最新のまちと昔ながらのまち、どちらが良いのか?
私は、大学で土木工学を専攻し都市計画を授業や実習などで学んできたものの、実戦としては鎌倉市で起こる様々な市民活動への参加などいわゆるソフト面でのまちづくりの参画がメインである。そのため、ハード面でのまちづくり及び他地域での知識というのは、子供の頃8回引っ越した経験以外は欠落している。
今回は最新のまちと昔ながらのまちを比較したい。ちょうど、鎌倉市は昔ながらの住宅地として、そしてお隣藤沢市にはFujisawaサスティナブルスマートタウンという未来の理想の街を考えて作られた街区があり位置関係も人口密度的も似ているため純粋な街の比較ができると考え比較した。なお、鎌倉市側がエリアであるのに対し、藤沢がひとつの街区であるため、スケールの違いによる差異が出るものは比較から除外した。
比較対象
最新のまち=Fujisawaサスティナブルスマートタウン
昔ながらのまち=鎌倉市(切通しの中)
鎌倉市は住みたい街ランキングで常に上位に位置する。一方、藤沢市は住んで良かった街として人気がある。鎌倉市は住んでがっかりと言うことではなく、おそらくイメージ通りだったと言うことだと思うが、藤沢市は居住以前に持っていたイメージ以上の良さがあったのだと思う。今回はそこを検証していきたい。
(大船地区や深沢地区も鎌倉市であるが、藤沢市と地理的にも街の繋がり的にも近いため、今回は比較の対象から除外させていただき、旧鎌と呼ばれる切り通しの中を鎌倉市とさせていただく。)
鎌倉市(切通しの中)
鎌倉市は、毎年2000万人が訪れる首都圏近郊屈指の観光地であり、東京から横須賀線一本1時間以内のため都内通勤可能でダブルで人気の街である。そのため、テレビや雑誌などでのメディア露出が充実しており、居住前から既にお気に入りの場所を挙げられる方が多い。市場ひとつとっても鎌倉市農協連即売所(レンバイ)が観光名所の一つとなり、魅力はかなり伝わっているものと思う。 お店はチェーン店が少なく、古くからの魚屋や八百屋、激安スーパーの他、お洒落な雑貨屋やレストラン、バーなど日常から休日のひとときまであらゆるものが充実している。地元民のみ知る秘密の飲み屋街や誰も観光に来ない素敵な寺社など隠れた魅力はあるが、イメージが劇的に変わることは少ない。また、NPO日本発祥の地で、新旧問わずさまざまな市民が市民活動にて繋がっている街である。
Fujisawaサスティナブルスマートシティ
藤沢市は鎌倉市同様東京から1時間以内で憧れの湘南ライフを象徴する街であるが、湘南のイメージが先行するためか、居住前から藤沢の具体的なイメージ出来る人は鎌倉市ほど多くはない。しかし、駅前は北南口とも大規模商業施設から小さなお店まで立ち並び、少し歩けばオシャレな雑貨屋さんやカフェもちらほらあり、居住の利便性で言うとかなり高いと言える。SFCが構えることからも象徴される通り、教育福祉施設も充実している。
その中にあるFujisawaサスティナブルスマートタウン。太陽光に代表される自然エネルギーを活用しながら生活できるようになっており、街区全体でエネルギーを管理できる仕組みがある。自然エネルギーにより発電した電気は余れば売店することも可能である。電気自動車が充電するためのスタンドもあり、まさにテクノロジーを駆使した街である。
街区は中央の管理棟を中心として円形に構成されており、自転車侵入禁止のフット パスがはりめぐらされている。実際訪れた際も親子がキャッチボールをするなど通過交通をあえて遮ることによる長所が出ていた。通過交通が無いので、家には高い垣根が無く街とのつながりを感じながら生活する。
街区の真ん中にある管理棟には、コミュニティスペースや公園としての機能のほか、災害時に炊き出しができるかまどイスや地下の貯水槽などインフラとしても整備されている。街区内にはTサイトというTSUTAYA系のSCがあるが、ここには理想の生活を叶えるグッズが取り揃えられており、家具家電なども最新の逸品に出会える。鎌倉市民からの印象としては子育てをおしゃれに楽しくするグッズがたくさん取り揃えられており、家族での生活をよく良くしていけるようデザインされた仕組みになった街であることがうかがえる。
叶えたいか、描きたいか
以上の比較の結果、昔ながらのまち鎌倉市(切通しの中)は、海山や寺社仏閣に囲まれ沢山の市民活動で地元と繋がれる、素敵な生活がそこにあり、この生活を手に入れたい方にはこの上ないまちであると言える。対して、最新のまちFujisawaサスティナブルスマートシティは、地球も人間も住み続けられるまちづくりを最新のテクノロジーで実現していくものであり、どのようなまちにしていきたいかを思い描きながら作っていくまちであることがわかった。
昔ながらの住宅地=思い描いた理想の生活
最新の住宅=理想の生活を思い描いてまちをつくっていく
価値観が多様化していく中で、誰かがつけた点数ではもはや良し悪しを判断することはできない。自分にとってどのようなまちが理想なのかを追い求めることによって、素敵な生活を手に入れることが重要であり、今回の比較が少しでも一助になれば幸いである。