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非常識人 第三十四話 ムショ4

保釈申請は2回とも通らなかった。

逃亡及び証拠隠滅の恐れあり。

申請を提出する際にかかった費用は、後に返還される金だが200万円。

しかし却下の通知は紙一枚のみだ。

結審の日。

検事からけちょんけちょんに言われる。

一切の更生の余地無し。

当たっているが腹が立つ。

執行猶予、所謂弁当が付く際は「ただし」という言葉が裁判官から出てくる。


やはり出て来なかった。

求刑一年四月。

ションベン刑だが少量の単純所持にしては重い。
情状が悪過ぎた。

刑期はまかる。
短期の懲役。

覚悟はしていたが現実を突きつけられると落ち込む。

再度手錠が掛かる。

拘置所に逆戻り。

C棟から確定房であるE棟に部屋を移された。

緑色のつなぎを渡される。

これまでのように私服は着用出来ない。

E棟は比較的綺麗な建物だ。
新しい。風呂も広い。

とは言え8畳の部屋に6人が寝る。

罪状は詐欺。

シャブ。

傷害。

闇バイトの受け子。

複数の強盗致傷。

聞こえは悪い。

だが皆何も変わらない。普通の人間だ。

時給4円30銭ほど。
1日中ひたすら紙折りをする。

刑務所への移送待ちの期間。

退屈で仕方がない。

「行くなら民間か当所執行がいいですよね」

「いやあ。大分か佐賀でしょう」

話す。

民間というのは厳密にいうと刑務所では無い。

警備会社が運営に関与している半官半民の社会復帰促進センターだ。

通常の刑務所に比べ規制が段違いにゆるい。

A級。
所謂初めて刑務所に入る人間は皆そこに行きたがる。

当所執行は拘置所で全て刑を完結させる事を指す。
こちらも中々選ばれない。

2ヶ月ほど過ごした。

今度は移送前の部屋に移動。

拘置所内は移り変わりが本当に激しい。

「諸君らはこれより大分刑務所に収監される」

やっぱりか。
バスに乗り込む。

福岡拘置所を離れ高速道路に入った時。

刑務官が最後に優しさを見せる。

カーテンを全開にしてくれた。

外の光景が輝いて見える。

「しばらく見られなくなるな」

目に焼き付けるように俺は景色をただ眺めていた。






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