小4。人生初漫才~最終話~
来週ぐらいから暖かなるみたいですよ。
ーーーーーーーーーはいはい、ほんでいよいよ出し物決めのホームルームの時
僕と石島は事前に打ち合わせをした。
石「どうする?どういう流れで持っていく?」
坂「んーお前が手上げて言うてくれよ?」
石「いややよ俺!恥ずかしい!いきなり俺そんなん言い出すヤツちゃうやん!」
坂「いやいけるって!それが逆にええって!」
石「逆にてなによ!いや、ここはやっぱり悠輔やと思う。お前の方がいいと思う。お前の方がおもろいと思われてる。」
坂「いやいや、、ほんまかぁー??」
石「いや、これはマジで。」
坂「...わかった。じゃあ俺がまず手ぇ上げて漫才やりたいっていうから、その後乗っかってじゃあおれもやりたい!ってすぐ手上げてくれよ?」
石「わかってる。それはわかってる。任せといてくれ。」
坂「わかった。」
何故この時の2人がなにをそんなに自然な流れで持っていきたがってたのかはわからない。
別に考えて来たからやりたい!!でええのに。
こいつらなりにハードルを下げたかったのだろう。
そして6時間目 ホームルーム 先生が入って来た。
先生「はいー、ほんならな、今から今度の林間学校のキャンプファイヤーの時の出し物を決めたいと思います。誰かなんかやりたい奴おるかー?」
僕は黒板に向かって教室真ん中やや後方Fー6席辺り、石島は黒板に向かって教室左やや前方Bー2席辺り。
石島が僕の方をやや半身で振り返って、(いけ!いけ!)と目配せをしてくる。
僕は(まだ。。まだ。。)と首をみんなにバレない様に振る。
「はーい!私○○ちゃんとかと歌うたいたいでーす!」
どこぞの女子が言った。
(ほら、こういうシャバいのが出てくるやろ?)と僕から石島へ
(なるほどな。一旦見る感じな。)と石島から僕へ
無論。僕はそんな案が出てくるから一旦落ち着いてからだ。
なんて思ってもいない。
ビビってただけだ。
心の中では(待てや!!緊張すんねん!てかなんで俺やねん!やっぱあん時引き受けへんかったよかった!あいつなんかムカついてきたな!)
と石島への罵詈雑言を浴びせていた。
その後もビンゴゲームだ、ダンスだの案が出た。
僕は相変わらず静観のお面をかぶった萎縮を続けた。
先生「はい!じゃあ他なんも無かったらこんな感じでいくぞー!なんもないかー?」
坂(ヤバい。終わる。)
石(いけ!いけ!)
坂(わかってる!いく!!)
石(いけ!はやく!)
坂「先生!!おれ漫才がやりたいです!!」
いったった。ばちくそいったった。
一瞬静まり返る教室。
和也だけが(いった。おれは知ってたで。おれは一回見たからな。)みたいな顔をしている。
そしてざわつく教室
「まじで?」「漫才やんの!?」「え、めっちゃおもろいやん!」「すげぇー」と男子女子の声が入り乱れている。
先生「おーー!漫才!ええやんかー!すごいな!悠輔やるんか!せやけど漫才やったら一緒にやるやついるなー!誰か悠輔と一緒にやりたい奴おるかー!?」
(来ったっ!完璧な流れや。想定内や。石島!来い!)
「はい!おれやりたい!!」
(ナイス!はやい!食い気味で最高の間や!)
石島を見る!
石島は手を上げていない!
どうした!?
なにが起こった!?
「はい!!おれ悠輔と漫才やりたい!」
僕と石島の延長戦上、Dー4席辺りにピンと腕を伸ばした純度の高い立候補をしているヤツが居る。
将吾だ。
覚えているだろうか。
このクラスで一番僕らが「ない」としていたヤツ。
ノリと、元気と、顔と、動きで、笑いを取る。
THE 小学生。
KING OF 小学生。
小学生オブザイヤー4年連続受賞。
小学生警報随時発令中、なおこの警報による笑いの発生はございません。
でおなじみの将吾だ。
将吾が天高く雲突き抜けんばかりにその右腕を垂直に立てている。
僕たちは将吾越しにアイコンタクトをした。
坂(おい!なにしてんねん!お前も手上げんかい!)
石(アホ!無理や!流れ変わってる!お前が言え!)
坂(なに!?はよ上げろ!こいつ乗っかってきてるって!)
石(おい!悠輔!お前が言え!実は石島と考えてるって言え!!)
「おーええやーん!」「悠輔と将吾やったら絶対おもろいやん!」「えー!めっちゃ見たい~!」
教室が盛り上がる。
先生「おーええなぁー!将吾やるか!先生もお前らのん見たいわ!ほな決まりやな!漫才は悠輔と将吾で決定!いやぁー楽しみやな~!」
僕の相方は将吾に決まった。
これが僕の人生で初めての一度狂いだした歯車はもう二度と嚙み合う事はないんだよ。だった。
6時間目終了のチャイムが鳴る。
僕と石島はランドセルを背負いいつもの帰り道。
気まずい。
第一声。
坂本「お前、手上げんの遅いわ(>_<)」
人のせいにしたww
最低だww
一瞬のあの、数秒間の中にあった人々の思い、感情、アクシデント、群衆が作り出した流れの変わらなさ、様々なものが小学4年生の僕を襲い、僕はパニックに陥り。
普通に人のせいにした。
石島は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
石「いやいや、あれはお前が言うてくれよ!!」
坂「いやお前が来んと!」
石「いかれへんて!悠輔が言うてくれたらまだいけてたって!」
坂「いやおれがあそこで言うたら変な感じなるやん!お前が来なあかんかったって!」
平場の反省みたいな会話した。
ネタもしてないのに。
石「もう...しゃあないな。将吾と頑張ってくれ」
坂「わかった...すまん。」
これが初めて友達を裏切ったような気がした瞬間だった。
もっと謝っておけばよかったと思う。
ーーーーーーー
「なーなー悠輔ー!ネタとか作るん!?どやって考えるん!?」
将吾の屈託のない声が話しかけてくる。
「もう、、あるよ。」
「えー!!すげー!!」
ーーー本番は将吾と二人でやった。
コンビ名は罪悪感から違う名前にした。「ポケットティッシュ」
ただそこにあったから。
キャンプファイヤー。
サンパチマイクは無く。
焚火の前。
先生が足元からハンドマイクを差し伸べてマイクフォローをしてくれる。
死ぬほど
死ぬほど
死ぬほど
すべった。
なんっっの笑い声も無かった。
ほんでテンパってわしネタ飛ばした。
そこめっちゃウケた。
そこと中川家さんとこだけウケた。
もう石島の顔見られへんかった。
「もうええわ!ありがとうございましたー!」
キャンプファイヤーを囲む自分の席へ
横に彼が来た
和也「てかなんで将吾とやったん?石島じゃなかったん?!」
僕は聞こえてないフリをした。