ボカロ100選を分析してみた話

先日作った、自分のボカロ100選についてのデータを集め、色々と見てみた話。

#ボカロ100選とは?

非常におしなべて言うと、「好きなボカロ曲(UTAUとかも含むので、「合成音声の曲」と言うのが正確かもしれない)を100曲選んでみよう」という企画である。

もともと、「いも男爵」さんが旗振り役となって始まっている企画で、以下のページに全てがまとまっているので読んでおくことを強く推奨する

これを読んでもらえれば自分は語ることはほぼないし、何なら自分の100選もここに載っている。自分以外にも色々な人の100選が載っているし、ボカロ好きの読者の皆さんはぜひここに自分の100選を掲載してほしい。

一応、レギュレーションだけ軽く書いておく。

  • 共有は「ニコニコ動画のマイリスト」または「Kiiteのマイリスト」で行われる。すなわちニコニコ動画にMVがあることが基本条件となる。
    (一応、MVがない曲も入れていいことにはなっている。個人で楽しむ分には全然入れてもいいと思う。上記wikiで解析ができないと言う都合があるそう。)

  • UTAUやカバーなども許容される。「ボカロ」の範囲は選者に委ねられる
    (他の人のものにケチをつけないように。)

また、個人的に作ったレギュレーションがいくつかある。

  • YouTube、ニコニコ動画「共に」公式MVがあること。
    これは、自分がYouTubeでボカロを聴くことが多いからである。

  • 同一ボカロPの曲は一曲まで。
    ただし、共作などを除く。例えば、はるまきごはんさんは本人の『フォトンブルー』の他、共作の『アイニーブルー』『月光』も選出している。

繰り返すが、以上は公式ではない、あくまで自分で作ったルールである。本家の方は非常に自由度が高いので、気軽に作ってほしい。

一応、ニコニコ動画のマイリスを以下に掲載する。

便宜上番号を振っており、「メモ昇順」とすると番号順に聴けるが、第三者にとっては特に意味のない番号なので、好きなように聴いてもらって構わない。

また、内容は変更になる可能性が多々ある。というか変更を前提にして作っている。ただし、データの性質上特に以下の内容を書き換えることは想定していないので、その点はご理解いただきたい。

分析してみた

では、ここから本題に入ろう。といっても、上記wikiに登録すると、結構色々な情報を提示してくれる(今知った)。ので、わざわざこんな面倒なことはしなくても良かったのかもしれない。が、やってみたものは仕方がないので、ここで披露させていただく。

① 好きなボカロは何ですか?

グラフどん。

これは単純に、100選中の曲を歌っているボカロをリストにして、集計して、グラフ化したものである。凡例はグラフについている通り。
いくつか補足をしておくと、

  • 「UTAU」には複数種類が含まれている。多分闇音レンリが一番多い。

  • 「複数」は複数人で歌っているもの。sasakure.UKさんの『トンデモワンダーズ』とか、100回嘔吐さんの『進め★JINSEI行進曲』がわかりやすい例か。

  • 「その他」には、音街ウナとかIAが含まれている。複数人で歌っているものはここには含まれない。

という感じである。ぱっと見で目立つのは、v-flowerの占有率だろうか。実際、自分も「好きなボカロは?」と聞かれたら「v-flower」と返しているのでこれは肌感覚に合う結果となった。

しかし、v-flowerに押されているだけで、初音ミクの占有率も割と高いことに気付くだろうか。ニコニコ動画の「VOCALOID」タグがついた動画と「UTAU」タグがついた動画は合わせて83,1854本ある(2023年3月4日現在)が、その中で「初音ミク」タグがついた動画は31,2498本である(同上)。これは約37.6%となり、自分の選出である44%をわずかに下回る。
当然、ニコニコ動画の集計はかなり粗雑であり、誤差もあるだろうが、初音ミクはv-flowerに比べて聴いている自覚が薄かったので、これは自分にとって少し意外な結果であった。初音ミクは偉大である

逆に目に見えて少ないのは、いわゆるクリプトンの面々である鏡音リン・レンや巡音ルカ、KAITO・MEIKOであるが、これらは正直自分の勉強不足としか言いようがない。一応、鏡音リン・レンは「複数」によくいるという事情もあるのだが……
せっかくの機会なので、各人について一曲ずつ、好きな曲をここであげておこう。

星命学』Noz. feat. 鏡音リン
Y:https://youtu.be/xNCDwys3iig
N:https://www.nicovideo.jp/watch/sm37051752

