見出し画像

旧姓使用の役立たず!選択的夫婦別姓はやく導入してほしい

旧姓使用が驚くほど使えない…。選択的夫婦別姓に「賛成」62%(24年5月、NHK調べ)もあるのに何故導入されないのか…。NHKの調査をよく見ると「反対」27%の理由にこうありました。「旧姓のまま使える機会が増えているから」12%。
いや、全然増えてませんけど?こう答える人って実際、旧姓使用の手続きしたこと無いんじゃないですかねぇ。当事者だからこそ言えます。旧姓のまま使える機会増えてませんから!
国の後押しもあり大体の公的証明書では旧姓併記できるようになりました。けれど、民間機関はもっぱらダメ、そして海外なんて旧姓の概念すら存在しません。結婚して改姓しても「旧姓のまま使える」と信じてしまった私のような人間が今後出ないよう、旧姓名義=別人となる現実を記録しようと思います。
忙しい方は目次だけ読めば内容がわかります。私個人がこの結論に至った経緯にご関心がある方は内容もお読みいただければ嬉しいです。

以下、長いですが私の体験記になります。2024年の出来事です。

公的証明書は旧姓併記OK さすが親方日の丸

住民票、マイナンバー、運転免許証、パスポート、健康保険証、国家資格免許はすべて旧姓併記OKです。この中で一番導入が遅かったのは健康保険証かな。協会けんぽ(全国健康保険協会)であれば2022年9月から導入されたようです。
窓口も対応がマニュアル化されているらしく、手続きもスムーズでした(2024年時点)。

実印については、住民票で旧姓併記していれば、旧姓が実印に彫られていても有効になります。例えば山田花子さんが結婚して、海田さんになっても「山田花子」の実印は有効です。

ちなみにパスポートは旧姓併記できるといっても、かっこ書きで旧姓を紙面上付け足すだけ。肝心のICチップには新姓しか記録されません。これは海外編で詳述しますが、海外には「旧姓」という概念自体が存在しないからです。

ICチップはパスポート偽変造を見破るための装置です。ICチップ内の氏名と照合したところ、紙の氏名に旧姓が加筆されていると不一致になりますよね。そのため、「海外当局とトラブルになる可能性があるから」とパスポートセンターの職員からパスポートの旧姓併記を真剣に止められた申請者も過去にいたそうです(笑)。って、笑えない!!!
つまりパスポートで旧姓併記をする場合は、海外当局から氏名の不一致を質問されたら個人の責任において説明する必要があります。

銀行は一部大手は対応 未対応銀行も多い

大手銀行は国に協調している感じです。ここでは私が体験した三菱UFJ銀行について書きます。

まず旧姓併記は不可です
ただし、便利だと思ったのは、クレジットカード引き落としや給与振り込みについて、三菱UFJ銀行は新姓と旧姓の両方の名義を私本人と認識して受け付けてくれることです。

旧姓•新姓
🟰同一人物

三菱UFJ銀行ありがとう!

(※全ての銀行がこの対応ではありません。三井住友信託銀行は旧姓=別人の扱いでした。銀行ではありませんが楽天証券も旧姓=別人扱いです)

三菱UFJ銀行に関して言うと、なんだか1人で2つの名前を持ったみたいで少しお得感がありました。しかし、この「1人で2つの名前」がやっかいな壁となり、クレカや海外において旧姓使用を不可能にしています。

また、「銀行は旧姓名義も本人扱いしてくれる」と言っても全ての銀行でありません。

2022年に金融庁が実施した調査「旧姓による預金口座開設などに係るアンケート結果概要」によると、銀行の31.2%が旧姓対応をしていません。信用金庫41.7%、信用組合87.6%がそれぞれ旧姓対応できていませんでした。
この調査を読むと旧姓口座に対応したくない民間金融機関の言い分がわかります。

  1. マネーロンダリングおよびテロ資金供与防止に懸念が生じる

  2. 旧姓名義口座のニーズがない

  3. システム改修が必要

  4. 旧姓に対応する金融機関とそうでない機関の口座間取引に懸念

未対応理由1位のマネーロンダリングは深刻な問題ですよね。1人の人間が2つの名義を持つなんて確かによく考えたら変な話ですからね。

旧姓名義口座ニーズがないのは手続き面倒くさくて諦めている人もいるので潜在的ニーズはあると思いますけどね。旧姓使いたい人は、旧姓使用を認めている一部大手銀行に口座が集中していると考えることもできます。

3.4.も理解できます。お金もかかって、人の手間も増える。マニュアル整備もしなければいけない。お上からの上意下達でやれと言われても、そもそも「選択的夫婦別姓」がもし法制化されたらその費用はすべてパー。

