中国 特許無効宣告手続でのインターネットサイト上の証拠の審査と認定
中国の特許無効宣告手続において、当事者がインターネットサイト上の情報を証拠として使用する機会が最近はますます増加しており、特に意匠特許の無効宣告手続では、インターネットサイト上の画像或いは写真の中の製品や設計が先行意匠の証拠として使用された事件の増加が見られる。の意匠特許無効宣告手続において、合議体はどのような法律規定に基づき提出されたインターネットサイト上の証拠の真実性、公開性(刊行物や頒布性)及び公開時期を認定するのか、一方、当事者はインターネット上の証拠の持つ特有の不確実性を克服するためにどのように合理的に形式的、方式的要件を満足すると立証責任を果たすべきかについて、事例を交えて分析報告する。併せて、2021年6月1日に改正された特許法に対応するよう改正中の特許審査指南(特許審査ガイドライン)の立証証拠に関連する規定の改正案を引用し立証手続きの改正についても紹介する。
1.はじめに
インターネット上で公表されたニュースリリースや記事、ウェブページの製品情報などは、印刷物ではなく、電子的情報であるが、一般公衆は不特定のネットに接続された端末からそうした情報にアクセスして知ることができる。そして、その情報をコンピュータメモリまたは外部メモリ媒体にデジタル形式で保存したり、紙媒体に印刷したりすることができるので、印刷物などの公知資料同様、そのインターネットサイト上での公知の事実を証明する電子的証拠とすることができる。
中国特許法に規定される特許無効宣告手続(日本での無効審判に該当する)では、従来の印刷物などの物証だけではなく、こうした電子的証拠の利用も実務上認められているため、当事者がインターネットサイト上の掲載情報を特許無効宣告手続での立証証拠として使用した事件が最近増加している。特に、無審査の意匠特許を無効化するため、インターネットサイト上の画像、図面、或いは写真中の製品や設計を公知資料とし、係争意匠特許が特許法第23条(新規性、創作性、他人の合法的権利に抵触)に違反するとし、無効宣告されるべきであると主張する事件がよく見られる。中国国家知識産権局の特許審決データベース(1)は全文検索が十分にできないためインターネットサイト上の掲載情報などを公知資料に引用した正確な事件数は残念ながら明確ではないが、筆者が当該データべ-スで簡便な検索と手作業で2021年4月末までの審決を確認したところ、発明特許12件、実案特許34件、意匠特許253件とインターネットサイト上の掲載情報が引用された事件数は意匠特許が圧倒的に多いことがわかった。
本稿では、その意匠特許無効宣告手続において、無効審判を担当する国家知識産権局専利局復審と無効審理部の合議体が、どの法律規定に基づき、提出されたインターネットサイト上の証拠の真実性(信憑性)、公開性(刊行物性や頒布性)及び公開時期をどのように判断し、認定するのか、特定事例に対する審判官の論文(2)を参考にしながら確認するとともに、当事者は証拠に対する合理的立証責任をどのように果たすべきか、併せて、改正案の出ている特許審査指南の関連規定を確認し、今後の対策について分析、報告する。
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