時代のニーズに合わせて変化せよ。「奄美の里」マイクロツーリズムモニター体験談。
鹿児島に移住して4か月目になりました。
今日は、鹿児島市の観光課がやっている、マイクロツーリズムのモニターツアーに申し込んで、奄美の里に行ってきたので、その体験談を大量の写真とともに。
最初に結論を言うと、「鹿児島市内で奄美を感じる施設とかw」としか理解してなかった自分が、「奄美の里」を応援したくなったうえに、奄美だけでなく枕崎もさらにファンになったのでした。マイクロツーリズムは、地元への理解が深まるし、郷土愛(?)も深まるし、さらにお買い物すれば地元にお金を落とせるし、すごいいい仕組みだなと思ったのでした。
そもそも「マイクロツーリズム」ってなに?
そもそもマイクロツーリズムって何なんだよっていう話ですが。
こちらの記事によると、「星野リゾートの星野佳路代表が提案した新しい旅のあり方」で、「小規模なエリア(地元)で行なわれる限定的な旅行」とのこと。魅力として①自分の住んでいる町の魅力が再発見できる、②観光地に行かなくても楽しめる、③感染防止対策をしつつ旅行ができる、④地域の人とつながれる、といったところがあるとのこと。改めて振り返ると、確かに①~④そうだったなーと思いました。
今回のツアー先は奄美の里
ということで、今回伺ったのは「奄美の里」です。
申し込んでから気づいたんですが、ここ、結婚式場なんですよね。ガーデンウェディング対応。東京でいう目黒雅叙園的な。
そりゃ、地元民足運びづらいわな!と思ったのですが、中に入ってみると
大島紬について学べる屋外の各施設・資料館があり
あ、トイレがめっちゃきれいでした
さらには実際に大島紬を織っているかたも目の前でみることができ(写真NGなので撮ってません)大島紬に対しての理解が深まるうえ
「君の名は。」でも出てきた「組紐」の体験など、ワークショップも随時開催しているようで、観光の施設でもあることに気づきました。
混乱していると、責任者の方?がやってきてお話ししてくださったのですが、もともとここは工場で、戦時中~後の奄美大島がアメリカの統治下に一時的になっていた時、大島紬の文化・伝統を守るために「疎開」した先のうちの1つだったそうです。
工場はここだけでなく、全国各地にできたそうですが、今や生産量が1/45に減少。一時期90万反の着物の製作量だったのがいまや2万に。そんななか、ここは、観光地として大島紬を多くの人に正しく理解してもらう場所として変化し、さらにウェディング業界にも参入。
そんななかでコロナダメージを受けていてかなり今年は厳しい状況とのこと…!ううう…!
こちらの記事でも、生産量が全盛期の1.6%に落ち込んだって書いてあります。もともと作る人も減ってる課題もありますがこれも…この数字は衝撃。
色々とお話しをお伺いしている中で印象的だったのは、奄美の里の園庭。
ここは、日本のよくある侘び寂な庭園ではなく、「奄美」をイメージした庭。この奄美の里を作った方が、奄美にある竜宮城伝説(ニライカナイ)に憧れがあり、「僕にとってのニライカナイ」を探し続けた結果、最終的にそれは「奄美だ」と気付き、「奄美×ニライカナイ」をテーマに作ったそう。話を聞いている感じ、天国というか、最高の場所的なイメージを抱いたニライカナイなのですが、お庭の中にはめでたい鶴亀の石があったり、普通にシロサギが休みに来たり、と、なんと縁起が良い空間になっているわけで。
鹿児島の富士山的存在、開聞岳をイメージした山があったり、鯉が泳ぐ池があったり。
侘び寂な日本庭園も良いのですが、鹿児島ならではな庭園もよいなと思いました。ここで挙式上げる方は郷土愛深まるだろうなあ…
想定外に勉強になった、出汁ワークショップ
園庭ツアーを終えて室内に入り、案内されたお部屋にはまさかの鰹節が置いてありました。なんとここで(たぶん挙式時のご親族の控室…!)出汁のワークショップをするとのこと!
