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ウルトラの事故
外見は明らかに人と違った、だからうまく生きてくことができず、いつこの星にきたのか、自分はどこの星の星人なのかも覚えてはいない。
人と仲良くなろうとしても、悲鳴を上げられて最初は石をなげられるけど、だんだんと過激化し、最後には地球防衛軍という組織に狙われて追いかけまわされる。
確かに罪を犯したといえば犯していた。どうしてもお腹がすいてしまい食べ物を泥棒せざる負えない毎日だった。働きたくても働けない。人目に出ることさえできないんだ。
そして、今この体はひどく損傷している。どうやら助かりそうもなかった。仕方ない一か八か巨大化してみよう。何故だかわからないけど巨大化する方法だけはわかった。同時に巨大化したらもう後にも引けないだろうなとも思った。
立ち並ぶ構想ビルなんかよりずっと大きくなった。自分を虐げてきた人間たちが自分よりはるかに小さい生き物にみえたとき、確かに高揚感はあったけど、どうするかなぁ。そう思い大きくはなったけど立ちすくんでいた。
足元で人々が慌てふためいている
悪い事したかなぁ
巨大化してそんなに多くの時間は経っていない。でも直ぐにそいつは現れた。M何星雲かわからない。そんな星からきた怪人だ。同じ怪人なのに違いがあるとすれば、彼は人に愛され、僕は人に嫌われていて、彼はこの星のヒーローだった。
「おまえかっ!人を困らせる怪人は!」
「君だって怪人じゃないかっ!」
「何をいっているんだお前?」
本当に解らないという顔をしている。彼は自分が怪人だとは微塵も思っていない。君もどう考えても人間ではないだろうに。そんなことを考えていると
「くらえ、スペシウム光線」
「え?ええ?ちょっとまって!!」
慌てたよ。何だ彼は。人間とはコミュニケーションは図れなかったが、彼とはまた違った問題でコミュニケーションが図れる気がしなかった。
「いきなりすぎないか?」
「どういうことだ?」
「なんていうのだろうか、胸にある、東急ハンズで売ってそうなその赤く点滅するものはまだ時間があるでしょう?」
「カラータイマーのことか?」
「そうそう」
多分、僕は君のそのスペシウム光線というので木っ端みじんになる。そんな運命は心得ているけど、僕にしたら一世一代の死に際だ。往生際が悪いのは嫌だけど、せめて3分くらいの時間は欲しいかな
「このタイマーが切れたら俺は死ぬんだぞ?」
「そうだけど、僕にしたら最期だから、せめてもう少し巨大化したこの瞬間を味わいたい。特に暴れてビルとか壊さないし、最期は潔く避けないから、もう少しだけまってもらえないかな。」
「ダメだ」
「頼むよ」
「だってタイマー切れたら怖いだろう。スペシウム光線いくぞ」
「いや、まってー!」
「なんだよ」
「そもそもそのカラータイマーまだ時間あるだろう?何分あるんだっけ?そのタイマー」
「何分だったかな。多分7分だ」
「3分だよっ!!」
色々抜けていてもいい。それは個性というものだろう。でも、それは命に係わる事だから、そこは曖昧じゃだめじゃないのかなぁ?彼に木っ端みじんにされるのは何か嫌だなぁ。どういうことだろうか。3分あるからせめてもう1分2分空気を吸っていたいけど、彼は7分あると思っているのに即決を望むのか。
なんとなく感じた想いがあるけど、それはどちらかというと負の言葉だから大声で叫ぶよりも、彼の耳元に近づきそっと囁いた。あんまり恥をかかせたくないからな。
「君・・アホだろ」
「なんだと。ゆるさんお前を殺してやる!」
口が悪いヒーローもいたものだ。そうこうしているうちに時間はなくなる。僕を殺そうと攻撃してくるとき頭に血が上っているのか、彼は僕の腕をつかんできた。
僕はそのしがみつかれる手を振りほどく。
「もうやめてよっ!!」
彼はよろけた反動で、結構なビルを4つか5つくらい破壊した。おそらく数千人が即死しただろうな。
「貴様よくも人間を!!」
「まって!?僕?」
人々の声が聞こえてくる。
「助けてウルトラマーン!人間の敵を討って!!」
「これは僕か?」
「Help! Help me, Ultraman! !」
「欧米かっ!!」
人間たちも一部始終をみているならわかるだろう。僕じゃないよね?
「おのれ、貴様ゆるさん」
そう言うと、彼は再び素手で挑んでくる」
「いや、打てばいいじゃない」
「何を?ホームランか?」
ここにきて、この局面で急に出てくるホームランって何?
「説明が必要だと思うよ」
「普段、世を忍ぶ仮の姿の時は野球をしているんだ。確かに最近ホームランを打ててないからな。そのことをいっているのじゃないのか?」
何をいいだしたんだ?
「9回裏、2アウト2ストライク、点差は3点、満塁の状態だ。そしてバッターは俺。」
「何の話をしているんだい?」
「打てるかな俺に?」
本当に何を彼はいっているのだろうか?心は疲れすぎちゃったのかな?まぁよくわからないけど、オツムのほうはゲームセットしているんじゃないかな?
「打てるさ」
「打てるかな」
「打てるよ」
怖さにもいろいろあるのは知っている。動物的本能もあるから、自分より強い敵にあったときは全身がこわばるけど。それとはまた違う怖さだな。
そうこうしているうちにカラータイマーの時間が過ぎて彼はしおれてしまった。おそらく死んだのだろう。巨大化した僕だけが残っている。足元で人間たちは叫び石をなげるけど痛くもかゆくもない。
でも戻り方も解らない。
「よくもウルトラマンを!!おまえが死ね!お前が死ねよ、くそ怪獣」
なんか、ごめんね。でも事故だよこれ。
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