ひも以外にも、お襦袢や着物、帯や帯板、おまく(お太鼓)など、着付けしてもらってる姉さんに渡す物と【男衆さん】に渡す物も、
沢山覚えないといけません。
ただ渡すだけではなく、着付けの動きを妨げないように、向きや渡し方にも気を配りながらすることを教えてもらいました。

置屋さんの芸舞妓さんを着せ終えると、颯爽と次の姉さんのとこへ行いく姿は風の如しでした。


仕込みさんの体験2⃣にて、夕方の流れを書いていましたが、あのタスクの中に、この【紐持ち】が入ります。ほんの2時間以内に(笑)
そして、夜が更けお茶屋さんのお提灯の明かりが消え、舞妓さんも仕込さんも着物を脱ぎ、お部屋へあがり今度は【お風呂】です。

夜、姉さん方は着物を脱いで畳み、お部屋へ戻ると、まず【白粉】を落とします。練り白粉と言って、ファンデーションのようなお化粧と違い、歌舞伎役者さんと同じお化粧です。そして【白粉】は顔だけではなく、背中と胸より上の部分の首まわりも真っ白に塗ってあります。
普通のメイククレンジングでは落ちません。ベビーオイルなどのしっかりしたもので、落としいきます。慣れると5分もかからない程です。

姉さん方が【白粉】を落として間に、仕込さんはお風呂に入らせてもらいます。因みに、、、私がいた置屋さんは内風呂、つまり置屋さんの中にお風呂があっので、そこで入らせてもらっていましたが、京町家でお風呂が無いと言う理由など、外風呂の置屋さんの方は銭湯に行ってお風呂を済ませていました。ないものねだりで、外風呂組は憧れでした♨

お風呂と言っても、ぼーーーーっと浸かるわけではなく、洗髪し体を洗い、少し浸かって、GoGoGoGo!!!のような感じをイメージして頂いたら分かりやすいかと思います。ラピュタの「40秒でなんとやら」なバスタイム。
仕込さんに入りたての時、「5分以内でね。」とさらりと言われ、ドキドキしながら入ったあの日は忘れません。烏より早かったか、も⁈


上下関係がはっきりして花街は、暖簾をくぐる一つでも上の方からが基本。
なので、目下の人が何か先にする時は、「○○お先ぃどす。」とご挨拶を必ず、かならず!します。
お風呂に入る前は、お母さん、姉さん方一人一人に「お風呂お先いどす。」とご挨拶をし、お仕事を終え家に帰る前の【お姉ちゃん】が居たら、「お風呂入らせてもらいます。」と言って入り。
お風呂から上がったら、「お風呂お先ぃどした。」「お風呂入らせてもらいました。」とみんなにご挨拶をしてお部屋へ戻ります。

寝る支度を済ませ、寝る前には「お休みやすお母さん、姉さん」と一日最後のご挨拶をして、Yooooooooooやく!眠りにつけるのです。
文字の起こすと、長いですし、やることは沢山ありますが、この一つ一つが修行で、舞妓さんへの一歩に繋がると信じて、仕込さんは頑張ります。
仕込さんの体験で、このすべての事のやりこなすことは出来ませんでしたが、置屋さんの中に入って実際に見て体験することによって、本当に修行に入るかを考えることが出来ました。

2週間の体験を終え、お母さんに「どうや?」と聞かれ「絶対に戻って来ます。」と言って置屋さんのお姉ちゃん達にも公言して帰りました。
置屋さんのお風呂の脱衣所に忘れ物をしていた事を、正式に仕込さんとして戻って来てから気が付いたのでした。
つづく。


~*~*~ご拝読有難うございました~*~*~

仕込さんの体験と題していましたが、仕込さんの一日を細かく書いた内容になってしまいました。
今回は仕込さんの修行の一側面を書きましたが、仕込さんをはじめ舞妓さん芸妓さん達の毎日は、不規則が規則的。特に舞芸妓さん達はお稽古やお座敷で目まぐるしい日々を、相変わりもせず凛としてこなしています。
奥深い花街文化、非日常的で、別世界ですが、日本人の心を思い出させる、何かを感じることが出来るのではないかな、と思いふける今日この頃。
虫の音と秋風が心地よい季節ですね、、、。
次回のお話は考案中です。秋の夜長に楽しみながら書きたいと思っています。

≪補足≫
各花街、お茶屋さん、置屋さんによって、花街やお家の中のルールは様々です。そして、それは時代と共に変わっていることがあります。
このNOTEでのお話は、あくまで、私の経験してきたことを書いておりますので、ご承知おきください。


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