講師はまさかの枕崎からわざわざいらしてくださった中原水産のかた。
お話しによると、なんと日本の50%近くを占めるのが枕崎の鰹節だそう。日本のご家庭の2人に1人は枕崎の鰹節を使っている!と。というのも、カツオは南でとるのが良いそうで、そのため鹿児島南端にある枕崎や、高知県がカツオ漁が盛んになったとのこと。ちなみに2月ごろにその年初のカツオが日本にやってくるので「初鰹」というそうです。ただ、今は枕崎市出身のお医者さんのご自身の財産による航路開拓で赤道近くまで行けるようになった(つまり自腹…!)そうで、赤道で漁をして枕崎まで持ってきて…ということもしているそうです。枕崎のカツオ漁の繁栄に貢献したということで、銅像があるらしい笑
鰹節がどのように作られるか、なども説明を受けましたが、このワークショップで私がいちばん学んだのは、鰹節には「荒節」と「本枯節」の2種類があるということ。それぞれ紹介すると…
荒節…出回っている鰹節の80%を占める。
燻製された直後の香りが強い。水分が残っていて魚の味がよく出る。やわらかい。
性格的には自己主張激しいのでソースに対抗するお好み焼きたこ焼きとか向き。具材が多いたこ焼きも。
本枯節…出回っている鰹節の20%を占める。
カビの力で旨味をだす(2週間でカビが菌を出すのが限界になるらしい。が、水で濡らすと再び菌を出し始めるので、そうして繰り返して作っていく)。納豆みたいなもん。鰹節自体は硬く、削る時の音が高い。
性格としては繊細なものに合うので何かの食材を引き立てるための名脇役、ほうれん草、豆腐、茶碗蒸し、だししゃぶしゃぶ。
それぞれを試食したり香りを楽しんだ後、実際に出汁にしてそれぞれ比較して飲んでみますが、確かに荒節は主張が強く、本枯節は控えめだなということが、だし汁でも感じることができました。
中原水産の方によるお出汁の作り方におけるコツとして、私が勉強になったのは以下の通り。箇条書きですみません。
・出汁は1時間で味の変わる繊細なもの。
・60度で昆布の水出しをする。菌が出やすいからちゃんと加熱(80度)する
・こす時に押さない!苦味が出ちゃうから最後の一滴が出るまで待つ!
・保存方法は急冷。出汁は栄養価が高く菌も大好き。常温保存だと菌が増える温度を通過してしまう。使い切るのがベストだが、どうしても保管したい場合は氷水の中で冷やすか、冷凍などがgood。
・寒い時に「荒節」多め。食後の一杯は「本枯節」。
・2回出汁をとってもだしがらは80%栄養が残っている。なので細かく刻んでなんでも使うことができる。昆布も細かく刻んでもいいと思う。炊き込みご飯、ツナマヨに混ぜてサンドイッチ、パスタ、チャーハンもあり!(2番出汁の時は押して良いから、それを少し乾燥させてから料理すること!)
自由に質問ができるということで、無知な私は「そもそもなんで鰹節っていうものができたんですか?」と質問。魚に堅いと書くカツオは、もともと生で食べるのに向いておらず、内陸(山)がある日本で保管方法として干すという概念が生まれたそう。干すともちろん固くなるので削る。そこから鰹節が生まれたそうです。日本を南下すると、モルディブとかでもカツオを食べる文化があるそうです、「山がない」ため、保管などの発想に至らなかったそうです。「どうやって内陸に持っていくか」という、日本の自然との共存方法の模索から生まれた食材。なのだそう。なるほど…!本枯節のほうはギネスで、「世界一堅い食材」として認定され、数年前にはアメリカでミキサーと10分対抗して買ったこともあるそうです。そんな鰹節・出汁は中原水産さん曰く海外でも話題だそうで、シンガポールはじめ各国でこのようなワークショップやセミナーなどをされていらっしゃるそう。鰹節、グローバルや…!
また、「めぶしとおぶしってオスとメスなの?」という質問には、背中がめぶし(脂が少なくてスッキリ)、お腹がおぶし(脂近いからしっとり)ということで、鰹節になると結局燻製して削るのであんまり関係ないそうです笑
最後に体験したのは「茶節」!鰹節と麦味噌、お湯またはお茶(鹿児島市はお茶派が多い。枕崎はお湯派。)を混ぜて作る鹿児島グルメです。ちなみに「茶」は茶碗の「茶」から来ているそうで、お茶の「茶」じゃないらしいです。昆布が入ってもさらに美味しいそうですよ。鰹節を自分で削り、味噌を入れて、お湯で混ぜる。自分で作る茶節。おいしかったです!