こんな宙ぶらりんな「旧姓使用」で困っているのは私たち改姓当事者だけじゃなくて、お上の無茶な要求に身銭をきって答えなければならない金融機関も同じなのだなと、この調査から感じた次第です。

ちなみに調査の「顧客への周知状況」ですが、「積極的に周知」の銀行14%と非常に低いです。最大手銀行の三菱UFJですら、公式HPに聞きたい内容の記載がありませんでした。窓口に電話しても「そういう質問受けたこと無いので」と担当をたらしまわしにされて疲弊した始末です。(※分かっている担当にたどり着くと慣れた口調で説明してもらいました。とても親身に寄り添ってくれて、安定感のある対応でした)

次のクレカの項目へ行く前に国と銀行の関係について補足させてください。
銀行の監督官庁は金融庁です。金融庁は行政処分を出すこともできます。銀行にとっては怖い存在でしょう。その金融庁が「旧姓使用」を認めるよう再三にわたって全国の銀行に要請しています。

銀行からは「うっせえな、余計な仕事ばかり増やしやがって」と恨み節が聞こえてきそうです。三菱UFJの対応も金融庁の要請に従った結果なのでしょう。

クレジット会社は新姓一択 楽天証券も旧姓使用認めず 

さて、ついにエベレスト級の難所です。ここはもう超えられません。クレジット会社は新姓一択。以上です。ほら、登れないでしょう?

どこかに現行制度のまま旧姓で作成可能なクレジットカード会社ってあるんですかねぇ。けど、使いやすいポイントの還元率が高いカードって限られていますし、旧姓名義ありきでクレカを選択して、他の何かを犠牲にするのは違う気がします。

もちろん旧姓で作成したカードを改姓後もそのまま旧姓名義で使い続ける人もいます。しかし、心配性の私は念のためカード会社に電話したところ「改姓手続きをしてください。旧姓名義のままで不都合があっても、それはお客様個人の責任になります」と回答されました。

具体的な不都合としては、以下が考えられます。

  1. 金融機関からカード引き落としができないかも(名義が異なるから)

  2. 海外でカードが利用できないかも(パスポートと名前違うから)

  3. カード付帯保険が利用できないかも

どれも困りますねぇ。しかも何が困るって「こういう可能性があります」としか教えてもらえないことです。
つまり「こういう不都合がない可能性もある」わけです。カード会社だって分からないんですよ。決済先の会社の判断次第なので「かもしれない」しか答えられない。
ただ一つ明確なのは、実際に不都合があった場合、カード会社は一切責任は取ってくれないこと。「旧姓使用」を後押ししている国も責任とりません。最後は私個人の自己責任!!

調べて考えるの疲れた!もう新姓にします!!

こうして私はエベレストの麓で登ることをあきらめました。
私はよく海外旅行に行くので、海外でカードが使えないとかカード付帯保険が使えないとか恐ろしくて仕方ないんです。

カードが新姓になるなら、銀行も新姓にする方が楽です。そうしないと旧姓対応していない金融機関にぶちあたったら、名義が一致しないとして取引制限がかけられますからねぇ。
三菱UFJのように「新姓•旧姓=同一人物」とみなしてくれる金融機関ならよいのでしょうが、そういう情報は公式HPに掲載されていません。いちいち電話しなければ分からないのです。

「おたく旧姓対応してますか?」と聞いて、私が望むような運用をしている金融機関にだけ取引を限ればよいのかもしれません。
けど、ここまで来て、私からその根気は失われていました。問い合わせ電話をかけると下手したら小一時間待たされる時もあります。
旧姓対応している三菱UFJ銀行ですら、電話応対窓口の人は「旧姓併記?は?」みたいな浅い知識でしたからね。
そこから説明して、対応してくれる担当探すのに時間がかかってかかって仕方ないんです。

はやく楽になりたい…すべて新姓にしたら楽になれるのかな…ゼェゼェと息も絶え絶えです。

ちなみ楽天証券は旧姓使用認めていません

以下は楽天証券との実際のやり取りです。

わたし 「旧姓のまま証券口座を持つことはできますか?」
楽天証券「ご登録情報の変更はお客様のご申告によります。ご登録情報に変更がおありの場合は、お手数ですが変更手続きをお願いします」
わたし 「旧姓のままだと、どういったデメリットがありますか?」
楽天証券「例えば弊社にてご利用のカード情報や銀行口座情報などと名義が一致しない場合は、お取引制限が設けられるなどの可能性もございます」
わたし 「新姓と旧姓の両方に対応してもらう制度はありませんか?」
楽天証券「あいにく弊社では仰せのような設定はございません」