自分が大好きなボカロPさんの一人である、Noz.さんの作品。まっすぐで力強い(ちょっとクセのある)鏡音リンの発声がすばらしい。サビの声の展開にハッとさせられる。Noz.さんの他の曲とかなり悩んで100選に選出。

FPS』Neru feat. 鏡音レン
Y:https://youtu.be/IZARN0Zwerw
N:https://www.nicovideo.jp/watch/sm26923209

言わずと知れた名ボカロP、Neruさんの逸品。ちょっとジャズっぽい揺らし方をしてくるバンドサウンドだが、歌詞の内容はかなりシビア。Neruさんは鏡音家の扱いが本当にうまいと感じる。100選入り。

抜錨』ナナホシ管弦楽団 feat. 巡音ルカ
Y:https://youtu.be/C7h6-jU1DCA
N:https://www.nicovideo.jp/watch/sm33360604

こちらも有名ボカロPのナナホシ管弦楽団さんの作品。サビの加工音型が見事。TOKIOさんの『宙船』に似たサウンドで、いわゆる「マリンっぽさ」を存分に描き切っている。コーラスも含めて、ちょっと調子が狂ったような独特の発声は巡音ルカ特有のものだろうか。100選入り。

ドクター=ファンクビート』 nyanyanya feat. KAITO
Y:https://youtu.be/CPxxurEcGTw
N:https://www.nicovideo.jp/watch/sm26470008

KAITOの声は個人的にやや合わないところがあるが、それを覆したくるのがこの曲。Aメロのクルクルした感じが心地よい。100選には『トンデモワンダーズ』や『88☆彡』など、初音ミクとのコラボ曲が入っている。

ピアノ×フォルテ×スキャンダル』 OSTER project feat. MEIKO
Y:https://youtu.be/JQTl7IvOX0E
N:https://www.nicovideo.jp/watch/sm5597663

最強のKAITO・MEIKO使い(主観)であるOSTER projectさんの作品。入れようと思ったのだが『Alice in Musicland』に押されて惜しくも落選。しかし非常にいい曲なのでここで挙げておきます。かっけえよ。

② 再生数を見てみよう

YouTube
ニコニコ動画

これも単純に、再生数を全動画ちまちま調べて集計し、グラフにしたものである。なお、YouTubeについては2023年3月4日現在、ニコニコ動画については2023年3月5日現在のものである。

ボリュームゾーンは10万回再生の台、YouTubeもニコ動も100万回以下が過半数を占めているので、「そこそこ」ボカロを聴いているな、くらいのグラフができただろうか。決して再生数が少ない曲を選んでいるからといって偉いわけではないが。

ちなみに平均再生数はYouTubeが3275455.84回、ニコニコ動画が968765.62回だそう。正直ここまで差がつくとは思っていなかった。ここの比較については後ほど詳しく取り扱うことにする。

③ 1日あたりの再生数

単純に再生数を比べるだけだと、昔の動画ほど多くなってしまうので、ここでは非常に安直だが、投稿されてからの日数で割ることにした。

YouTube
ニコニコ動画

ちょっと凡例が細かいが、とりあえず「上から下に行くほど数字が大きい」「同じ色は同じ範囲を表す」ことがわかっていればOKである。なぜこんなに細かいかというと、以下のようなざっくりしすぎたグラフになってしまうからである。

注:範囲の「半分」をとるのに指数を使っているのでこういう面倒なことになる(例:1=10^0と10=10^1の中間が10^0.5)。大体10^0.5が3.1回くらいなので、それぞれ3、31、310、3100に境目があると思ってほしい。

左:YouTube 右:ニコニコ動画
ちょっと情報帳が少なすぎか

少々見づらいが、ボリュームゾーンはずれており、YouTubeが300〜1000回くらい、ニコニコ動画が100〜300回くらいのところに存在する。上に自分はYouTubeで動画を見ることが多いとあるが、ここにその影響が現れているのだろう。

さて、100曲のうち、YouTubeとニコニコ動画で最も再生数が多い動画は、
YouTube:『シャルル』 バルーン feat. v-flower
ニコニコ動画:『ゴーストルール』 DECO*27 feat. 初音ミク

であるが、「1日あたりの再生数」が最も多い動画は何だろうか。

===シンキング===タイム===





正解は、
YouTube:『ラグトレイン』 稲葉曇 feat. 歌愛ユキ
ニコニコ動画:『Iなんです』 れるりり feat. 初音ミク

正直びっくりした。特にYouTubeは『シャルル』の勢いが圧倒的だと思っていたので。実は(それなりに差があるものの)『ラグトレイン』は全体再生数でも3位につけており、その人気度合いが窺える結果となった。

