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買えなかった蛤

音楽を聴きながら書いたので流しながら
お読み頂ければ幸いです。

とてもお金が必要な時期があった
その時、彼女がいて彼女には子供がいて

出会ったタイミングは親父の下で
働いていて羽振りもよかった
一緒に暮らすようになって
親父にはトラブルが起こり
ストレス発散の捌け口は俺で

ノイローゼになり、
逃げ出すように親父の元を去った

再就職したけど甘かった
小学生の高学年、色々お金もかかる
とってつけたような仕事では
生活費を捻出するいっぱいいっぱい

土曜日にどこか「ご飯でも食べるか?」と
声をかけると、今は辞めておこうって
なんだか情けない

海に連れて行けば海の家で売られている
蛤がとても美味しいそうで
けど1つ500円もする
3つで1500円をなんとか捻出して
余りにも美味しいから
娘がもう一つ食べたいと

普段我がままを言う子ではないから
美味しかったのだろう

だけど500円が捻出できない
一人海に行き深々と潜ったよ
世界で一番情けない男と思えて
泣く以外に心を保てなかった

就職した会社は目黒にあり
美味しそうな料理屋さんが並ぶ
同僚たちは皆、好き好きに大盛を頼む
大盛を頼めば煙草が買えない

そんな時って生活は荒み
部屋には10円玉が転がっていて
かき集めて煙草を買いに行ったら
全部10円だと売ってくれない店
蔑まれたあの目は今も忘れない

お金が無いってこんなにも惨めなんだな

そんな仕事先に相談しに来た人がいて
その人と話しているうちに
気に入ってもらって
一緒に会社を興さないか?と誘われた

その人は
商業施設のトラブルを緊急で
解決する仕事をしていて
WEB戦略を考えたり
営業事務を全般的に行う
No2を探していた

誰でも何でもよかった
蛤が1つ買えるなら

蓋を開けてみたら
彼はアルコール依存症で
仕事は出来るけど一緒に始める前に
酔って車を運転して事故を起こし
始める前に免許を失効する

だけど今更引き返せない
現場まで俺が運転をする
緊急の仕事だからさ夜中も多い
彼の家(事務所)で寝泊まりすることにした

最初1か月は家に帰らず
現場でホームページを更新したり
広告の管理をしたり
その間も入電の電話があり
かと言えば現場の助手もする

ただ1か月もすると軌道に乗った
流石は俺(笑)

確か利益の30%くれるはずだけど
月商は3ヵ月もすれば1000万
もちろん仲間も増えるから
まるまる利益ではないけど

給与も少しだけ上げてくれて
約束とは違うけど生活できるレベル
不満はない。

蛤は追加で食べさせてやれる

軌道に乗れば運転手は別に雇い
家には帰れるけど

朝6時から電話を受けつつ
高速を走り事務所までいく
彼はアル中だからさ
酔うとわけがわからない
日が変わらないうちに帰れる事はなく

たまに早く帰っても酔っぱらって
クビだのなんだのとアル中を発動される
その度に生活を想えば怯え萎縮する毎日

盲目的に生きていたかな

帰り道の夜中2回ほどウトウトして
首都高のガードレールに直撃寸前で
死にかけた

彼は羽振りが良くなると
事務所につけば女と寝ていることが多い

こっちは高速を運転中
メモを取りながら死ぬ思いで
高速を走らせているのに
仲間がいたからね

彼よりも仲間に必要として
もらえた事が嬉しかったのもある

ある日取った仕事を事務所で
割り振っていると
うるせーー!と起きてきて殴られた

なんだか心が壊れてしまったよ

限界だったのかもしれない
蛤を食べさせてあげられない
そのことを思えば泣けた

独立を決意した瞬間でもある
頑張っていると
誰かは見ていてくれるもので
仲間がついてきてくれた

ゼロからでお金がない
すでに親父は亡くなっていて
負債だけを残して死んだ

母親は手元に殆どお金がなかったけど
50万円ほど貸してくれた

今にして思えば親不孝だけど
自分で仕事を始めるにあたって
最初にしたことは生命保険への加入だった

失敗したら死のうと思った

受取人は母親でできれば娘に
分けてあげて欲しい
保険証のケースの中にメモを添えておいた

悲壮な覚悟だよ(笑)
でも自らに招いたことだから
文句も言えない

数か月のうちに収入が増えた
始めての依頼は仲間についていった
埼玉の奥地だ。

夜から始まった現場は
終わったときは朝だった
信じられないけど帰り道に虹が出たんだ

その虹を見た時
涙が止まらなかった
きっと急に緩和したんだよね

助けてくれた仲間は
今は独立しているけど
今も助けてくれている

娘は私立の高校に行き
大学にも一発入学し今年卒業した

漸くお金が自由になるかな?と
思ったら流行り病で貯金を崩す生活

人生はままならないな(笑)
けどまぁ俺は幸せに生きている

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