米中の包括的貿易協定合意フェーズ・ワン(PHASE ONE)が及ぼした中国特許法改正
アメリカはトランプ政権になり、政権維持のための米中貿易戦争が激化し、2019年10月11日にワシントンで開かれた通商問題に関する閣僚級協議で、貿易戦争の休戦につながる「第1段階」といえる部分的な枠組みで合意したをご記憶だろうか? 2020年1月15日に、米中が包括的な貿易協定の第1段階と双方が位置付けて合意したのが、「包括的貿易協定合意文書フェーズ・ワン(PHASE ONE)」です。
この合意は中国の対米黒字22兆円の削減に関するもので、トランプの推進派の地元の農産物の輸出が目的であるものの以下の通り、多様な内容に関する合意文書となっています。
第1章 知的財産権
第2章 技術移転
第3章 食品および農産物の貿易
第4章 金融サービス
第5章 マクロ経済政策と為替レートと透明性
第6章 貿易の拡大
第7章 相互評価と紛争解決
第8章 最終規定
第1章は知的財産権に関する合意であり、営業秘密の保護や医薬品の保護、電子商取引での著作権侵害など刑事罰を求めるなど、全体で以下の通り11の項目があり、その内、CとD項が今回の改正につながっています。
第1章 知的財産権
A: 一般義務
B:営業秘密と機密営業情報
C:医薬品関連の知的財産
医薬品特許出願に対する追加データの補充提出
医薬品特許紛争の早期解決メカニズム
D:特許
審査遅延による保護期間の延長
医薬品特許の承認等での保護期間の延長
E:電子商取引プラットフォームでの著作権侵害
F:地理的表示
G:著作権侵害(海賊品)及び偽造品の製造と輸出
医薬品にかかる特別対応
税関、民事、刑事事件での侵害品の廃棄
税関や公安局での職員の増強
ライセンス契約のないソフトウェア使用の禁止
H:悪意のある商標(悪意商標登録を防止)
I:知的財産事件の司法権利行使と手続き(刑事罰)
J:知的財産保護に関する二国間協力
K:実施
その他の項目については、今年度に法改正や意見募集として既に現れています。
B:営業秘密と機密営業情報
>2020/6/10 営業秘密侵害事件司法解釈(意見募集)
E:電子商取引プラットフォームでの著作権侵害
>2020/6/10 電子商取引プラットフォームでの知的財産権紛争の審理司法解釈(意見募集)
F:地理的表示
>2019/11/27 外国地理的表示製品保護弁法の改正施行
>2020/9/24 地理的表示保護規定(意見募集)
G:著作権侵害(海賊品)及び偽造品の製造と輸出
>2020/8/5 最高人民法院による著作権の強化と著作隣接権権の保護に関する意見(意見募集)
H:悪意のある商標(悪意商標登録を防止)
>2019/11/1 商標法改正施行
I:知的財産事件の司法権利行使と手続き(刑事罰)
>2020/6/17 知財侵害刑事事件司法解釈(意見募集)
>2020/7/4 刑法改正(意見募集)
このように、日本ではあまり注目されていないけれども、包括的貿易協定合意文書フェーズ・ワン(PHASE ONE)は中国での法律改正や司法解釈の公布に大きな影響を与えている。原文は以下のサイトで読むことができます。
https://ustr.gov/sites/default/files/files/agreements/phase%20one%20agreement/Economic_And_Trade_Agreement_Between_The_United_States_And_China_Text.pdf
以上、ご参考まで。
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