非常識人 第十一話 悪党狩り
真面目な人がバカを見て、悪党が得をする。
コロナが流行した年がそうだった。
飲食業をはじめ真っ当な経営者は経営難に陥る。もしコロナに感染しようものなら腫れ物を触るような扱いを受ける。
得体の知れない不治の病の扱い。
お笑いタレントの志村けん氏が亡くなったことでそういった世論に拍車が掛かった。
貧すれば鈍ずる。
頭の弱い悪党が世の中に溢れかえった。
今は破綻したジュビリーエースへの勧誘。
個人事業主を騙る給付金の詐取。100万円のためならと税務署に足を運び虚偽申告。法人格を持っていれば更に詐取可能。
当時頭の弱い悪党達にモラルは無かった。
俺は笑いが止まらなかった。エサだらけだ。
法を犯している者は警察に頼れない。
俺は無資格で名乗れど法に触れない某資格を名乗った。
カモのフリをして「悪党」である彼らに接近する。
仮想通貨FXの勧誘業者には脱税教唆及び消費者金融への付きまとい行為。
給付金を詐取した者は詐欺。
それぞれの弱みにつけ込む。学生や零細企業の社長に半グレ。相手が誰だろうがテーブルをつく。すると金が生まれる。
負けたことがない。
いわゆる「スキマ産業」に勤しんでいた。
また書類上無職かつ社会人では無かった為、コロナによる社会保険の延長及び住居確保給付金の恩恵も受けていた。
それらの案件を友人にも回す。
相手が何歳上でも下でも利益は折半。何故なら発案者は俺だ。
未収金はゼロ。俺のことをよく分かっている。
老人など社会的弱者を騙したりするのは好みでは無かった。悪党と金持ちを常にターゲットに選んだ。
ひたすら自分の正義だけを貫いていた。
そんな時期だった。
因果応報。良くないことをすると自分に返ってくる。全くの別件で家に内容証明郵便が届いた。送り主は某法律事務所。弁護士の名前が三名記載されている。
不起訴の流れに持っていく策を考える時間が必要になった。
何よりも不安で心が支配された。
じっとしていられない。
県境で証拠となり得る物を次々と破棄。
不安を紛らわす為、1ヶ月ほど全国各地を旅行がてら転々としていた。
地方の顔馴染みの温泉宿や全く面識のないビジネスホテルを渡り歩く。
山奥から都会の片隅。月明かりは何処にいても優しかった。