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やさしい紙飛行機
エッセイとは、紙飛行機だと思った。18時の帰宅ラッシュにもかかわらず、たったの2両しかない列車を眺めながら小さくつぶやく。
最初は驚いた。帰宅ラッシュの時間にたった2両しかない列車に。けれど最近は驚かなくなった。22歳のくせに、都会の人口密度に住みたいという欲が減った。コンビニもスーパーもカフェも銀行もある。ネットが繋がっている。車もあるし駅も空港も近い。家の前の道も部屋の中も広々としている。宅配ボックスが備わっているアパートなのに、家賃が安い。
人の手で作り上げた建築物は大好きだが、列車の窓から見る美しい山々と湖にはどうしても勝てない。それはきっと建築家には承知のことだから、自然と調和させた建築物を見上げたときは、たまらなく泣きそうになる。もうすぐ訪れる秋が深まった田舎の景色と、イルミネーションで彩られる都会の景色が楽しみで、やっぱり四季がある日本に生まれて良かったと思う。
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先日noteで、ジャルジャルが「キングオブコント」というコントの賞レースで優勝したことを書いた。
18時の、2両しかない列車内で考えた。ジャルジャルのファンクラブに入っている私はこのnoteを、ファンクラブ内の800人ほどいるチャットに載せようと思っていたが、辞めた。
いつものように余裕で席に座り、Twitterとnoteを開いた。やさしいエッセイは、いつだってふとしたときに届く。
愛だ、愛。こういうものをたくさん読みたい。
— Mica Hirai🍊 (@mica_clip) September 28, 2020
自分たちのやりたいことを貫きながら、さらに賞レースを楽しんで、長年かけて結果を出すってめっちゃかっこいい!!
2020年。ジャルジャルが、キングオブコントで優勝した。|きゆか @kykkykw #note #コンテンツ会議 https://t.co/GVcFBgYJh1
悔しい想いもたくさんしているはずなのに、楽しそうにしているところがすごいね😊(私がきゆかちゃんnoteの後にシェアしている記事ぜひ読んで欲しい!!)
— Mica Hirai🍊 (@mica_clip) September 29, 2020
Micaさんが私のnoteを読んでくれた。それと同時に、あるエッセイを教えてくれた。それはとてもおだやかに飛ぶ、紙飛行機のようだった。やさしい風にゆられて、私のもとに着地した。
18時の、2両しかない列車の中で、涙を堪えた。窓から見える湖が夕空になじんでいた。国道を走る車に渋滞はなかった。頬を隠す髪の毛が前後に揺れていた。いつものマジックアワーの景色とともに、私は涙を堪えていた。
11時の、2両しかない列車の中だったら、きっとドバドバと泣いていた。そう思いながら家でまた読み返すと、本当にドバドバと泣いた。
自分のnoteを、ファンクラブ内の800人ほどいるチャットに載せようと思っていたが、代わりにこのエッセイを載せた。このエッセイがやさしく届くように、私はおだやかに紙飛行機を飛ばした。チャットには続々と既読がついた。そのたびに私はドキドキした。
「ステキな記事を共有してくださってありがとうございます。」なんて嬉しい感想が届いた。Twitterのリプライで「もしかしてチャットでこの記事を教えてくれた方ですか?」と言ってくださる方もいた。もしあのとき自分のnoteを共有していたらどうなっていただろう。顔から火が出てファンクラブを退会していたかもしれない。
ファンクラブのチャットだから、もちろんジャルジャル本人やスタッフも更新している。もしかしたら、と思っていたが、本当に届いていた。
唖然。。ジャルジャルの福徳さんご本人に、(正確には親切なお知り合いに「笑」) 1年との時を経て、この記事が届きました。。
— 中前結花(める)🖋minneとものづくりと編集長 (@merumae_yuka) September 30, 2020
キングオブコントの優勝で、このエッセイは完結したのだな、と思うと胸が震えます。。
どうか「わたしも保健体育は、松室先生が担当でした」ということも伝わりますように…。 https://t.co/eOHkEosAwI
2019年12月にこのエッセイが書かれ、2020年キングオブコントで優勝し、さらにこの記事がジャルジャルに届いて、完結した。
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ネットにエッセイを書くとはなんだろう。「1つのいいね」のような小さな喜びから、「本人に届く」といったドラマみたいな展開まで、たったひとつの作品からたくさんの物語が生まれる。
そんな夢の広がる物語に、できることなら永遠に参加していたい。けれどいいことばかりが全てじゃないと思う。違った解釈をされて、知らない匿名の人間に罵声を食らうかもしれない。はたまた全然書けないなんて日も来るのだろう。
それでも、自分の書いたエッセイが「いいね」と言われ、おだやかな風に乗って、誰かが飛ばしてくれる日を夢見ていたい。たかが日記だろうと、自分の文章に誇りを持っていたい。秋が深まった田舎の景色と、イルミネーションで彩られる都会の景色を見つめながら、自分が書いたエッセイと好きなひとが書いたエッセイとともに、今日も私は紙飛行機に乗せて飛ばしていく。
やさしいエッセイを書きたい。そしてやさしいエッセイは、届いてほしい人に届けたい。
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