消えゆく手=非集権の時代 その1

 経済評論家として活躍している森永卓郎氏の意見では、「とてつもない大転落」であり「やっぱり平成はですね、「転落と格差」の30年だったんだと、私は思っています。」という 。この大転落に関して考えていくこととしよう。
 結論から言うと、1990年に世界は大転換を向かえたのに日本では大転換以前のやり方や考え方を漫然と踏襲したからである。

決定的な転機は 1990 年に訪れたと観ることができる。図をご覧いただきたい。2006 年 度国際シュンペーター学会シュンペーター賞を受賞した「消えゆく手」という論文に掲載された図である。

出典:Langlois, Richard N., (2002) "The Vanishing Hand: the Changing Dynamics of Industrial Capitalism".Economics Working Papers.
https://opencommons.uconn.edu/econ_wpapers/200221

何が消えたのか。それは企業による支配が有効な手段ではなくなったということである。チャンドラーのいう「見える手」という経営者行為が消えた。これを言い換えるとオープン化・ネットワーク化・非集権化である。したがって、マネジメント・管理・秘密主義・自前・系列・下請け・ヒーロー・リーダー・強いリーダーシップ・計画・PDCAなどのお守り言葉の概念で 1990 年以降経営をしているとそれは劣化敗者への道をひた走っていることとなる。
 同様に1990年に世界が全く変わったという指摘は、Pomeranz's (2000) The Great DivergenceとBaldwin(2016)The Great Convergenceに沿って次回以降話を進めることとしよう。


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