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非常識人 第十六話 カケアイ〜後編

ベンチャー企業の社長は総じて似ている。

自己顕示欲が強い割に実力が全く伴っていない。

取り扱い商材と何次代理店か。
契約件数はどれ程か。
商売の内容と大体の毎月の純利益が推測できる。

資本金が300万円。
社員が6名(内2名が業務委託契約)。
中途半端な大学を出た肩書き。
SNSではリア充。
中高ではインキャの中で粋がっていた部類。
ワンシーズン遅れのハイブランド。
グッチとガガミラノ。
時計を知らない証。
またはスーパーコピーのロレックス。
ついでに。ただのチンピラが営業部長なり専務の肩書を持つ。人がいないだけだ。

今回の件は、後輩が成人になった3ヶ月後。「絶対に儲かる!アコム行こう!」と投資話を持ちかけ100万円をアコム、レイク、学生ローンなどで借り入れ及び投資をさせ、紹介料を得ていたという内容だ。

「この子から依頼を受けてお話しに来た代理人の山口と申します。オタクが社長の何さんだったけ?ほら、飲んでいいよ。君らが遅過ぎるから冷めてるけど」

 ビジネスネームの名刺。

100枚単位で業者に発注していたものだ。
肩書きも全てでっち上げ。

常識的にどちらが悪党か分からない。

彼はビクビクしながらいただきます…と言いつつすする。
こいつはもういい、俺は見切った。

同行して来た副社長は無言でカップに手を付けない。
こちらを睨むわけでも無く真っ直ぐ見つめて来る。

「落とすべきはこいつだ。社長はこの話の責任を取るだけの財布だ。無視でいい」

俺と副社長の話し合いになった。
だが所詮はサラリーマンだ。
ましてやどこまでもビジネスパートナー。
自分の懐が痛む話でもない。
本音は面倒事は避けたい。

エサを与えられているペットと野良猫の違い。

引くという選択肢は無い。
目の前に30万出す。
「これでいつでも弁護士雇って刑事告訴も出来るけど、どこまで積む?
会話録音していいよ。
許可を取らないと秘密録音になって証拠能力が薄れちゃうから。いいよね?」

約一時間ほどで結論が出た。

山口が会社に二度と関わらないという事を条件として、実際に投資で損益を出した分の金額に少し色を付けて返済となった。
 光回線と通信会社の代理店で、ただでさえ時間が惜しい。嫌がらせで契約申し込みの予約キャンセルの連発や表現の自由と主張し風評被害を受けたらたまったものでは無い。
しかも何故か個人情報を全て知られている。

後日払いは無しだよ、と圧をかける。
ビジネスネームの口座を持っていない為、現金でしか受け取る事が出来ない。

社長が自分の親に電話をする。

示談金を受け取り、署名。

後輩が被害を受けた(事にした)証拠物及び刑事告訴しないという書類を渡す。

その上で俺の手には23枚の福沢諭吉。

帰り道。
「ねー、何でお前のトラブルなのにお前が50万もっとん?いいなあ」

「そんな言わないでくださいよ。ガンジャ今から買って来ます」

ウーバーイーツよりも早く届けてくれる。
頭が悪い分行動力はある。

そんな彼についても少し。

後輩は私服で来てかつドレッド。

ポケットにメリケンサックを入れて来ていた。
頭が悪すぎて社長を睨むことと怒ることしか出来ない。殴る場所にカフェを選ぶバカがどこに居るのか。

そんなバカだからてめえは騙されんだよ、俺は軽く頭をはたいた。

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