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すわってみよう! 美術館の楽しみ方③
「わかる/わからない」の視点で、アートに関わる話を、思いつくままつらつらと綴っています…。
美術館に行って、「疲れたぁ~」という経験はありませんか? さすがに最近は入館前に行列に並ぶことはなくなりましたが、それでも、立っている時間が長~くて、体力的にしんどいという印象を美術館にお持ちの方も多いのでは。そこで、今回は「すわってみよう!」のお話です。
すわると言えば「椅子」。美術館には、さまざまな場所に椅子が置かれていますよね…って、わざわざ言うまでもありませんね。こちら、ちょっと休憩という以外の用途は思い浮かばなかったりします。展示室の中央に置かれている椅子に座って作品をゆっくり鑑賞するという方こともありますが、その椅子そのものをじっくりと鑑賞するなんてことはまずないですよね。ところがアーティストに手にかかると、「椅子」自体が作品になってしまったりします。
《1つと3つの椅子》
ジョセフ・コスース
1967年
一番左側が写真の椅子、真ん中が実際の椅子、そして右側のパネルには辞書に書かれている椅子。私たちが普段「椅子」というものに持っている概念を見直す作品になっています。
こうやって展示されていたら、真ん中の実際の椅子に座る人は一人もいなさそうじゃないですか。椅子って座るものじゃなかったの? でも、写真に写っている椅子も、辞書の椅子も、実際に座れないのに「椅子」として認識できるよね。じゃぁ椅子ってそもそも…。
このての、人の「既存概念」に対する問いかけをするような作品は、コンセプチャルアートと呼ばれています。アートに関心を寄せるようになったら、美術館に行った際には、椅子のような何気ない身の回りの品々に対しても注目してみると、新しい発見があるかもしれません。
《きみはただここにすわっていて。ぼくが見張っていてあげるから》
ホセイン・ヴァラマネシュ
ファーレ立川
立川駅北口には、沢山のパブリックアートがあり、お散歩しながら鑑賞できるのですが、こちらにも「椅子」が! タイトルにある《ぼく》がどこにいるのかちょっと探してみると面白いですよ。この写真からも”わかる”と思いますので。ちなみに、椅子にかかっているバックパックは私物ですので念のため。
こんな風に、実際にすわって味わえる椅子の作品もありますから、美術館でちょっと休憩のつもりですわった椅子が、意外にとんでもない作品だったりする可能性だってあるわけです。どうです、急に気になり始めませんか?
「そんなこと考えてたら、ますます、疲れちゃいそう」って時こそ…
すわってみよう!