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中国 北京法院による知的財産権懲罰的賠償適用典型事例

北京高級人民法院は、4月25日付、記者会見を開き、「北京市高級人民法院による知的財産権侵害民事事件における懲罰的賠償賠償適用に関する審査指南」と懲罰的賠償適用典型事例5件を発表した。以下は、その典型事例の紹介です。

1.“百度”商標権侵害及不正競争事件 
(2019)京73民初1335号、(2022)京民终170号
原告:百度在線網技術(北京)有限公司
被告:北京京百度餐飲管理有限公司ほか「飲食サービス」
商標権:“百度” 1579950 号42類:コンピュータ情報ネットワークによるコンピュータ情報の提供
概要:原告は馳名商標を主張し、被告の店舗、広告宣伝などでの“百度”使用を侵害と主張し、違法所得の3倍の損害賠償495万元と合理的支出5万元を請求した。一審は「百度」の馳名商標と侵害事実を認定し、一部の侵害行為に対する懲罰的賠償申立を容認し、3倍の懲罰的賠償額22,704元を決定した。
被告の提出した財務資料に基づき、年平均営業利益は308,903.54元、被訴侵害期間5.25年、商標権貢献率35%、主観的悪意の懲罰倍数3倍で
計算式:308,903.54元×5.25年×35% ×(1+3)=22,704.41元。
賠償額22,704元、第二審も当該賠償額を維持した。
要点:本件は懲罰的賠償適用時の賠償額を損害賠償額(基数)と懲罰的賠償額(基数に対する懲罰倍数の積)の和とすることを明確にした。

2.“新华字典”商標権侵害不正競争事件
(2016)京73民初277号
原告:商務印書館有限公司
被告:華語教学出版社有限責任公司
商標権:“新华字典”未登録馳名商標
概要:原告の「新华字典」は1957年発行開始の字典で11版を重ね、辞書類の市場占有率は50%を超え、発行部数でもギネス記録を持っている。被告が“新华字典”の辞書の販売差止と300万元の損害賠償を請求した。一審は「新华字典」の未登録の馳名商標を認定し、侵害停止と原告の請求額の懲罰的賠償額を決定した。
北京市新聞出版広電局の侵害辞書印刷統計数を参考に売上20,310,160元、2014年の同種の出版物の利益率11.29%、被告の主観的故意を総合的に考慮した懲罰倍数1.5倍の賠償額で、
計算式:20,310,160元×11.29%×(1+1.5)=5,732,542.66元。
算定額は請求額300万元超え、一審は請求全額を支持した。
要点:罰則的賠償を適用する故意とは、侵害者が自身の行為が他人の知的財産権を侵害することを知りながら依然として他人の知的財産権を侵害する行為を行う主観的な状態を主に言い、本件では同業者として知らないはずはなく明らかに権利侵害の故意がある。

3.“FILA” 商標権侵害不正競争事件
(2017)京73民终1991号、(2017)京0102民初2431号
原告:Fila Holdings Corporation (斐楽体育有限公司)
被告:浙江中遠鞋業有限公司、温州独特電子商務有限公司など

被告使用商標

商標権:“FILA”関連163332、163333881462、G 691003 A
概要:原告は、2008年より「FILA」関連商標を登録して、継続的に使用しているところ、被告らが実店舗やECサイトでシューズ関連商品に類似する商標「GFLA」などを使用し製造販売している侵害行為の提訴と損害賠償900万元と合理的支出41万元を請求した。一審は同種類商品の事業者として知り得る立場にあり、類似商標出願の却下処分を受けているためFILA商標を十分知っていた。誤認混同が生じる可能性を知りながら事業を展開したことに主観的な悪意があり懲罰的賠償を適用すると決定した。
被告の2015、2016年の違法営業所得791.5万元の1/3を営業利益263.8万元とし、懲罰倍数を3倍で、賠償額は791万元、合理的支出41万元と判決された。二審は原審維持。
要点:権利者は権利侵害者が権利侵害の故意を持つ主観的な状態に対して相応の証拠を提出する必要があり、立証事項は主に2つあり、1つは侵害者が権利者の知的財産権の存在を知っていること、次は侵害者がその実施行為が権利者の知的財産権を侵害することを知っていることである。被告が商標出願で商標権者の登録商標で拒絶を受けた事実は必要十分条件ということになる。

4.“约翰迪尔” 商標権侵害不正競争事件
(2016)京73民初93号、(2017)京民终413号
原告:John Deere&Company、約翰迪爾(中国)投资有限公司
被告:約翰迪爾(北京)農業機械有限公司、約翰迪爾(丹東)石油化工有限公司、蘭西佳聯迪爾油脂化工有限公司
商標権:JOHN DEERE”“约翰.迪尔”など多数
概要:原告は世界的に有名な農業などの機械メーカーで1976年に中国に進出、現地法人に中国商標の専用実施権があるところ、被告らは同一や類似の標識を工業用油などの商品を生産、販売するとともに、類似商標を登録、商号の一部にも使用し登記したため、差止と懲罰的賠償3倍の500万元などの賠償を連帯で支払うこと請求した。一審は被告らの侵害を認定し、被告らが実施した侵害行為が商品での使用、ドメイン名や企業名称での使用、複製・模倣・翻訳などでの類似商標出願、広範な販売地域での活動と違法所得も大きく、行政処罰後も侵害を継続したことから主観的悪意と深刻な情状があるとして、懲罰的賠償の適用を決定した。
懲罰的賠償額の算定では侵害商品の月間売上、販売単価、業界での平均利益率を指標に算定した基数の3倍が原告の主張を大きく超える金額であるため原告の請求を全額支持した。二審は原審維持。
要点:被告が権利侵害商品販売で行政処罰を受けた後も侵害行為を続けた行為は、再犯だけでなく、行政処罰を無視したことが故意侵害と深刻な情状の2つの懲罰的賠償の適用要件を満たしている。

5.“鄂尔多斯”商標権侵害事件
(2015)京知民初字第1677号
原告:内蒙古鄂爾多斯資源股份有限公司
被告:北京米琪貿易有限公司
商標権:979531号“鄂尔多斯 ERDOS”25類:衣服
概要:原告の本件商標は1999年1月に馳名商標と認定されていた。被告が2015年6月よりTmallサイトで“鄂尔多斯”を目立つように使用しウール毛糸製品の製造販売を開始したため、侵害停止と懲罰的賠償を適用した損害賠償32万元などを請求した。一審は被告の行為は商標権侵害と判断し、同業者で対象商標の知名度を知り得る状況であり、また基本的に同一標識を目立つように長期間営業したことには主観的悪意が明白で深刻な情状と認定し、罰則的賠償の適用を決定した。
違法利益を侵害商品販売数量、単価及び関連商標寄与率の積で確定するとし、商品単価を全体の50%を占める関連商品に求めて平均単価35元、商標の寄与率を25%と確定し、懲罰倍数2倍で賠償額18.3万元とした。
要点:違法所得を確定するときの3つの不可欠な計算指標は①販売数量、②価格、③知的財産権の貢献度であり、賠償基数=販売数量×平均単価×知的財産権貢献度で算定する。本件での貢献度は権利商標の知名度、侵害標識と権利商標の類似度、侵害標識の商品での表示位置、目立った使用の有無、侵害品販売店舗の性質、信用、影響力などの要素としている。

筆者の経験からすると疑問点がいくつもあるが、各位の参考になれば幸いです。

参照サイト:https://bjgy.chinacourt.gov.cn/article/detail/2022/04/id/6653954.shtml

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