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誰かの一瞬に

デパートコスメ。

俗に言うデパコス。

欲多き女の子たちの心を輝かせるワードのひとつ。

ブランドのロゴやカラフルな色、それをまとう自分を想像しただけで胸がドキドキする気持ちは女の子の特権ではないだろうか。

私もその一人。

大好きなモデルさんがInstagramでアップしていて次の給料日に絶対買おうと期待とワクワクを胸にしたためて1か月待っていざ百貨店へ。

スクショしておいたInstagramを画面に品番をチェックしてBAさんに遠慮がちにタッチアップをお願いする。

ライトに照らされた鏡を前にするとなんだか女優にでもなったような特別で、小さな高揚感心の中に充満する感覚が私は大好きだ。

でも、試したコスメの色は私の肌色には見るからにいまいちで、BAさんも苦笑い。この1か月のワクワクが無残にも砕かれたようで何とも言えない失望感に襲われた。

でも欲しい。似合わないとわかっていてもInstagramで見た夢と、この1ヶ月胸に抱いた高揚感が諦められない。女の子はだれでもこんな気持ちになったことはないだろうか。

そんな時、BAさんが私に絶対似合うと言って同じシリーズの違う品番を持ってきてくれた。話を聞いてみるとパーソナルカラーの勉強をしているらしく私の肌や顔の作りに合わせて似合う色を選んでくれた。

私が品定めしている時から似合いそうなコスメを考えてくれていたらしい。

自分では絶対選ばないちょっと女の子過ぎるかなと思ってしまうピンクと赤色が混ざった可愛いキャッチーな色のリップスティックを持ってきてくれた。

「こんなの私に似合うかなかな。。」

と思いながら「まぁ。試す分には無料だし。。」とひと塗りしてもらったら

自分の顔のポイントが強調されて見違えるほどパッと明るくなった。

まさにそれは魔法だった。

加えて似合う服の色や形を教えてくれた。

言わずもがな即買い。

その時に購入したリップは私の中では特別な1本になった。

このリップを重ねるだけでちょっとした自信とあの魔法にかかった時に感じた新しい自分との出会いとときめきと驚きで胸が高鳴り、そのたびにあのBAさんが頭に浮かぶ。

たったリップ1本だけどここまで人の生活や心に残って豊かにしてくれる。

あのBAさんはどこに今どこにいるんだろう。また会えるかな。

そんなこと考えながらたまに休日は百貨店のあのお店を覗くけど。


人生の中であのBAさんとの出会いは一瞬だったけど、私も自分がそうだったように誰かの生活を彩って、誰かの人生の一瞬に残るような仕事がしたいと思う。

そんなこと考えながら私はあの魔法のリップを唇に重ねて今日に歩み寄る。

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