気味悪い感じに浸る… 一歩踏み込むアート体験④
「わかる/わからない」の視点で、アートに関わる話を、思いつくままつらつらと綴っています…。
ここまで「アートは楽しい!/もっと楽しめる!」のスタンスでしたが、楽しいの概念を今回は革新的(確信的?)に広げてみたいと思います。
展覧会などに行って、美しいとか、わからないとかに加え、気持ち悪いと感じる作品に出会ったことってありませんか?
アート=美術として認識されている方も多いと思いますが、やはり美しいものと触れ合いたいというのは人間の基本的欲求なのかもしれません。一方気持ち悪いと感じる時は、何やら心身に害を及ぼす可能性の高いものに接近していることを自分に知らせる警告機能、つまりは防衛反応であると、どこぞで読んだ気がします。展覧会にまで行ったのに、気持ち悪いは、やはり避けたいですよね。
森美術館で開催された『未来と芸術展』は、私としては気持ち悪いと感じる作品の出会いの連続でしたが、なぜかバーチャルの展示も含め、何度も会場に足を運んでしまったという展覧会でした。
《わたしたちとかれら》 Us and Them
マイク・タイカ Mike Tyka
こちらの作品は(キャプションによると)AIによって作り出された架空の人物たちの肖像とツイートを組み合わせた、インスタレーション。会期中にも天井近くにつるされたプリンターから、新しい「顔」と「メッセージ」が生み出され続けます…。
フェイクニュースなどに通じるSNSの問題といった話は勿論、自分がこの世に存在しているという確かなものなど何もないのではという根源的な疑念に強引に結び付けられるというか…ともか気持ち悪くなっちゃいました。
他にも、形状が不気味とか、製作意図が納得しかねるとか…「うへぇ~」となるボーダーラインがどの辺に引かれているのかを実感できるような作品ばかり。自分の「美醜」の基準を自覚できる体験が、新鮮でした。
そうなんです。何かを美しいと感じる自分は、必ず同時に、醜いとか気味悪いとかも、感じているはずなのです。普段、関わりたくない気味悪いものに、「安全」に近づいてじっくりと眺め、自分の心の動きを感じることができる。これもアートの魅力の一つです。
一歩踏み込んだアート体験、ぜひ気味悪い感じに浸ってみましょう!