欧州 補修部品の意匠権保護適用除外承認(10月10日)
欧州連合理事会(European Council)は、2024年10月10日、その公式サイトでデザインパッケージに基づく 2 つの立法、すなわち意匠の法的保護に関する改訂指令と共同体意匠に関する改正規則を採択したことを公示した。採択さた条文は、デジタルデザインと 3D プリント時代における工業デザイン保護を改善するために現行意匠法を更新するものとしているが、スペアパーツの保護が除外されることは事業に大きな変更です。なお、本決定は法制化の最終段階を意味し、官報公示後20日以内に発効し、4か月後に適用され、加盟各国は36か月後(3年以内)までに国内法の改正することになります。
20年以上改正されていない現行の欧州意匠制度の改正は2020年10月に遡るが、2022年11月28日に理事会は、デザインパッケージとして2つの提案をしている。共同体意匠に関する理事会規則(EC)第6/2002号を改正する規則及び意匠の法的保護に関する指令(指令98/71/ECの改正)で、2023年9月25日に採択しました。その趣旨は、
1.3Dプリントで再現できるデザイン保護のための新しい規則の制定
2.自動車部品などの複雑な製品の修理に使用されるスペアパーツの意匠保護の除外
そして、これらは2023年12月22日に最終指令案として暫定合意し公示されました。
スペアパーツの意匠保護除外については、「修理条項」が追加され、複雑な製品の元の外観を復元するために使用される交換部品を意匠保護から除外するが、修理目的の場合のみであり、交換部品が元の部品とまったく同じ外観である場合に限るとしています。つまり、損傷したドアや、車を元の外観に戻すために交換する必要がある車の壊れたライトなどですが、今後のどのように適用するのかについて注目する必要があります。
この条項は、スペアパーツ市場を自由化し、EUの消費者が修理用により安価に入手しやすいスペアパーツを利用できるようにすることを目的としています。これにより、消費者は10年間で3億4,000万~5億4,400万ユーロを節約できる可能性があると報告されています。
個人的な見解を言うと、損害保険会社が対象製品の保険適用で支払わなければならない保険金を低減できることに意味があると理解しています。意匠の責任者をしていた1990年の経験でいうと、1990年頭初にアメリカの特許法から意匠部分を分離して意匠法を立法する法案が提出されましたが、計画され法案が損害保険会社のロビーイングで排除された経緯があります。これは、純正品だけの保護となると保険会社が支払わなければならない自動車保険の支払金が高くなり、負担が大きくなることが理由でした。しかし、欧州では、これまでも自動車用補修部品の意匠を権利化しても権利行使できないという事情がありましたので、その適用範囲や地域が広がるとの理解になると思います。
改正法の適用において、旧法での登録に変更なく、改正法での登録がその対象になる経過措置ががあることから、意匠権として取得することは従来通りお勧めですが、権利行使が限定的となることに理解した上での活用になります。
意匠法の改正では、①デジタルに対応し製品の定義を「物理的でない(non-physical)」に、②出願日確定のための意匠の表示要件を十分明確であればに緩和、③公告延期30か月の適用を弾力化、④登録意匠の無効を行政決定レベルに簡素化、⑤国内意匠出願関連料金を欧州意匠より安価に、⑥加盟各国での著作権との重複保護の制度化、など。メタバース対応はこれからの課題になりそうです。また、日本では認められない著作権との重複保護は非常に有効です。著作権行政を経産省に移管し、特許庁を知的財産庁に変える時期に当の昔に来ていると考えていますが、政治がダメだから期待はできませんね(苦笑)。
参照サイト:https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/10/10/intellectual-property-council-gives-its-final-approval-to-the-designs-protection-package/
2023年12月22日の最終合意 https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-16992-2023-INIT/en/pdf
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