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テレホーダイタイム

俺にとって初めてのインターネット
それはテレホーダイというサービスが
NTTにあった時代。

同世代の人は解るのではないだろうか
まだそのころはポケベルもあったし
ポケベルが鳴らなくてという歌が
大ヒットはした時代
ちなみに俺のポケベルは
本当に鳴る事はなかった

アナログ回線でキーキーキーと
繋がる瞬間ドキドキしたのは覚えている

チャットという交流の場が
ある事は知っていた。
調べると出てくる大人な世界

何これ・・・フムフム
ここで待機してたら女の子が来るの?
それは2ショットチャットで
男性がメッセージを書いて待機する
そこに誰かが入ってくると
その部屋はロックがかかり
二人だけの会話が繰り返される

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(こんな感じ)

まじかっ!!俺もやりたいけど
テレホーダイというサービスは
23時から定額制で、それ以外の時間は
インターネットは従量制
やればやるだけで通信費がかかる

出会いが欲しくてたまらない
だが、貧乏学生、23時を待つが
皆同じで、23時になると
男性のルーム待機がものすごくて
やっとルームが空いた!!と思って入室すると
既に他の人が居る状態

待機状態を奪い合う、愛の奪い合い
というか男は皆単に、エッチ目的なだけだ

この仕組みには1つ合理的な仕組みがある
先に入った人は後から来た人を
強制退出させれる権利が付与される

だからとっとと2番手は引き下がる

また先をこされてしまった
ちきしょー!

若気の至りということで
時効として見逃して欲しい
不意に良くない考えが浮かぶ

また暫くして空室ができた
今だ!と待機メッセージもそこそこで
入室したのだが、ちょっとの差で
2番手にされてしまった

待機する男の名前は「ヒロシ」
言われなくても出るのに
強制退出をくらったので
何だか心に火をつけられた

強制退出したヒロシの元に
名前を「ぴょん吉(男)」にして
入ってやった

画像2

(こんな感じ)

待機メッセージを見れば
「エッチで濡れている女入って来い」

なんだこいつ。
エッチな気分な時はあるだろう
だけども、お前は関係ない
こっちは言うても普通の学生
普通に女性と会話がしたい

エロイ話をわざわざしたいわけじゃない
出会いが欲しい、彼女が欲しい!

そして「ヒロシ」と「ぴょん吉」は
2ショットの密室で出会った

ヒロシには強制退室という武器がある
どう考えても分が悪い
それは重々承知したが
「ぴょん吉」は言った

「申し訳ないのだが
 ヒロシは面白くないので
 ここは俺に譲ってくれ」

根拠はない
ただただ強気だった

『死ね』

ヒロシにしては優しくない
お前のど根性を見せてみろ!!

しかし強制退出を喰らった
ぴょん吉は挫けなかった

果敢に攻めていった
ヒロシとぴょん吉は再び対面する

恐らくヒロシは面食らったのだと思う
自分には強制退出のボタンがある
にも関わらず2回目のぴょん吉の出現

こんな非合理な事が
あっていいわけがない

お互い会話はないまま1分が過ぎた
この間は何だったのだろうか

『死ね』

やはり強制退出を喰らった
ぴょん吉は挫けない

三度目のぴょん吉だった
今度は間髪入れずに攻めた

「ど根性!!!!」

そういって強制退室させられる前に
ぴょん吉は自ら飛び出した
もうお前のTシャツには収まらない
規格外のカエルがいるならば
それは俺だった。

しかし名前はこれ以上ぴょん吉は使えない
今度は女の子っぽい名前にする
梅さんにする事にした
性別は女性だが心はシャクレていた
ど根性繋がりだ

「こんばんは、初めまして」
『はじめまして、こんばんわ』
(こんばんは・・なっ)
頭は悪いんだなと思った

『おいくつですか?』
驚いた。年齢からくるのか?
なんとなく地域とかじゃないのか?
まぁーどちらでもいいわ

実際梅さんがいくつなのか分からない
「27歳です」
アニメの推定で答えた
『まじですかっ!俺も27ですよ!』

タメだった。
『歳が同じなんて感激です』
なんだこいつ

不思議な生き物を見ている気がした
なんでお前ちょっと紳士なの?

