非常識人 第三十話 うーばー
その日は雨だった。
頼まれていた物を運ぶのには都合がいい。
買う側も売る側も免取り。足がない。
ガソリン代+一万しかもらっていない。
身内同士だといつもこうだ。
仲間という言葉は重い。
お互いに損を受け入れお互いに得する。
すると様々な案件が回る。
手に入る物の範囲も広くなる。
皆が皆ドラえもんだ。
どれだけ体を張るか。張ってくれるか。
それが当時の男としての価値観だった。
ナンバー420の車にRAWのステッカー。
片手にペンとジョイント。
ドリンクホルダーにはリーン。
前方の車が邪魔ならクラクションで道を作る。平均速度120km/h。
公営バスに当て逃げ。
「あ、ミラーやったわ。めんどくせえ」
舌打ちをする。
バックシートに500グラム。
止まる理由が無い。一発で実刑だ。
無事に到着。
「ほい!」
デカパケを投げる。
「ありがとうー吸ってく?」
「当たり前やん!せめて巻け」
SWISHER社がコロナで休業中。
2人でフィリーズのグレープを5本灰に変えた。
帰りは何もやましいものはない。
だが吸い過ぎたようだ。
ゆっくりと帰路に着いた。