というわけで楽天証券、楽天銀行カード、楽天銀行すべて新姓名義にかえました。楽天銀行が発行したクレカに至っては、改姓は紛失とほぼ同じ扱いらしく、カード番号自体が変更になりました…カード引き落としすべて登録やり直しです(涙)
(※楽天カード株式会社発行のクレカであれば改姓しても番号変更にならないそうです。そこらへんも会社によって対応が統一されてなくて非常に面倒くさいです)

海外は「旧姓って何?」状態 結婚で改姓義務がない海外では新姓一択

最後に「旧姓使用」が根本的に役立たずになっている主原因、海外です。
前述しましたが海外では「旧姓」という概念がありません。なぜなら、結婚による改姓義務がないからです。つまり家族だからという理由で同姓を強制されることはありません。したがって旧姓使用する日本人の事情が理解できないのです。

なので海外において旧姓使用=他人のなりすましを疑われます。要は犯罪者扱いです。

旧姓使用に理解がある(らしい)国内金融機関ですら、1人の人間が2つの名義を持つと「マネーロンダリングの抜け穴に悪用されかねない」と懸念しているのは金融庁の調査の通りです。

「旧姓」の概念すらない海外では言うに及ばず。怪しいったらありゃしないんですよ。旧姓使用って。

一般社団法人あすには の記事「国境を越えられない事実婚・通称使用」を読むと海外での旧姓使用の限界がよくわかります。
この記事の当事者、菊地さんの事例は壮絶ですね。海外でも活躍する研究者であるがために、旧姓使用をしたい。が、海外では他人になりすましていると犯罪行為を疑われる。しかし新姓に統一したら、過去の研究業績・著作物が他人の物(旧姓=別人)扱いされてしまう。

海外では旅行ぐらいしかしない私ですら、旧姓使用のへっぽこぶりに憤ったぐらいです。海外で実績を積んできた方々の絶望、やるせなさは察するに余りあります。

結論:海外で旧姓が通用しない以上、クレカも旧姓不可 つまり国が後押しする旧姓使用は役立たず!

海外で旧姓は通用しません。したがって、海外で利用するクレカも新姓一択です。だって海外で以下の不都合(再掲)が起きたら困るでしょ?

  1. 金融機関からカード引き落としができないかも(名義が異なるから)

  2. 海外でカードが利用できないかも(パスポートと名前違うから)

  3. カード付帯保険が利用できないかも

ということは結局、銀行も新姓に統一が楽な道です。でないとトラブルが起きたらすべて「個人の責任」と言われますからね。

国がどんなに音頭を取ろうが、旧姓使用は公的書類どまりです。要は国が作成の主体を担う書類限定です。
金融庁の調査でもわかったように、全国すべての金融機関に旧姓使用を徹底させるのは無理があります。

そりゃ国が「旧姓使用認めなきゃ銀行免許とりあげるぞ!」ってマイナカード並みの勢いで強硬姿勢を貫けば徹底できなくもないでしょう。
そんなことしたら免許取り上げられた銀行が国を訴える裁判を起こして面白そうではありますが、現実的ではないですね。
その銀行がある地方経済も混乱しますし。完全に優先順位とちくるった政策になってしまいます。国も罰則規定を設けてまで銀行をはじめとした民間金融機関に強制する気はないでしょう。

このように国の公的書類はOKだけど、民間と海外で使えない。これが「旧姓使用」です。

後書き:旧姓使用100%保証できるのは国内の公的書類どまり。「旧姓使用で不便ない」の嘘はやめて

「旧姓使用」のへっぽこぶりに対して、私はこの後書き見出しの通りのことを思いました。ちなみに私はもちろん「選択的夫婦別姓」支持者です。
選択的夫婦別姓に反対の方に言いたいです。この制度を混乱させているのは、反対者が推進する「旧姓使用拡大」であると。

国が責任もって「旧姓使用」を100%保証できるのは公的書類どまりです。
クレカをはじめとした民間企業のサービスへの強制力はありません。
罰則をつけてでも「旧姓使用」を民間企業に強制しようという意欲は国にはありません。
であれば反対する方々は、「旧姓使用を100%保証できるのは公的書類どまり」を堂々と公に認めたらいかがでしょうか。

事実上不可能な「旧姓使用拡大」を未だ唱え続ける政治家は、票集めのために、女性の選択肢を増やしているよう表面的に装いたいからでしょう。

「旧姓使用拡大すれば不便はありません」と主張する政治家は詭弁者です。

そうした政治家の発言を聞くたびに、彼彼女たちは、ただ自身の支持基盤を確かにするために言っていると感じています。

夫婦同姓に不便を感じる国民の声なんて、そうした政治家は本気で取り組もうなんて考えていません。

「旧姓使用で問題は解決」と世間に勘違いさせて、「選択的夫婦別姓」の議論を封じ込ませようとしている…そんな憤りが今回の記事を書いた発端でした。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
これから「旧姓使用」を考えている方のお役に少しでも立てれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?