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魔法のポケットの話

私が以前、放課後等デイサービスで働いていた時の話です。

子ども達の中には、一度気持ちが高ぶると周囲に発する言葉が攻撃的になってしまう児童もいます。それは家庭の中、学校や保育園などどの場面でもありうることで、中には衝動的な感情を抑えきれず、つい感情に振り回されたやり取りをした経験のある方もおられるのではないでしょうか。

私が目の当たりにしたのは、一人の経験豊富な女性スタッフと、”不安”や”焦り””疲れ”などのマイナスな感情や状態を言葉で表現することが苦手で、攻撃的な言葉や行動で表してしまう子どもとのやり取りです。

引き出したいのは今の心の状態ですが、気持ちが高ぶっている状況ではそれはなかなか難しいものです。つい「何でそんなこと言うの!?」と問いたくもなりますが、子ども自身にとってもそのイライラ、モヤモヤの正体が解らないから、八つ当たりとして周りに怒りをぶつけてしまっているわけです。

まず彼女は、彼女自身に子どもが意識を向けやすいような環境を整え、エプロンのポケットから何かを取り出すと、パッと瞬間的に気持ちを切り替えさせることに成功していました。

その時にポケットから出てきたのは、よく見るとストローで作っておいたサングラスです。子どもの心は、もはやサングラスのとりことなっていました。

そして、気持ちを切り替えることができ、落ち着いてきたところで心の状態を紐解いていくと、友達関係や勉強のことなどが上手くいかず、抱えていた思いを話してくれました。
子どもも、モヤモヤを整理しながら話すことで、自分の気持ちと向き合うことができたようで、スッキリした表情に変わっていました。

彼女は子ども達の興味ある話題や遊びについての情報が豊富で、何が出てくるかわからないエプロンのポケットは、子ども達からは"魔法のポケット"なんて呼ばれていました。

魔法のポケットは、子ども達が心を開きやすくするための彼女のテクニックの一つで、その手法をいつでも使えるように準備している様子は、さながらマジシャンのようでもありました。

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