2021年 個人的映画TOP4~1
映画ランキング10の記事もいよいよ終わり。ササッと書きあげてしまおう。10~5は以下の記事に記載しております。
何度でも言及させていただくが、ランキングに関しては全体を見つつジャンルや作風のバランスはとるようにしておりますので、そこのところご了承を。偏るのが嫌なのでね。それでは早速。
4.DUNE 砂の惑星 10/15公開
今年のSF分野は個人的にはダントツでこの作品。迷うことなくDolbyで鑑賞したが大正解。様々な角度の要素から「これぞ映画」と感じる作品は生涯でいくつかあるが、今年に関してはこの作品のみであった。ちなみに映画体験という面で、本作には「これぞ」を感じた。
物語、映像、音楽のどれをとっても桁違いの壮大さ。特に淡々と世界観を描く、物語的には導入的な中盤までの部分にさえ、観客を惹き込むところは凄いなと(私だけじゃないはず)。
終盤の展開や迫力、映像はもちろんだが、劇場内が揺れんばかりの音響。音楽はさすがハンス・ジマーといったところ。彼が『TENET』を担当しないと知ったときは残念だと思ったが、終わってみれば本作もテネット素晴らしい音楽である。最高の結果と言えるだろう。続編が楽しみ過ぎます。何年続くかは分からないが。難しいとは思うが、スターウォーズみたいな存在になってくれれば、言うことはありません。
3.ラストナイト・イン・ソーホー 12/10公開
ホラー・スリラージャンルはかなり迷った。今年は豊作でしたから。ちなみに最後は本作と『ライトハウス』で迷いました。あちらの「頭おかしくなる感」は大好き。機会があれば是非。
本作に関しては以前の記事でも紹介している通り。ちょうど他のホラー映画についても書いてあるし丁度いいかも。そんな数ある作品の中でも、総合的な面で本作を選出。
ストーリー、俳優、街並み、音楽などなど全てが私好みでした。劇中で使用された音楽に関しては、プレイリストを登録して緑色のアプリで毎日聴いています。
最近知って驚いたのが、中盤の入れ替わりダンスシーンの撮影方法。以外にもアナログでびっくり。早くサブスクで見直したいな…
2.アナザー・ラウンド 9/3公開
個人的には一番好きだった本作。本記事においてここだけは長く語らせて頂く。この映画を知ったのは今年のアカデミー賞だ。去年は世界中がパンデミックに侵され、映画界にとっても厳しい一年になった。ご存じの通りハリウッド大作映画の延期が相次いだため、アカデミー賞は例年になく中規模作品が多くラインナップされることとなった。ゆえに初めて聞く作品名が多かった今年のショーレースの中で、私がひときわ興味を感じたのが本作である。
主演のマッツ・ミケルセンが酒瓶を飲み干さんとする姿とその周囲の若者たちの盛り上がり。この映画、面白そうだ。そう感じた私はすぐさま国内の公開情報をチェックし、外国語予告から日本語版予告まで何度も観た。そして公開日での鑑賞に至ったというわけである。
ここまで読んでなんとなく伝わったかもしれないが、私は無類の酒好きである。一人酒が日常となっており、飲まない日のほうが珍しい。決して依存症の類ではないのだが、適度に身体にアルコールが入った状態の方が精神的に健康な状態であると考えている節がある。もちろん友人と飲んだ際に泥酔して失敗した経験は何度もあるが、反省とともにそんな自分や人生を受け入れている。
飛鳥時代から奈良時代にかけての公卿・歌人である大伴旅人の言葉である。「この世で酒を飲んで楽しく過ごせたなら、私はもう、生まれ変わったら虫にでも鳥にでもなってしまおう。」と歌った、この極端な歌に共感すら覚える。人生において重要なことは多々あるが、結局は限りある一生を楽しく過ごすことが最も重要ではないのだろうか。そのためのツールのひとつが、私にとっての、そしてまたこの映画の登場人物たちにとっての酒なのである。
しかしだ。いついかなる時も酒は楽しい人生を創造してくれる良薬なのか。「酒に飲んでも飲まれるな」。痛いほど耳にしたあの言葉をそのまま映画にしたような作品が『アナザー・ラウンド』である。
本作は中年の危機を酒の力で乗り越えようとする男たちの話だ。コメディタッチで彼らを描き出しつつも、飲酒の闇の部分もシリアスに描く。言い換えると「飲酒=悪」で終わらず、飲酒の良し悪しを忠実に描いている作品だろう。これらのバランスがよかったことに加え、彼らの人生が破滅で終わるのではなく、失敗の過程から生まれるものもしっかりと物語に残したことが、説教臭くなりそうな題材をあくまで等身大のヒューマンドラマにしている。
また飲酒をした後の中年の彼らの若者との間の交流や、仕事の成功や家族関係の修復などの成功描写におけるアルコールの効用にも誇張は感じず、こちらもまた等身大である。当たり前だが作中においてこれらの問題解決は根本的な解決には繋がらない。飲酒はあくまでも人生に楽しみをもたらすものであり、問題解決のツールにはならないということを再認識させてくれる。
しかしだ、アルコールを摂取するという問題解決の施策が無意味だったわけではない。当たり前になっていた日常をアルコールというレンズを通して見ることで、今まで見えなかったものが顕在化するのだ。これはアルコールに限らない話であり、広義での「雨降って地固まる」にも繋がることだろう。
「世の中は期待どおりにはならない」や「心がここにないようだ」などといった示唆に富んだセリフとともに、この映画から得られる教訓は我々酒飲みにとって非常に意義がある。加えて上述のように、酒飲みの抱える闇を顕在化してくれる本作は、アルコールについて再考する機会を与えてくれる良い作品である。
最後に純粋な感想を。ラスト、マッツの『What A Life』に合わせたダンスシーン(下)には今年一番のカタルシスを感じた。解放された躍動感と色気。鳥肌ものです。酸いも甘いも知ってなお、人生は美しい。
1.アフリカン・カンフー・ナチス 6/12公開
正直な話、下書きを31日の夜に投下し、すぐに下書きに戻すという方法で、本記事は昨年に投稿した体を保っている(書き上げたのは2022年)。誠に申し訳ない。そんなことは忘れていよいよ一位だ。
見事一位に輝いた作品は『アフリカン・カンフー・ナチス』である。個人的に劇場において初めてB級映画と呼ばれるものに触れた。そして、こんな滅茶苦茶でいいのかと。
ヒトラーと東条英機が生きている、ハーケンクロイツが逆、ガーナアーリア人、黒人を白塗りにする、、、など。ツッコミどころが絶えない。コロナ禍中ではあったので、劇場の笑ってはいけない空気が凄かったこともあり(何人か吹いてた)、本当に楽しかった。愛すべき映画です。是非。
以上、今年の個人的映画ランキングでした!選出できなかった作品のなかにも素晴らしいものが沢山。来年はどんな映画に出会えるのか。心から楽しみにしております。