お見通しと充電の日

ボス(俺だけそう呼んでいる)から来月の稽古日程が発表された。口頭で伝えられていた20年前に比べて、即座にスケジュールが把握できてすごく便利だ。

来月は上旬から自分のシーンの稽古がかなり組まれていた。二ヶ月を切り通しも限られているから仕方ないとしても、どうみても未熟な自分の稽古が多い。なんだか定まっていない役作りを見透かされているようだ。全てはお見通しなのだ。心苦しいばかりだ。

主役ではなく、ある意味親のようなまともな意見を主役にぶつける役どころ。自分で飛び込んでおいてなんだけど、上手な人は他にたくさんいるが、年齢的にしっくりくるやつが自分しかいなかったのだと思う。自分には演技力がない事を一番よくわかっているからなかなかツラい。元来、「笑って~!」と言われて自分では笑っているつもりでも、仏頂面に見えるタイプだと昔から知っている。弁明すると、どちらかといえば自主映画畑向きなのだ。(単にチカラがないだけだが)

しかも舞台で主に絡む相手はどなたもとにかく上手い。おじさんからみても、ため息をつくくらいの芸達者達だ。稽古ではその芸達者相手に声量と目ヂカラでなんとかこらえているが、やはり負けているのがなんとなくわかる。せめてアクが強い俳優を何人か頭に思い描いて演じてみようとしたけれど、初めの頃に

「ここは数少ないシリアスな場面なので」

と言われてしまった。舞台で稽古中は演出家が絶対。幕が開けば舞台監督が絶対なのだ。演出舞監さまへの返事は「はい!」しかダメだと個人的に思っている。

おちゃらけな部分を隠して真面目にぶつかるしかない。しかしもともと、不真面目なのでこれがなかなか難しい。

それを全て見透かされているようだ。

とりあえずその稽古を休む事もできないので、その稽古日に子供を預ける予定の母親に声をかけた。少しでも印象を良くして預かってもらおうという魂胆だ。

母親を車に乗せ、子供らとドライブに連れ出した。半日だったが、思いのほか自分自身の充電はできなかった。仕方がないので、とりあえず好きな舞台を映像でみて気持ちを落ち着かせることにした。

つまりは現実逃避だ。あと二ヶ月きってるので頑張ります。


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