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11月8日、浅草、晴れ 希う夜

2024.11.8 浅草花劇場
『RYUTistと柴田聡子』

控えめに言っても、最高のライブでした。
この日の東京は肌寒く、秋がほとんど顔を見せないまま、もう冬がそこまで訪れているかのような気候でした。

一昨日、「RYUTistと〇〇〇」という対バン企画の第2弾が終わったばかりでしたが、今回は個人的になんとしても聴きたかった柴田聡子さんとのライブ。FC先行には外れたものの、一般でチケットが取れたので楽しみにしていました。

会場の浅草花劇場は、花やしき遊園地のすぐ横にあり、1階席はイスを並べるフロア、2階席は固定式のイスが100席程度ある小規模な劇場でした。
身長が高いほうではないので、フロアで後ろのほうだとステージが見えにくいかなと思い、2階席を選択。チケットの整理番号がA45だったのですが、同じ番号の席を見つけたので、なんとなくそこに座りました。

前半は柴田聡子さんのステージ。
ギター一本の弾き語りで、1曲ずつ曲紹介をしながら進めていくスタイルでした。柴田さんのこともRYUTistに楽曲提供していることから知ったのですが、2023年4月、RYUTist SEASON3までのメンバーでありリーダーだった佐藤乃々子さんの卒業ライブの前日、《古町前夜祭》と題したフリーライブに柴田さんも出演されていたのを見ています。その時には、提供曲のひとつ『オーロラ』をセルフカバーで披露されていたと記憶しています。

あまりガチャガチャしていない、おとなしめの曲が多い印象ですが、歌詞はとても個性的で、特に『雑感』という曲には年金の給料天引きに腹が立つという歌詞があって、とても共感し、独特のセンスに驚かされました。
当時、アルバム「ぼちぼち銀河」をよく聴いていて、『24秒』という曲がお気に入りです。今回のライブでも『雑感』を含め何曲か「ぼちぼち銀河」収録曲を披露してもらえて嬉しかったです。

柴田さんのパフォーマンスはとても不思議で、静かな歌唱なんですがウィスパーという感じでもなくて、繊細なのに芯があるというか、静謐なのに力強いというか。うまく言えないんですが、筋の通った歌声、ライブでの歌唱を聴いてそんな印象を受けました。
MCはあまりお得意ではない様子でしたが、曲紹介以外にもひとことふたこと何か話そうとしている、不器用そうな姿がとてもチャーミングだと思いました。そして、ライブ直前にあったRYUTistとの思い出作りについて、情報を小出しにしていたのもかわいらしかったです。

最後の曲は、楽器を電子ピアノに替えて演奏されました。
生演奏の良さは、アーティストの表情や演奏の動きを間近に見られること、演奏を空気の振動からも感じられることなどにあると思います。ライブならではの、一期一会の空気感みたいなものが絶対にありますよね。

後半はRYUTistのステージ。
柴田さんのステージは着席で観ていたので、そのままの流れで着席のまま聴くことになりましたが、個人的にはすぐ立ちたかった。2階のサイドからの席だったので、立ったら隣の人が見にくくなるかなとか、考えてしまって。日本人の良いところでもあり悪いところでもある”空気読み”をいかんなく発揮してしまいました・・・。

曲目は、柴田さん提供の『オーロラ』はもちろん、名曲と評価の高い曲が多かった印象です。特に、『心配性』と『Blue』は、個人的にRYUTistの楽曲の中でも1,2を争うほど好きな曲なのに、最近のライブでは演奏されていなかった曲なので、この2曲が聴けたことで胸がいっぱいになりました。
『心配性』を聴いていたら、泣きそうになったくらい。

アンコールは、RYUTistと柴田さんの4人でのコラボとなりました。
ここでみくさんが「みんな、立とうよ!」と言ってくれて、本当にありがたかった。いや、気にせず立てばよかったんですが・・・。
『WOOT!』に『ナイスポーズ』と、柴田さんの提供してくれた曲をご本人も振りを覚えて一緒に踊ってくれるなんて、かわいくて、幸せで贅沢で素敵なライブでした。

日本においては、ロックやフォークソング、アイドルの楽曲などを総称した言葉として<J-POP>があり、世間一般に<音楽を聴く>といったときには多くの人は<J-POP>を思い浮かべると、個人的には考えています。
僕が音楽を聴くときに、歌い手の声はとても重要な要素で、声が耳に合うかどうかがその音楽を聴くか・聴かないかの分岐点になっています。これはとても感覚的なもので、言ってしまえば好き・嫌いでしかないのですが、RYUTistの声も柴田さんの声もとても好きです。
今日のライブは歌声がとてもよく響いてきて、耳に心地よく、心に沁みました。4人の仲睦まじく楽しそうな様子にもグッときて、忘れられない記憶になりました。

東京は鉄道が異常に便利で、都心部は駅間がすごく短いので、浅草から上野くらいまでなら歩いてもさほど苦になりません。RYUTistの退場を見送ってから、花劇場を出て上野駅までの道を歩きました。夜なのに仄明るい東京の街の夜気は、ここにいる人たちのいいことも悪いこともすべて飲み込んで、また当たり前のように朝を迎えます。
4人の素敵な歌声を、ステージでのパフォーマンスを思い返しながら歩く帰路で「なんて幸せな時間だったんだろう」と、しみじみと噛みしめました。

同時に、約束されている最後の時も少しずつ近づいてきているわけで、不意に寂しさに圧し潰されそうにもなりました。感情がぐるぐるになりながらも、残されている時間でRYUTistに感謝を伝えるために何ができるか、自分なりに考えていけたら、と思いながら歩きました。


希う(こいねが・う)
強く願い望む。切に望む。

恥ずかしながら、希望の「希」のこの読み方を今まで知らずにいました。
「希」はそれ一字で希望のことを表し、それを「こいねがう」と読む。
素敵な字、読み方だなと思いました。
この夜、20分ほどの駅までの道のりで、ライブを思い返しながらいろいろなことを考えたけれど、ただひとつ、RYUTistの3人の未来が幸せであるように希わずにはいられない夜でした。