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非常識人 第四十四話 アカダマ

真っ赤なシートの中に薄ピンク色の錠剤。

通称赤玉。

薬剤名はエリミン。

数年前まで価格高騰し、ワンシート10錠で一万円ほどで販売されていた。

しかし、俺が使用していた当時はただの処方される中途覚醒型の睡眠薬だった。

新宿の端にあるとある病院に行けば一度に6シート貰えた。約¥1,500ほど。安い。

保険証が無くても負担額は増えるが受診可。
更には院内処方。

つまり薬局を挟まないため合法のプッシャーのような存在。

無敵である。

病院の壁にこう書いた貼り紙があった。

「当院で暴言や暴力行為を働いた際は直ちに通報します」

つまりそういった問題が過去にあったと言うことだ。

客層がその辺のクラブよりも悪い。

メンヘラ女、キャバ嬢、本職、ビーボーイ。
いわゆる「普通」の患者が極めて少ない。


シャブ中がシャブ抜きの為の受診をする部屋も用意されている。

悪い先輩にその病院の存在を教えてもらったのが間違いだった。

ハマった。

酒と合わせると多弁になり、クラブやバーにも堂々と持ち込める。

最初のうちはただの陽キャ、パリピのようになる。

「安いしガンジャ買うよりリスク無いしいいじゃん!」

ガキだった俺はそう思ってしまった。

友人4人に少し多めにお金を払い、代わりに取りに行ってもらう。

俺の分も合わせると月に30シート。
1日に10錠も食べている計算。

性格が狂う。

・平気で薬物をポッケに入れ持ち歩く。

・MCバトルでナイフを出す。司会から止められる。

・当時付き合っていた北関東に住む彼女が車で家に来てくれている状況で、「1人で新宿行きたい。送って」と平気で言う。

・友人に些細なことで当たり散らかす。
  喧嘩になる。

・初対面の相手に赤玉を勧める。
  断られるとキレる。

・もう1人のラッパーと共同作成のEPの挨拶回りや梱包作業に協力しない。

・先輩ラッパー達に難癖をつける。


覚えている記憶だけでこれだけ。
最低だった。今だから言える。

当時関わって頂いた皆様。
本当に申し訳ない。

俺のような悪用する人間が多すぎた為か、製造中止になった。

本当に良かったと思う。


P.S ヤクブーツハヤメロ。笑え無い。

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