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【KY19】有利子負債が多いことの問題点

私は、中堅どころの企業まででしたら、事業再生コンサルティングの仕事をそれなりにしていたことがあります。銀行にお金を返せなくなった企業の事業性評価をしたり、再生計画を立てたり、人員整理のお手伝いとかです。

こういう仕事って、嫌なことを分かってて言わないといけないし、再生企業の社員さんには人格否定までされることもありますし、はっきり言って嫌です。
なので最近は全くやっていません。

ちなみに事業性評価を、DD(ディー・ディー)とかデューデリジェンス(略してデューデリ)とか、カッコつけてカタカナで言うコンサルタントが多いです。事業性評価でいいと思うのですがね(笑)

それはさておき、今回は有利子負債の多いことの問題点について、事業再生コンサルタントの経験から、お話ししてみようかと思います。


無借金経営こそが理想?

有利子負債とは何か?

簡単にいうと、利息をつけて返さないといけない借金です。
大抵の企業は、有利子負債を割と気にしています。お金に追われるから、さっさと返したい気持ちがあります。上場しても、そのような感覚の経営者も多く、なるべく無借金が好ましいみたいです。

ただ本当に儲かって仕方がない企業でしたら、借金なんて気になりません。稼いで返せば良いだけです。そのような企業は、ほとんどないですね。

倒産するとお金を貸している銀行は困る

それに対し逆説的にですが、あまりに借金が多すぎてどうしようもないから、全く気にならないという経営者もいます。
私は分かりませんが、そのような境地もあるみたいです。

あまりに借金が多く返済ができなくなり倒産すると、連鎖的に様々な関係者、銀行だけでなく取引先や顧客、関係団体などに迷惑となるので、倒産させないようにするということです。

お金が返せないと倒産するんじゃないの?と疑問に思われるかもしれませんが、借金の利息だけ払って、元本の支払いを延期することで倒産を回避するというやり方があります。

実は銀行にとっての事業収益は利息の支払いを受け取ることなので、元本の返済を延期することは、問題だけど問題でない扱いになります。
何なら借入金を一本化して、さらに貸し付けることもあります。リスクが高いので利息は相応のものになりますが。

債務者区分と与信枠

金融機関からの借入条件は、その企業の信用力によって大きく変わります。
金融機関は貸付先を、次の通り評価します。

  1. 正常先

  2. 要注意先

  3. 破綻懸念先

  4. 実質破綻先

  5. 破綻先

基本的に、正常先以外は借入するのが厳しいです。
またランクが低いほど多くの担保を要求されますし、支払金利も高くなります。

与信枠はその企業の支払い能力によって大きく変わります。今までの取引実績や担保を差し出すか、なども加味されます。
運転資金の借入だと5年、設備資金で7-10年ぐらいで返済可能な金額が妥当とされます。
ただ社会インフラとか、社会福祉施設、病院など長期運営が前提で、利益が出るまで相当に長い時間を要するものについては、もっと長かったりします。

あと金融機関によってマチマチですが、1,000万円以内であれば支店長決済で済むので割と簡単だったりしますし、それを超えると本部決済になって難しくなります。

上場企業の場合は借金した方がいい?

このように見てくると、借金するのは面倒なので、それを嫌がる経営者も多いです。上場企業でも、創業者一族が大株主の会社ほど、あまり借金したがらないように思います。

日本の個人投資家さんを見ると、有利子負債が少ない方が評価されるようです。

しかし株主視点で見ると、株主というのは有限責任なので、金融機関からお金を借りて大きく事業展開してもらう方がいいです。
有限責任とは、株主は出資した金額以上の責任を負わないということであり、元手を少なくして、金融機関からガンガンお金を借りて、利益をたくさん出してもらう方がいいということです。

こういうのをかっこいい言葉で、財務レバレッジ(負債比率=負債/自己資本)を掛けるといいます。
ただ企業の成長速度が早すぎるときや、利益率が非常に高い場合など資金効率が良い場合は、ほとんど借金する必要はなかったりします。

借金が多いと首が回らなくなる?

借入金は全部使えない?

借入金は意外と使えないものであることを、知らない人が多いです。経営コンサルタントを長年されていても、安易に借入金を勧める方が多いです。

ところでお金を借りると、返さないといけません。何を当たり前のことを言っているの、と思いますよね?

借入金というのは元本据え置きの場合を除くと、借入した日から利息が発生し、大体毎月に決まった金額を返すことになります。
つまり借入金の金額は、減っていきます。

企業の事業活動というのは、普段の支払いや新事業の投資などを行うのですが、それに加えて借入金の返済もします。資金の流出が早くなるということです。
この場合、借入金が新たな利益を創出し、お金になって戻ってきていれば、さほど問題にはなりません。しかし新規の事業がお金になるには時間が掛かりますし、資金繰りの改善であれば足りないものを補っているだけですから、何らかの利益を創出してくれないと、資金繰りは厳しくなります。

つまり借入金の中に、借入直後から始まる返済分の資金が含まれていないと、十分ではないということです。
あくまで私の感覚ですが、借入金の1/2-2/3ぐらいしか使えないものと、思った方がいいです。

どれくらいの借金までが限界なのか?

大体売上高の8割が限界のイメージです。
売上高を超えている場合は、ほぼ詰んでいます。

これは簡単な理由です。大まかな営業利益率を10%、借入金の返済期間を7-8年としたら、会社に残るお金はほとんどない状況です。
売上高の5割以内に収めるのが、妥当です。

なお例外として、不動産売買や大規模インフラ事業などは、借入金が大きくなります。

既存事業の売上げが低迷しているときは要注意

上場企業でも業績が右肩下がりの時に、新規事業などをするために借入する企業をたまに見かけます。
これは要注意です。

どういうことかというと、既存事業が余分なキャッシュを生まない時に、新規事業でキャッシュアウトさせるわけですから、下支えがなくなります。むしろ既存事業が足を引っ張ります。

なお私は業績回復株を見るとき、キャッシュを確認します。
その際に、第三者公募増資やワラント債の発行をしている企業を評価します。
投資家が希薄化を嫌がったことで株価は下がっているかもしれませんが、それだけ信用されていると見ることができるからです。また業績回復の確度が高いからです。


今回はここまで。次回またよろしくお願いいたします。



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