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風強すぎて人権ない

言ってしまえばその程度の意味しかない。
「人権ない」なんてその程度の軽さでしかない。

今更持ち出すのもどうかと思うがどっかのゲーマーが「身長170cm以下の男は人権ない」と発言したせいでキャリアの全てを失った、というz世代からしたら意味不明な炎上事件がある。
私の世代からしたら「ああ炎上させたのは上の世代なんだろうな」という感じだ。

「人権」はゲーム用語だ、と解説した記事なんかも読んだことがあるがどちらかというと単なる若者言葉だと思う。
「ぴえん」「アイドル風ワンピで優勝」「黒しか勝たん」「人権ない」「お亡くなり」
全部軽い意味しか持たない若者言葉だ。

疑うのなら最近のボカロ曲「強風オールバック」を聞いてほしい。
「外出た瞬間終わったわ」「風強すぎてお亡くなり」

このあたりが見事にこういう軽い若者言葉を表している。
若者言葉をほかの言葉で解説するなら「大げさな表現で大したことないことを言うのが面白い」のだ。

「外出た瞬間終わったわ」何が?
個人的に「終わった」という表現は大して新しくもないと思うがおそらく前に(命が)(人生が)が省略されている。
だけどこういう言葉を使うのは大して何も終わってない時だ。
テストで赤点だったとか。雑魚戦から勝ち上がっていくタイプのゲームでボス戦までいけなさそうだとかそういう大したことない時に「うっわ終わったわ~」って言う。

別に本気で人生や命が終わったなんて誰も思ってない。
むしろそういう大したことないことを大げさに言うからギャップが生じて面白いのだ。

「風強すぎてお亡くなり」だって別に誰も死んでない。
そんなのは暗黙の了解でみんな分かったうえで「お亡くなり~」とか言って遊んでるだけだ。
たかだか風が強い程度のことで「お亡くなり」なんて御大層な言葉を持ってくるのがギャップを生んで面白いだけ。
それだけ。

ついでに言えば「優勝」や「勝たん」だってその程度だ。
「優勝」は言い換えれば「最高」「これ大好き」程度の意味しかない。
「アイドル風ワンピで優勝」なら「アイドル風ワンピを着れば最高な気分になって自分のことが好きになれて世間も薔薇色に見えてなにもかもが素敵って思える気分になる」くらいだし、「勝たん」「黒しか勝たん」も「黒が好き」「すべての色の中で黒が自分にとって一番気分をよくしてくれる」くらいの意味だ。
「優勝」も「勝たん」も別に誰とも勝負してない。
あえて言えば自分しかいないレースで絶対1位になれる=他者を気にせず自分らしくってことだ。

つまり若者言葉は総じて大げさなだけだ。
問題の「人権ない」だって普通に使う。(人によるけど)
だけどさすがに仲間内以外の人に向かって使うのは失礼なので主に自分に向かって自虐で言う。
例えば朝適当に着た服が後で外出た時にショーウィンドウに映ってめっちゃダサかった時。
「うわ俺今日人権ないwww」

この程度だ。
「服ダサくてさいあく~」くらいの意味しかない。
ちょっと本来の意味からはずれるけど「スマホ忘れて人権ない」とか。
ようは「やばい」の最上級だと思ってもらえれば大体あってる。

私からすればあのゲーマーが「人権ない」発言で炎上したのはその言葉を使ったからではなく「仲間内でもない人に向かって」使ったからだ。


では「人権ない」みたいなz世代の「大げさ好き」はどこから来たのかと言えば以下の例を考えてみると分かりやすいと思う。

例えば「プロが本気でバカなことをする」タイプの神動画。
(神動画って言い方もまた大げさ表現の一種だけど。えーめっちゃいいじゃんもはや神!くらいの軽いノリの)
ニコニコ動画のタグで言う「先生何やってんすか」とか「プロの犯行」みたいなやつだ。

「イタリアで〇〇年修行したプロのシェフが子供向け知育菓子本気でつくってみた」とか
「音大主席が本気で童謡歌ってみた」
みたいなプロが全力でふざけるタイプの動画で今のz世代は育ってきた。
つまり、こういう「有り余る実力をもってして全力でくだらないことをする」という大げさを面白いと思って育ってきたのだ。

で、おそらくここから生まれてきたのが上記の「人権ない」とか「勝たん」とか「お亡くなり」とかそういう大げさ表現だ。
「大げさ」の娯楽で育ってきた子供たちが大人になり「大げさ」の作り手にまわっただけだ。

ただ、z世代に「有り余る実力をもってしてくだらないことをするのは面白い」という大げさは面白い、という価値観と大げさネタを与えて来た大人たちが今度は「人権ない」程度の発言で大騒ぎするとはいささか腑に落ちない。

そういう大げさ好きの若者たちを育ててきたのは若者に受けようとしたそういう大人たちであり、なぜ若者がその大げさを受け継ぎさらに発展させたら怒るのだろう?

「人権」が重い言葉であることは重々承知している。
本当に人権のないもしくはなかった人々、黒人や在日の方々、やインドのダリトなど今もなお人権を軽んじられ苦しんでいる人がいることなどそこそこの頭があるデジタルネイティブ世代ならよく知っている。

むしろ昨今のBLM運動やLGBT運動など日々SNSで飛び込んでくるニュースを知らずにいることの方が難しい。

だけど、そんな「ガチな話」と若者が言う「人権ない」は感覚で言えば隔たっている、という感じがする。
同音異義語みたいな感じと言えばいいのだろうか。
今誰もそんなマジな話してない、っていうか。

そもそも本当に人権がないと思っていたら笑いながら「人権ないわ~」なんて言えないし、本当に誰かが亡くなっているのなら「お亡くなり(笑)」とか口が裂けても言えないに決まっている。
z世代だってそこまでアホではないし、もし「黒人奴隷の子孫とか人権ないwww」とか「福島原発でお亡くなり」とか言おうものなら大人が炎上させる前に同世代が袋叩きにするのでご心配なく。

人権がない状態とか死から遠いから、そんな状況経験したことがないからこそそういう重い言葉をおもちゃにできる。

z世代の一人としてそういう態度が必ずしも褒められたものではないことは分かっているが、こういうのはあくまで内輪ノリの言葉だし、そういう重い言葉を軽く使える日本の平和さは評価してもいいんじゃないかと思う。

もし同世代が読んでたら言っておくが、こういう内輪ノリの若者言葉は総じて大げさなのであらぬ誤解を生まぬためにも不特定多数が聞いてる場では言わない方がいいよ。

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