タマムシ発見!!! 🐞
小学校に上がる前だっただろうか、母親に怒られて半泣きで家を飛び出した。
「もう家に帰ってやるものか」と強がりつつも、姫路城清水門跡から入ったところの姫山公園で、母親が探しに来るのを密かに待っていた。家から目前の距離。
なかなか探しに来ない。
こうなったら持久戦だ。当時は公園の入口にソテツが密植されたところがあって、探しに来たら隠れてやろうと、その周囲をうろついていた。
ふと足元を見ると、綺麗な虹色をした細長いものが落ちていた。
拾い上げると、こ、これ!
タ、タマムシやん!!
ブリキのタマムシのバッチを持っていたので、すぐにわかった。
僕は黒や茶色一色のカブトやクワガタより、色とりどりのセミやカナブンの方が好きだった。
タマムシはその最高峰で、まさか身近で見つかるとは思ってもいなかった。
ただ残念ながらそのタマムシは、明らかに弱っていた。手足が微かに動いているだけ。
かわいそうだけど、逃がしたくない。友達や探しに来た母親にも見せたかった。
ところで、母は僕がここにいることは分かるのだろうか?
まだ明るいけど、もう夕食の時間だ。
もしかして、他の場所を探してるのかも。
帰りたいけど、なんか嫌だ。
家を出てきたときの半泣きの涙とはどこか違う涙が出てきた。
「ご飯やで、早う帰ってき」
門跡の石垣の横に立つ、母親の声だった。
無言で母の後を距離をおいて家に帰った。
タマムシは元にいた場所に置いて帰った。
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