ニコニコ動画についても意外な結果となった。『Iなんです』は最近投稿された曲であり、プロセカ書き下ろし曲である。最近はニコニコ動画がプロセカと提携を強めているので、このような結果につながっているのかもしれない。そしてそうだとしたら運営側の作戦勝ちということになる。

なお、平均を取るとYouTubeで約6368回、ニコニコ動画で688回と、なっている。おおよそ十倍。かなりの差である。

ここだけでもなかなか面白いのだが、もう少し続けよう。

④ YouTubeとニコ動を比較する

折角YouTubeとニコニコ動画についてそれなりのデータを取ったので、比較してみよう。かといってそんなに滅多なことをするわけではない。

散布図どん

YouTubeとニコニコ動画の再生数を散布図にするという、それだけの話である。
(賢しい人は気づいていると思われるが、YouTubeとニコ動の集計日は1日ずれているので、本当はこんなに安直なことをしてはいけない。あくまで参考としてみておいてほしい。そんなに大きく変わることはないかと思うが……)
これ以上ないくらいの正の相関である。相関係数は脅威の0.88。入試問題を解いているような気分にさせられる。
ただ、②の円グラフを見てもわかるように、YouTubeの方が全体的に再生数が多い。もちろん一般的な話で、外れ値もそれなりに存在する。

例えば、ニコニコ動画の再生数"10000"のメモリ付近にある点は、YouTubeの再生数が最も少ない動画であるが、YouTubeでは411回、ニコニコ動画では9821回と、ほぼ二桁近い差をつけられている。(『ゴールデンスランバー』 Rulmry feat. 星界)
逆に、ニコニコ動画の再生数が最も少ない動画は、YouTubeで10,078回、ニコニコ動画で734回と、こちらも二桁近い差がついている。(『スイートリトルライズ』 莉津 feat. 可不)

また、YouTubeとニコニコ動画で再生数が最も多い動画が異なることは先述したが、バルーンさんの『シャルル』(YouTube再生数トップ)は、YouTubeの再生数が43,324,079回であるのに対し、ニコ動では764,6811回と、かなり再生数が異なる。実はDECO*27さんの『ゴーストルール』(ニコ動再生数トップ)も、YouTubeでは41,222,642回再生、ニコ動で10,967,603とそれなりに差が開いている。

それぞれに特色はあるものの(そして再生数差は滑り出しの時に出やすい)、概ねYouTubeの方が再生数が多い、というのがよくわかる結果となった。

ただ、高再生数帯での例外としてwowakaさんの『アンハッピーリフレイン』が挙げられる。この曲は、YouTubeで6,815,420回再生、ニコ動で6,331,250回再生とかなり拮抗している。これがwowakaさんマジックであろうか。

データはもう一つあって、それが1日あたりの再生数についての散布図である。

間違い探し

こちらもかなり強い正の相関が見られた。何とその値はおよそ0.92である。そろそろ不正を疑った方がいいのかもしれない。

こちらもYouTubeの方がニコニコ動画より1日あたりの再生数が大きいと一般に言えそうであるが、散布図の下部に注目してほしい。全体再生数に比べて、(低再生数帯においては)ニコニコ動画の方が再生数が多い、というパターンが多く見られるのである。
先ほど話に出した『ゴールデンスランバー』は、投稿されてから日が浅いということもあり、YouTubeで約4.15回、ニコニコ動画で98.2回と、かなりの差である。

⑤ おまけ

最後にもう少しだけ。各媒体の、再生数/1日あたりの再生数を比較してみた。

YouTube
ニコニコ動画

それぞれ相関係数を計算すると、YouTubeは0.82、ニコニコ動画は0.68という結果に。前者は安定の高さだが、むしろやや低めだったニコニコ動画の相関が気になる。(そして散布図を見た感じそんなに相関係数が低い感じがしない。)

確かに、再生数が低い部分については、非常にばらついているのがわかる。先ほどから挙げている『ゴールデンスランバー』のように、投稿から日が浅くても、割と聴かれている曲があるからかもしれない。奥が深い。

最後に

すんげえ楽しかった。

100選をピックするのもだが、そこから色々分析してみて、実際に高い相関がで得た時はびっくりした。もちろん自分が選んだ値であるので、皆さんの100選では違う結果を見ることもあるだろう。
ぜひ、ボカロ100選にチャレンジしてもらいたい。

ボカロ100選の中身の話も、いつか書けたらなと思う。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

またね。

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