「エッチで濡れている女入って来い」
ヒロシの待機メッセージは光り続けている

『何をしている人ですか?』
困ったな。よく決めてないから
本当の事を言うことにした
「お寿司屋さんで働いてます」
本当の事というかアニメ設定

『ナニを握っているんだろ~ハハ』
なんだこいつ・・・
返しが上手いじゃないか

「上手いこと言うな。でもぴょん吉が
 泣いていたぞ。ど根性!!」

『えっ?』

強制退出されるより先に
梅さんは飛び出した。

再度ヒロシのいる部屋に入るが
ど根性カエルのヒロインの名前が
思い出せなかったので
アニメを替えることにした

「マチコ」マチコ先生だ
ここで一つ俺の中で迷いが生じた
アニメシリーズであることを
ヒロシに暗に提示するかどうか
「マチコ」にするか「マチコ先生」にするか
う~んまいっちんぐ

迷った末に攻めることにした
「マチコ先生さんが入室されました」
変なアナウンスがされる。
流石にこれは気づくだろう
ヒロシもそこまで鈍くないだろう

『はじめまして、こんばんわ』
鈍かった!!
しかもこんばんは、な!

アニメが変わったことで
別の人だと思ったのだろうか
しかし案外礼儀正しいな
待機メッセージとのギャップが凄い

案外紳士なのでマチコ先生は攻めた

「こんばんわではなくて
 こんばんはの方がいいですよ。頭悪そう」

恐ろしい程にマチコ先生は毒舌だった
アニメキャラとのギャップ
この当時(笑)カッコワライという概念が無い
あったとしても効力が無い程の毒を吐いた

『先生だけあって厳しいですね
 何か責められると興奮するなー』

驚くほどにヒロシはエロに向けての一本道
なんたるど根性!てかスケベ根性!!!

「そうねヒロシ君、この部屋をぴょん吉に
 譲ってあげた方がいいわね。ど根性!」

『えっ!?』

マチコ先生は飛び出した。

次はどうしようか考えていたら
ヒロシの部屋が満室になった
本物の女性が来たっぽい
だけどあの待機メッセージでくるのかね
と思っていたら直ぐ待機状態になった。

どういうことか調べるため
アニメシリーズを諦め
康子と普通の名前で入ってみた
『どうせぴょん吉だろう!!』
瞬時に強制退出させられた

前の女性は憤慨したことだろう
彼は今、全てがぴょん吉に見える
疑心暗鬼状態にある。

ログの履歴は消えないので
康子の前には由紀という名前の人が
入室していたのが解る。
恐らく本物の女性だろう

今どんな名前にしても無理だ
しかし、そんな時に妙案が閃いた
こういう時は俺の頭は恐ろしい程回転する

ヒロシのいる部屋には
管理人さがいた
管理人さんは言った

「今、凄い荒らされていましたよね?
 せっかく遊びにきてくれたのに
 管理不足で申し訳ないです」

『いえいえ、こういうサイトですから』

利用させてもらっている側としては
それは管理人さんに対して失礼だろう

しかしそんな事に気づける人なら
ここで遊ばないリア充だっただろう

「しっかり対応しておきました
 もう来ないと思うので
 じっくり遊んでくさいね」

『あっありがとうございます』
 管理人さんのような人がいるなら
 安心して楽しめます』

何を楽しむのか
楽しんでるのはお前ではなく
俺だけどなっ!!

「それでは私がここにいては
 お邪魔ですから出ますね
 由紀というのは本物の女性ですよ」

『えっ?』

「ど根性!!!」

その後、空室が1つできた。
だが、彼がいなくなると
俺の心にも空室ができていた。

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