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中国 特許審査指南の改正(4)意匠特許

国家知識産権局が改正し、2024年1月20日に施行した特許審査指南(ガイドライン)から実務に影響のある主な事項を紹介する。4回目は意匠特許に関し、主に部分意匠と国内優先権制度の導入と意匠特許保護期間の延長であるが、特許法実施細則と特許審査指南では、自発補正、不登録・非登録対象、創作性の審査、単一性などを明確にている。さらに、中国は、「工業品意匠国際登録ハーグ協定」(1999年本文)の締約国となり、2022年5月5日に発効した。ハーグ協定と連携するため、特許法実施細則は第12章に「意匠国際出願に関する特別規定」を新設し、特許審査指南もそれに応じて第六部に「意匠国際出願」を新設し、第1章に「意匠国際登録出願の事務処理」、第2章に「意匠国際出願の審査」を規定した。


(一)意匠特許出願の初級審査の改正

①出願書類の要件の改正

 部分意匠の導入もあり、製品や用途が不明確になり分類付与などカテゴリーわけの必要性からと思われるが、製品名上の上位言語や不適切な概括や抽象的用語の使用を認めない。立体製品の図面の提出で設計の要点ない面の提出を省略できが、設計の要点の関わる正面図の提出が必要である。簡単な説明には、製品の用途の記載を義務付け、保護範囲を確定できる規定に改正された。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.製品の名称 第一部第3章第4.1.1節
2.意匠の視図 第4.2節2段
3.簡単な説明 第4.3節(2)項

②部分意匠(局部外観設計)に関する審査規定の追加

 特許法第2条4項に部分意匠の保護が追加され、これを受けて特許法実施細則第30条、31条に規定が追加された。同様に、特許審査指南の意匠の初級審査の章に「第4.4節 部分意匠」の節が追加され、「製品の分割できない部分の保護を求める場合、部分意匠の方法で出願を提出しなければならない」と定義されたことに注意が必要である。分割できる部分は、部品意匠などの方法で出願できる。
部品意匠の製品の名称は、保護を求める部分とそれが含まれる全体製品を同時に含まなければならないことを明確にした。作図方法は、保護を求める部分とそれ例外の部分を明確に区別する方法であることを要件とし、実線で保護を求める部分を表示し、それ以外部分を点線や半透明の色彩をつけるなどの方式で表示すること(特許法実施細則第30条2項)。意匠を最もよく表示すると指定する視図には部分意匠が表示されていなければならず、境界の線は一点鎖線で表示し、部分意匠に関する部分を含め簡単な説明に記載しなければならない。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.製品の名称 第一部第3章第4.4.1節
2.意匠の視図 第4.4.2節
3.簡単な説明 第4.4.3節

③GUIに関する審査規定の改正

 GUIの意匠に関しては、2014年に保護客体として導入され、2019年の改正ではGUI単体での図面作成が容認された。今回の特許法改正で正式に部分意匠の一部として位置づけられ、第4.5節にGUIに係る製品の意匠として記載され、さらに「全体意匠」、「部分意匠」と「動的GUI」に分けられた。製品名称は「GUIの具体的用途と適用製品名」を含み、簡単な説明には製品の名称に対応し製品名称と用途が反映されている必要がある。
 全体意匠では製品全体でのGUIの位置やサイズが分かるような視図、GUIの表示が小さい場合に拡大図を追加する。部分意匠のではGUIのみの視図を提出する場合に、製品名称に用途にあたる「電子機器」の字句を含める必要がある。動的GUIでは提出要件を明確化し、製品名称には、「動的」の用語を必須とし、起動初期画面を正面図とすること、審査官は必要に応じて動画の提出を要求できる規定が追加された。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.提出要件 第一部第3章第4.5.1、4.5.2節
2.意匠の視図 第4.4.2節
3.動的GUI 第4.5.3節

④国内優先権に関する審査規定の新設

 これまで発明と実用新案特許出願にのみ認められていた国内優先権が権利者による模倣品対策のための追加の権利化のために意匠特許出願にも導入された(特許法第29条2項)。これを受けて、特許法実施細則第35条2項以下に具体的に以下のよう(部分のみ)に規定された。
 「意匠特許の出願人が国内優先権を主張し、最先の出願が発明或いは実用新案特許出願の場合、付属図面に示される意匠と同じ主題の意匠特許出願を提出できる。最先の出願が意匠特許出願の場合、同じ主題の意匠特許出願を提出できる。但し、後の出願を提出する時、最先の出願の主題に以下に掲げる事情のいずれかがある場合、国内優先権を主張する基礎とできない:
(1)既に外国優先権或いは国内優先権を主張している場合;
(2)既に特許権が登録されている場合;
(3)規定に基づき出願された分割出願に属する場合 。
出願人が国内優先権を主張する場合、その最先の出願は後の出願の出願日をもって取下げられたものと見做す。但し、意匠特許出願人が国内優先権の基礎を発明或いは実用新案特許出願とする場合を除く。」
 意匠の国内優先権主張の対象は、最先の中国での発明、実用新案及び意匠特許出願であり、複合優先権主張が可能で、最先の優先日を起算し6か月以内に出願しなければならない。その際、出願人は同一でなければならないので、優先権譲渡や名称変更を行い、出願人を一視させる必要がある。国内優先権主張をすることで、基礎が意匠特許出願である場合は、見做し取下げとなる。
国内優先権主張出願では、類似する意匠設計をついかするだけではなく、基礎となる複数の類似する意匠出願を併合して類似意匠出願とし登録維持費用の節減、全体意匠を部分意匠に或いは部分意匠を全体意匠に、また全体意匠の特定部分を別の特定部分に変更するなど、分割出願ではできないような手続きに活用することができる。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.優先権主張 第一部第3章第5.2.2節
2.後続の出願人 5.2.2.4節
3.先願の見做し取下 5.2.2.5節

