キライになれない

最近、よく考えていることがある。

「自分の商品価値って何だ?」ということだ。

例えばアイドルなら可愛いとか歌が上手いとかダンスが上手いとか、営業マンなら笑顔が爽やかだとか説得力があるとか。そんなとこだろうか。芸能人だけじゃなくサラリーマンだって自営業だって何だって、どんな仕事にも付いて回る課題だと思っている。自分の商品価値とは。

私の強みは何だろう。考えてみると、浮かばない。何を考えても「いや、もっとできる人いるよな?」という言葉ばかりが頭を巡る。でもそんなこといったらオリンピックで金メダル獲った人以外みんなスポーツ苦手になるかっていったらそうじゃないし、三ツ星レストランのシェフ以外は料理が出来るって言えないなんてこともない。

そうこう考えるうちにこんな結論に辿り着いた。

「根拠のない自信を持って自分が一番出来ると思えること」これが個性なのだと。

「〇〇が得意です!」って言ってる人はみんなハッタリなのかっていうとそういうわけじゃない。一部はそうかもしれないけど、それを除けばみんな心からそう思っているのだ。じゃあ私が根拠の無い自信を持って言える得意なことって何だ?と考えたとき、一つだけあった。

ラジオである。

元々私はラジオをあまり聴いていなかった。CDを買ったのが「HUNTER×HUNTERラジオ」、初めて生で聴いたのは「テニスの王子様オンザレディオ」だ。車に乗るときは常に音楽が流れていたからラジオを聴く機会もなかった。そんな私がラジオパーソナリティになったきっかけがある。それは、ラジオパーソナリティのオーディションに落ちたことだった。

元々私は声の仕事をしたかった。当時務めていた会社の業務に身体が追いつかず退職したことをきっかけに声の仕事を本腰入れて目指し始めたわけだが、声優やナレーターになるためには事務所のオーディションに引っかからなければならない。私はその時すでに24歳。「底辺声優の所感」に書かれていて初めて知ったのだが、24歳は夢を諦める年齢らしい。そんな年齢になって私は身の程も知らず夢に挑戦してしまったわけだが……それは置いといて。年齢というディスアドバンテージを抱えた私がどこかに拾ってもらうには、まずキャリアが必要だ。そこで私はとある大手ラジオ局のアニメ、声優系のパーソナリティ募集の記事を見つけたのだった。応募はアマチュアでも可。年齢制限なし。芸歴書とその番組についての愛をA4用紙一枚に記入しろとのこと。なるほどなるほど。となると、まずはその番組を聴いてみないことには始まらない。私は早速サイトのアーカイブを片っ端から試聴した。試聴した……のだが。

何だろう、この違和感は……?

半年分、週5日×4週×6ヶ月で120回分、60時間分の放送を聴いたのだが、いまいちしっくりこない。今まで声優さんのラジオをあまり聴かなかったからなのか、楽しみ方がいまいちわからない。多分、その声優さんのファンの方は大いに楽しめる素晴らしい内容なんだが、いかんせんラジオ初心者の私にはハードルが高すぎた。

私ならもっと初心者向けのラジオを作るかな……

愛を語らねばならない用紙に自分の提案を書いたものだから、当然オーディションは落ちた。ただ、正直めちゃめちゃ悔しかった。だったらやってやる、もっと幅広い世代が楽しめるラジオをいっちょ作ってやろうじゃないか。そう固く誓ったのである。そんな時期に偶然地方ラジオのパーソナリティ募集を見つけたわけだ。多分私のことをご存知の方は、そのラジオのイメージが一番強いと思う。

ラジオで初めて喋ったとき、こんなにもスラスラと言葉が出てくるとは思わなかった。台本も無い。相手の会話に合わせて何かを喋る。どんな曲ならみんな面白がってくれるだろう。来週はこれについて話したい。アイデアが次から次にわいてきた。

なるほど、私の居場所はここかもしれない。

今まで勉強ばかりしていて、本当は専門学校に行きたかったけれど、仕方なく進んだ経済学部。アルバイトで身を立てる自信が無く就活するも失敗し、ようやく拾ってもらったのに体を壊してやめた塾の先生。芸能の分野で役立つような取り柄なんて何も無かった。

だけど、私は物事を調べる力、経済や確率統計の知識、そして子供たちに教えたり保護者の方を説得するのに培ったコミュニケーション能力、そして親が世渡り(上司との付き合い)のために教えてくれた昭和の文化の知識……たくさんのものを持っていた。それが一番活きるのがラジオだったのだ。

大変な思いあがりかもしれないけれど、多分あの地域の魅力を伝えられる方は、なかなかいないんじゃないかと今でも思っている。調子に乗っているのは重々承知しているけど、それくらいの思い込みは自分を売り込む際に必要なのかもしれない。

今、私はラジオを含め、声の表現を仕事にしようと足掻いている。そのためには更に自分の魅力や強みをまた研究し、技術を磨かなければならない。自分自身と改めて向き合うと、まだまだ自分のことを全く知らないのだと驚かされる。でも、一生そうなのかもしれない。歌にもあったけれど、いつでも自分のことが一番見えないものなのだ。

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