バンドとハロプロと世代交代の話
(音楽的な意味で)バンドというと、一般的には、ボーカルがいて、ギターがいて、、、といった感じで3〜数人で、それぞれが担当の楽器を持っていたりして、一緒に楽曲を演奏するグループのことを指すと思う。
僕はアカペラサークル出身で、アカペラを歌う4〜6人のユニットのこともバンドと表現する。
最近、学生時代に好んで聞いていた世界最高峰のアカペラバンド「The Real Group」の5人のメンバーが、(少しずつメンバーが入れ替わっているのは知っていたのだが)全員が入れ替わって全く新しいバンドになっていることに気が付いた。
どうやら昨年末のライブで発表があり、今年から新メンバーで活動してるらしい。
この記事は、個人的にThe Real Groupとは(最後まで結成メンバーで残っていた前テナーボーカルの)アンダーシュ(Anders Edenroth)のことである(He is the Real Group)と思っていたので、彼が離脱していたことはかなり衝撃で、それでもこのバンドがThe Real Group(以下TRG)を継続して名乗っていくことについての雑記である。
「世代交代」というのは、何かしらの団体の構成員において、若年層が年配層を上書きする状態のことを言い、しばしば、スポーツの代表チームとか、会社の経営層とかで使われていると思う。
構成員が刷新されても、その団体がその団体であると認識できるためにはどんな要素があるだろうか。
名前だけを引き継いでいても中身が全然違うのであればそれは別物でしかなくて、ともすれば先代の支持者から批判を浴びる事になってしまったり、見限られてしまったりする。
僕は最近ハロプロをよく聞くのだが、ハロプロといえば「モーニング娘。」が世代交代をしながら受け継がれている。
モー娘。は、メンバーの「加入」と「卒業」を繰り返し新陳代謝している。”25歳定年説”などと言われ、ほとんどのメンバーが25歳くらいまでに、タレント活動やソロ活動、若ければ学業やらダンス留学やらに活躍の場を移す(僕の推しの金澤朋子さんが26歳まで在籍しそのジンクスを破った話はまた別の機会に)。
僕の同世代くらいだと小学生の頃に流行ったモー娘。しか知らない、現役メンバーは一人も知らないとか、今も続いてることすら知らないとか、そんな事はザラにある。
モー娘。は最近ではロックフェスなどにも参加し、圧巻のパフォーマンスをみせており、恋愛レボリューションとかLOVEマシーンとかザ☆ピ〜ス!とか、当時の曲を披露している。そのときのミドルエイジの盛り上がりは異常。
そう、現役メンバーを一人も知らない、とか、どうでもいいのだ。我々はモー娘。を知っている。
モーニング娘。は10年ほど前にEDMやフォーメーションダンスを取り入れるなどパフォーマンスが刷新されたタイミングがあるが、今も昔も変わらないスタイルとして、主につんく♂の楽曲を(口パクじゃなく)生歌と激しいダンスで披露する。
新メンバーは、若ければ13歳とかで加入して、10年くらい在籍することで、そのスタイルを継承し、モーニング娘。を構成する細胞となっていく。
モーニング娘。という魂がそこにはあり
モーニング娘。というハコに入るとみんな同じように盛り上がれる
モーニング娘。というジャパニーズアイドルの一つのカルチャー
そんな感じがする。
何が言いたいかというと「世代交代」は、その箱に魂やカルチャーやフィロソフィーがあってのことなんじゃないかなと。それが脈々と引き継がれていくことが条件になる。
新陳代謝をして、引き継ぐことで自分の形を残そうとする。
それって生物じゃん。モー娘。は生物。すごい。
今回の話に戻すと、バンドが世代交代することの難しさを考えたかったのだった。
バンドというのはだいたい、設立メンバーがバンドそのもので、脳であり、魂である場合が多いと思うのだ。自己表現したい何かがあるからバンドを組んでるわけで。
ジ・アルフィーはあの3人だからジ・アルフィーであり。
L'Arc~en~Cielはtetsuyaがhydeの歌に惚れてこそ生まれたわけであり。
そう思っていた。
もちろんメンバーが入れ替わるバンドはある。しかしたいていは根幹となるメンバーは変わらず、そのメンバーが作りたい音があるから、他のメンバーを入れ替えてでもバンドを継続するんだと思う。全員が入れ替わり「世代交代」をするというバンドはなかなかないのではなかろうか。
アカペラは特に、オリジナルソングを歌うというより、既存楽曲のアカペラアレンジによるカバーがよく行われる。そのためアレンジにそのバンドのサウンドが反映される。そしてそのアレンジはメンバーにあてて行われることが多い気がする。そしてそのメンバーの演奏する楽器(=声)は世界に雄一無二のものである。
なので、例えば学生バンドはよくTRGをはじめとしたプロの楽曲をカバーするものの、もちろん本物の音を完全に再現することなどできない。
ことTRGにおいても、初期メンバーのソプラノ、マルガリータの歌唱力が神がかっていたために、二代目ソプラノのエマに変わった際には色々言われたものである。それでもTRGだったのは他のメンバー(特にアンダーシュと、バスのヤルケウス)がいたからじゃないかと。
そんなふうに考えているわけだが、改めて新しいTRGを見てみる。
TRGというとこのサウンドである。ライブとは思えない完璧すぎるハーモニー。小気味よいジャズサウンド。「ライブ聞きに来たのにCDと同じ音が聞こえる」なんてよく友人と冗談を言ったものだ。
僕はこのサウンドをなしているのはやはりアンダーシュの芯のある声とヤルケウスの尋常じゃなく厚く深い低音だと思っていた。
Wikipediaによると1984年結成ということで、37年間このサウンドを貫いてきたことになる(細かくいうとヤルケウスの在籍は2015年までだけど)。
新しいメンバーによる音源がまだ少ないのでなんとも言いがたい。北欧のアカペラグループ、という感じはする。音だけ聴いたときに「あ、TRGだ」と思えるかというとやっぱり難しい気がする(だってアンダーシュの声が聞こえないんだもん)。もちろん見た目は全然違う。
それでも、TRGは、その命を残し、「解散」ではなく「世代交代」という選択をした。
これは先代の意思であり、現メンバーの覚悟である。
そうしてでも、先代は「TRGのサウンド」を残したかったんだということだろうし、その魂を、そのカルチャーを、引き継げると確信したからこそ、選ばれたメンバーなのだろう。「これがTRGだ」と、僕なんかでも思えるようなものがあるから。
聞き手としては、単純にTRGの楽曲を一流の演奏で聞き続けられるというのは嬉しい。改めて、これからの彼らの活動に注目し、応援していきたい。
TRGという箱がどう今後展開していくのかも楽しみだし、来日の際にはぜひライブに赴きたい。
最後にアンダーシュがFacebookでポストしていたメッセージを引用したい。彼にとってもこの決断がとてもエキサイティングで、希望に満ちていることが伝わってくる。
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