⑤不登録事由の追加

 2020年に改正された「中華人民共和国国旗法」と「中華人民共和国国章法」の2つの法律に基づき、特許法第5条1項の不登録対象に中国の国旗、国章の内容を含む意匠設計を法律違反になるとして追加した。合わせて、社会倫理に違反する情況に「低俗な内容」を含む意匠設計を追加、公共の利益を妨害する情況に、「政党のシンボルと標章」の内容を追加し、関連する例示の分類、調整などが行われた。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.法律違反 第一部第3章第6.1.1節
2.公序良俗違反 第6.1.2節
3.公共の利益の妨害 第6.1.3節

⑥不認可対象の改正

 特許法第2条4項の意匠特許の定義に部分意匠を導入したことにより、部分意匠の保護対象を明確にするために、旧特許審査指南の(3)項の「分割できない、或いは単独では販売できない、また単独では使用できない製品の局部の設計」例えば、靴下のかかと、帽子のつば、カップの持ち手など」を削除、(6)項の「保護を求める意匠は製品そのもの通常の形態ではない設計」を誤解が生じるとして削除し、(10)項に「物品において比較的独立する領域を形成することができないか、或いは比較的完全な意匠設計を構成することができない部分意匠」、(11)項に「保護を求める部分意匠が製品表面の模様或いは模様と色彩の組合せの意匠設計に過ぎないもの(単純な設計)」を付与しない場合として追加した。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.不認可 第一部第3章第7.4節

⑦創作性審査の追加

 国家知識産権局は、イノベーションレベルの低い意匠特許出願や地方政府の補助金を不正に取得する目的でなされた非正常出願な意匠特許出願を排除するため、特許法第23条第2項と特許法実施細則第50条に基づく審査(創作性)を初級審査対象に追加した。意匠特許出願は実体審査を伴わない無審査登録が原則であるものの、初級審査において、審査官は取得した先行意匠と出願された意匠との単独比較に基づき、従来からある先行意匠と同一や類似する意匠設計、或いは既存の意匠の特徴の転用や組み合わせと比較し、明確な違いである創作性があるか否か審査する。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.創作性の審査 第一部第3章第8.2節

⑧単一性審査の改正

 特許法第31 条 2 項の規定に基づき、一出願は同一製品の全体或いは部分意匠でなければならない。
中国では、同一製品の類似意匠、組物()がこれまでは同一製品の例外的態様で規定されていたが、これまで実務上は登録されていた組立(組合設計)製品も一出願とできることが明確にされた。組立製品は、複数の構成部品の組み立て関係が唯一であることが条件でなり、トランプのような製品や日本の内装のように随意に製品を集めた構成は対象とならない。
部分意匠が導入されたことを受けて、同一製品で複数の連結関係のない部分意匠を一出願とすることが可能と追加した。例えば、眼鏡の両テンプル、靴表面の複数の装飾の意匠設計やスマートフォンの四隅の意匠設計などは、それぞれの部分に直接的物理的連結はないものの機能と意匠設計で相互に呼応する関連効果が生じるとともに単一の部分意匠とは異なる特定の視覚効果が形成されている。
 組物意匠について、製品の部分意匠は独立した使用価値と意匠の全体的構想を備えていないため、組物に部分意匠は適合しないことを明確にした。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.単一性の審査 第一部第3章第9節

⑨分割出願の規定の改正

原出願(親出願)は2つ以上の意匠を含んでいる場合、分割出願は原出願の1つ以上意匠でなければならず、かつ原出願で表示される範囲を超えてはならない。 原出願が製品の全体意匠計である場合、その一部を分割出願することは許可されない。また、原出願が製品の部分意匠である場合、その全体或いはその他の部分の意匠を分割出願することは許可されない。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.分割出願 第一部第3章第9.4節

⑩補正の制限に関する規定の改正

 特許法第33条に基づく当初の開示範囲を超えた補正の制限に基づき、出願後2か月以内の自発補正や審査意見に対応する補正の場合、全体意匠を部分意匠に、部分意匠を全体意匠に、或いは同一製品の特定部分の意匠設計を別の部分の意匠設計に補正するはできないと明確にした。
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.補正の審査 第一部第3章第10.1、10.2節

(二)意匠国際出願に関する規定の新設

①意匠国際登録出願の事務処理 
(a)意匠国際登録出願の提出
 特許法実施細則第136条に基づく対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.意匠出願 第六部第1章第2節
(b)意匠国際出願の事務処理
 特許法実施細則第137条に基づく対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.意匠の国際出願の事務処理 第六部第1章第3節
(c)納付の特別規定
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.費用納付 第六部第1章第4節

②意匠国際出願の審査
(a)審査の原則
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.審査原則 第六部第2章第2節
(b)意匠国際出願の審査手続
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.審査手続 第六部第2章第3節
(c)意匠国際出願の審査根拠の文書
 対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.審査の根拠 第六部第1章第4節
(d)意匠国際出願書類の審査
対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.方式審査 第六部第1章第5節
(e)その他の書類及び関連手続の審査
 委任、優先権、新規性喪失の例外など対応する特許審査指南の規定は以下の通り。
1.その他の手続き 第六部第2章第6節

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