毎日エッセイ:日雇いバイトで未知の世界を知った思い出
15歳、高校生上がりたて。当時の僕は中学受験して入った中高一貫の男子校に通っていた。中学時代は、お小遣いを毎月数百円しか貰えず、親から時々渡される学食代を昼飯を抜くことで貯め、欲しい物を買う生活をしていた。そのため、ついに働いて金を稼げる年齢になったということで、ウキウキだった。
ただ、(自称)進学校なので校則でバイトは禁止されていた。そこで、親にも学校にも秘密で、定時で入る必要がなくローリスクで働ける日雇いバイトをすることにした。ただ、日雇いとはいえ、本来ならば高校生がバイトをする際には親からの同意サインが必要である。これは字が綺麗な友達に代筆してもらった。
初めてのバイトは事務所移転だった。同僚は同じぐらいの歳の高校生が2人と19歳の兄ちゃんが2人。みんな大人しめで、あまり会話は無かったが、いい人たちだったのは覚えている。8時間労働のはずが4時間ぐらいで終わり、この労働時間で日当を8000円も貰うことができた。
これに味を占め、次のバイトの予定を入れる。次の仕事は倉庫内作業だった。今度は同僚が1人だけだったのだが、こいつがいかにもな見た目をしたヤンキーだった。
公立の中学を卒業した人々からすれば、恐らくヤンキーというのは身近な存在だったのだろう。しかし、私立中高一貫で、ぬくぬくと生活していた僕からすれば、彼は未知の存在だった。
金髪で背が高く、タバコ臭い。当時から陰キャだった僕はめちゃくちゃビビっていた。下手なこと言ったら絶対殺される。顔を引きつらせながら話を聞くと、高校3生で、偏差値40ぐらいの高校に通っているという。記憶が曖昧だが、女とヤりまくりみたいな話をされたのは覚えている。未知の世界過ぎて、ひたすら恐怖していた。重い箱を大量に運ばされる作業内容も凄くしんどかったため、初回の職場がとても恋しかった。
この体験が怖すぎて、当分日雇いはやらないことにした。しかし、未知の存在に触れられたのは、良い経験だったと思う。
恐らく僕のように、「私立で中高一貫の(自称)進学校に通い、そのままある程度頭の良い人たちが集まる大学に行く人々」は、このような低偏差値のヤンキー達が蔓延る世界を知らないまま、社会に出ることだってあり得る。
僕もそのたった一部に触れただけに過ぎないが、あの時以来、「世の中には自分の偏狭な常識が通用しない人間が多くいる」ということを頭の片隅に置きながら生活するようになった。