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アートとお金の話② 「市場」
「わかる/わからない」の視点で、アートに関わる話を、思いつくままつらつらと綴っています。
アート作品を購入した人ってどれだけいるでしょうね? ”アート”の範囲をどこまで広げるかによって変わると思いますが、いわゆるファインアート(≒純粋芸術)と呼ばれるジャンルに限ると、かなり限定された人数になりそうです。
そもそも世界のアート市場(ファインアートの売買)の規模はどれぐらいなのでしょうか?
2019年度(コロナ禍前)の市場は641億㌦ (約6兆9900億円)
*The Art Basel and UBS Global Art Market Report より 以下同じ
これを大きいとみるかどうかは人によると思いますが、日本の広告業界(7兆4800億円)ぐらいの産業規模と言えばイメージわくでしょうか? 勿論、”アートのような広告”は含まれていませんので念のため。
国別にみると、アメリカ(US)44%、英国(UK)20%、中国18%の三か国で7割を占めており、以下フランス7%、スイス2%、ドイツ2%、スペイン1%…となっています。世界第三位のGDPを誇る?日本ですが、1%のシェアもなく、その他の地域に分類されています。
この数字をもって、よく「日本のアート市場はまだまだ伸びます!」という話も”業界”の方からでてくるのですが、コロナの影響有無にかかわらず、「市場」として成長を期待するには、(マーケティングを生業としてきた自分には)幾つかの条件が必要なのではと思います。
マーケティング用語の4Pを使って、コメントしてみます。
Product(≒商品)
(アート作品を「商品」と呼ぶのに抵抗のある方もいらっしゃると思いますが)、ともかく商品ラインがてんで整理されていないと感じています。あまたある商品の中から自分の欲しているものを見つけるのが本当に難しい…。商品がとめどもなく溢れてきては、市場に並ぶこともなく(≒未来の顧客に出会うことなく)消えていくという感じ。
Price(≒価格)
前回こちらでも書きましたが、ともかくわかりにくいのです。今購入しようとしている価格が、果たして妥当なものなのかどうか…。安心して購入できる仕組みがないと、お金に余裕があるか、自分の好みがはっきりしている人以外は市場に参加してくれることはなさそうです。
Place(≒売買の場)
アート作品を買おうと思い立っても、まずどこに行ったらよいのかわかりません。お気に入りの「商品」と手軽に出会えて、安心できる「価格」が提示されている場所が、なかなか見つからないのです。目利きで、自分の好みをわかってくれて、しかも信頼できるディーラーに、生きているうちに出会えることは果たしてあるのか…。
Promotion(≒作品と出会うきっかけ)
展覧会の広告は、そそるほどに大量に出稿されていますが、購入のヒントになるような情報は圧倒的に少ないです。勿論、検索画面に”アート作品”,”購入”と入れるだけで、多くのネット販売サイトの表示は出ますが、どこで何を買ったら満足できるのか、これがなかなかみつかりません。
…と、以上批判めいたことばかり書いてしまいましたが、逆にそれだけ、未成熟な市場なので、新しいアプローチを試してみるにはうってつけということでもあります。
巨大オークションハウスやギャラリーが仕切っている世界とは別に、市井のアートファンが、手軽に作品購入を楽しめる場所。1%にも満たない日本から、そんな市場が大きく開けてきたら、めっちゃ面白いですよね。私が知っているだけでも、いくつかの試みが始まっていますし、アート好きとしては期待感満載なのです。
何か始めたという方! ぜひぜひご一報くださいね(^^)