ワークショップ会場奥には物販スペースもあり、オンライン販売や鹿児島市内でも山形屋・中央駅などで販売していますが、せっかくだから今お金を落としたい!とお買い物がっつりしました。笑
奄美のおめでたいお食事をいただく
次に私たちが向かったのは洗心亭。薩英戦争きっかけとなったイギリス人を切ってしまった武士の茶室の一部を移築して建てたところで、その名前の通り「心を洗う」をテーマとしていて、建物の下に川が流れる素敵な料亭へ。
ここでいただいたのは奄美の料理。「健康和楽 花ん華」という入り口の近くの方にあるレストランが、こちらで料理を提供してくださいました。
今回体験したのは「三献」という、奄美でおめでたいことがあるときに食べる3つのお食事。西郷隆盛が奄美で愛加那さんをお嫁さんとして迎えたときに食べた婚礼のお食事としても有名だそうです。優しい味だった!!!
そして3品を楽しんだ後はこれまた最高においしい料理が続きます。おいしくて心も和むので、他のツアー客の方々と感染予防のための透明パネル越しに会話が盛り上がります。私は「移住してきたばかりで」と鉄板ネタで、鹿児島の美味しいお店やおすすめ情報を教えてもらいました。笑
この下にあった揚げたごぼうが美味しくてお向かいさんと3人で感動してました笑
何時間か煮込んだというお肉…美味しかった…
日本食の美を感じます。
奄美大島と言えばの鶏飯も。優しい味で美味しかった…
この後は組紐体験にいくのですが、一気に全員が体験できないので、時間まで洗心亭を満喫する私。
がっつり楽しみます。
この窓の格子は、実際に例の武家のところから持ってきたものだそうです。
掛け軸が綺麗だなーと見ていたら、「あ、それ、大島紬です」とのこと。
よく見てみると…
確かに糸だ!!!大島紬のすばらしさに触れる部屋で感動でした…これだけで、オーダーメイドだと数十万~百万以上かかるとのこと…
ちなみに前撮りで撮られるスポットで写真も撮ってもらいました笑
おめでたいシロサギも見かけることができて大満足です!
組紐体験
組紐体験に向かう途中、鯉に餌をあげて遊びました。こちら、1袋50円。結構お得です。東京だと倍の100円はするぞ…
そして、いよいよ組紐です!映画「君の名は。」でもヒロインがやっていたことで話題になり、そのおかげで奄美の里も体験者が増えるということがあったそうです。
まず、願い事を紙に書き(私は「無病息災」)、4色の糸を選びます。紙を細く丸め、糸を編んでいく途中で中に入れこみます。糸の先についている木の重みで糸は張るので、ゆるみを作らず、自分が順番を間違えなければ(笑)スムーズに出来上がります。
「君の名は。」のヒロインたちのように歌いながらは無理!笑 必死に「次は白、次はピンク…」と脳内でつぶやきながら編んでいきます。でも、途中から単純作業が楽しくなる私。後スタートの私と小学生の2人は、ご年配の方々よりも先に完成(笑)。難しく考えすぎないことが大事かもですね!
小学生さんに選んでもらった、アマビエのカラーで作りました。本人は鬼滅の刃の胡蝶しのぶの着物の色。鬼滅の刃カラーに作るのも楽しそうですね。この中に、細長くねじねじされた願い事の紙が入っています。
これで、3000円。
ということで、本当に貴重な、充実した1日を過ごさせていただきました。鹿児島の魅力を知れて、さらに鹿児島が好きになったし、奄美も好きになったし、大島紬の着物にいつか袖を通したいと夢はせたし…
そして驚いたのが、これが、全部で3000円だったということ。これを実際商品化することに対しての意見をアンケートで回答する必要がありますが、それでも破格すぎる。
途中、洗心亭で、このお食事はいくらぐらいなんですかと主婦の方が聞かれていたのですが、「結構良いお肉等、使わせていただいておりますので…正直、1万円…1万2千円…」とお話しされていたので、要は1万5千円くらいのお食事を食べれたんだと思います。
細かく調べると、奄美の里は入園料と組紐体験で2000円。そこに、今回、団体に対してのツアーもついているうえ、中原水産さんの出張ワークショップもついているわけだから…2万円相当を3000円で?
必死にアンケートで正直な意見を伝えさせていただきました。おそらく鹿児島市の税金でこの事業は行われているはずなので、こんなにも恩恵をいただいてしまった分、奄美の里の存続のため、鹿児島の文化の存続のため、鹿児島の観光業振興のため、できることをやっていきたいと気を引き締めました…
時代に合わせて変化を続けてきた奄美の里、そして、今回の新型コロナウイルスのパンデミックを前に新たな観光の形に挑戦しようとしています。それはここに限らず、鹿児島のあちこちでも、全国どこでもやっているはず。自分にできることで応援をしていきたいですね…!
他にもマイクロツーリズムモニターは以下のリンク先の通り募集しているので、市民の方はぜひ見てみてください!笑
今日はここまでです!