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雨と桜とコーヒーと【2022年の五悦七味三会を振り返る⑨】

毎年桜が満開になると途端に雨が降る気がする。
「なんでやねん!」という桜たちのツッコミが聞こえてくる。
せっかく咲いたのに!
お花見にでも行こうかしらなんて思う週末は大概が雨で、ひとしきり雨に打たれた桜は翌週頭にはもう後の祭り、ほなまた来年、である。
なんてこった。

春というと「新生活ウキウキだわ、飛び跳ねちゃうわスプリングだもの!」とか「ビビッドな春物でも買っちゃおうかしら、うふふふふ…♡」
なんて思う人が多いのかもしれない。
その気持ちはよーーーくわかるけど、それはもうちょっと先の話。
実際の春の始まりはしとしと長く続く雨と低気圧と花粉症だ。
今年もそれは例外でなく、今日も朝から降り続く細い雨を窓の外に眺めながら僕はこの文章を書いている。
ウキウキのかけらもなく、僕の心はそれはもうものすごく、落ち着いている。
それはもう、もんのすごく。
そんな気持ちの人、いません?

さてこういう日にコーヒーが飲みたくなるのは世界共通なのだろうか。
雨音と暖炉とコーヒーというのはなんとも素晴らしくコンビネーション。
雨の日にはコーヒーが飲みたくなるものなのだ(実際は別に雨だろうが晴れだろうが飲むんだけどね)。
どうやら今日近くの公園の桜は満開みたいだけど、あいにくの雨だし、色々とバタバタしてたから今日くらいはゆっくり家でコーヒーでも飲んで、読みかけていた本の続きでも読もうかしら。
うん、そんな1日があってもいいよね。
というかそんな1日って最高だよね。
そう、そんな日のために、僕は長いこと「自分の好みのうまいコーヒー」というものを探し続けてきたのである。
本当にうまいコーヒーくらいしか、散りゆく桜に対抗できるものはない。
時に超絶無愛想なマスターの喫茶店へ入ったり、爆裂おしゃれでイケイケ店員さんしかいない恐ろしく入りづらいカフェに入っていったり…。
まさにRPG映画の主人公のごとく茨の道を山の中森の中、である。

そして勇者はついに見つけたのだ、最高の秘宝を…。

七味③:最高に好みのブラジルドサルト

みなさんはどんなコーヒーがお好きだろうか?
一口にコーヒーと言っても実は本当に色々な種類がある。
僕が好きなのは「中煎りくらいで、ちょっと爽やかだけど黒糖とかきび砂糖みたいに甘くて、とろっとする」やつ(なんだそれ)。
世の中に数多のコーヒーが存在する中で、なかなかドンピシャ好みの味に出会うことはない。
本当に自分好みのコーヒーに出会うことは実はなかなか難しいのだ。

そもそもコーヒーは「嗜好品」である。
嗜好品とは何か? Wikipediaによると、

嗜好品とは、風味や味、摂取時の心身の高揚感など味覚や臭覚を楽しむために飲食される食品・飲料のことである。

wikipedia

だそうだ。
要するに「味が全て」っていう理解でいいのか?
コーヒーにはカフェインが含まれるので「摂取時の心身の高揚感」を求めて飲む人も多いよね。
深夜の残業中とか、早朝の会議の前とか、とにかく濃くて苦いコーヒーを流し込んで目を覚ます、みたいな。
もちろんそれも否定しないけれど、やっぱりコーヒーの味や香りそのものをじっくりと味わえる時間は僕にとっては非常に幸せなもので、美味しいコーヒーをじっくり味わえるとなんとも言い難い、他には代用のできない、まさに馥郁とした幸せがある。

大事なのは、この幸せは他のものでは代用できないし、この味は他のものでは形容できない、ということだ。
ワインの味は、ワインの味でしか説明できないように。
ジャズの興奮は、音そのもの以外では経験できないように。
日本語の美しさは、日本語でしか共有できないように。
(「嗜好品」ってそういう意味かと思ってた)

さて、そのコーヒーとは昭和記念公園のフリマで出会った。
たまたま訪れた恐ろしく寒い冬の蚤の市に出店していたお店のコーヒー。
震えながら何か温かいものを…と公園を歩き回る姿はまさにRPGそのもの。
目に入ったトレーラーカフェでとりあえず頼んだコーヒーが、それだった。
凍える寒さの中、あまりのうまさに人目も気にせず叫んでしまった。
「こ、これはっっっ…!」
中浅煎り豆の華やかな酸味と香り、そして黒糖のように後を引く甘さ…。
まさかこんな場所で出会うとは。
お宝は意外なところにあるものだ。

思わず店主に話しかけると「焙煎にこだわってるんですよ」とのこと。
浅煎り特有の酸味が強く出過ぎないように工夫をしているのだという。
なるほど、それだ。

以来、その店で豆を定期的に購入している。
毎月その月に旬の豆を買えるので毎月違う味が楽しめてとてもいい。
今のところブラジルドサルトがベストだが、毎月それが手に入るわけではない。
今日淹れたピーベリーのブレンドもめちゃめちゃ美味かった。
もしかしたら今後、最高記録を更新してくる豆が現れるかもしれない。
まだ出会っていないだけで、最高に好みの豆がこの世にはまだあるのかもしれない…。
でも出会う前にまたドサルトの季節がやってくるかもしれない…。
一年越しにあの味を味わえたらやっぱり僕は叫んでしまうのだろうか…?
どっちにしても最高だ。
そんなことを考え始めたら、なんだかウキウキして夜も眠れない。
あ、なんかワクワクしてきたぞ?
やっぱり春はウキウキワクワクの季節なのかもしれないな!

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