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【鑑賞会レポート】客観的事実の昇華

(一社)日本アート教育振興会が展開する「対話型芸術鑑賞」のコーチとして、初めての鑑賞会を行いました。

参加者は、友人が一人。
敢行するか前日まで迷い、「この一歩を踏み出さなければ、先に続かない」と奮い立たせ、精一杯の鑑賞会をやり切りました。

2月8日は、母の誕生日。
メモリアルな日に、最初の一歩を踏み出したことで、だいぶ気持ちが楽になった気がします。


■ ジャック=ルイ・ダヴィッド『ソクラテスの死』

鑑賞した作品は、ダヴィットの『ソクラテスの死』。
ナポレオンの絵を描いたことで有名な画家です。

本作品は、(一社)日本アート教育振興会が認定するアートマインドコーチングBasicコーチが扱える2作品の内の1つ。

コーチング講座中に、幾度となく練習鑑賞した、「安心の一作」だったはずでした。

■ 客観的事実のワナ

組織で働くと、客観的事実に基づいて意見を述べたり、提案することを求められます。

これが染み付いている社会人ほど、芸術鑑賞の場面でも、客観的事実をまず探そうとする…そう感じたセッションでした。

筆者自身がそうだったのです。
そして今回の鑑賞者も、実に正確に精緻に、客観的事実から鑑賞し始めてくれました。

ところがコーチとしては、想定外に「面食らった」のです。

■ 深掘りができない

セッションでは、鑑賞者の主観に対して、「なぜそう感じたのか」を深掘りをします。

根拠を掘り下げ、鑑賞の視点を開拓していくのです。

新しい視座は、鑑賞の幅を広げ、対話が闊達になる好循環を生みます。

ここがコーチの腕の見せ所なのですが、「事実は掘り下げようが無いのでは」と自問自答してしまい、セッション中に筆者の思考が止まりました。

■ 何とか鑑賞会が終了

友人の補助もあって、何とか初セッションを終えた後、興奮と安堵から、しばらく体の震えが止まりませんでした。

珍しく、全身全霊で甘味を欲していたので、自宅近くでケーキを調達。
世界一美味しいと思うケーキ屋さんです。

初鑑賞会のご褒美に、ル・ピノーのケーキ

気持ちも落ち着いてきて、静かに一人反省会。

「事実」から鑑賞し始めるのは、今後も必ず遭遇する場面です。

どんな鑑賞も受け止めたい。
でも、対話が広がらないセッションにはしたくない…

■ 事実を鑑賞した、その視点に注目する

過去に参加した鑑賞会に、ヒントが隠れていないか、探すことにしました。

思い出したのは「みやころすけさんは、●●に注目されたんですね」
という言葉。

これかも知れない、これなら出来るかも。
そう思いました。

鑑賞した客観的事実に着眼点を置いた、その視点に注目する。

例えば、時計、紙、食器など画中に描かれる複数のアイテムのうち、どれか1つを鑑賞したとしたら、
「テーブル上のアイテムに注目したんですね」
と返す。

そうすると、鑑賞の視点が他のアイテムに向かうキッカケが生まれます。

■ 自分らしい鑑賞会を目指す

今回のセッションでは、今まで出会ったことがない鑑賞がたくさん生まれました。
これまで幾度となく鑑賞した作品で、凡その鑑賞パターンをシミュレーションしたにも関わらず。
ヒトの想像力は無限大であることを、まじまじと実感したセッションでした。

自分の好きな芸術作品や、扱いたいテーマ、目的に応じて選ぶ鑑賞作品の組合せは無限大にあります。

それぞれのセッションで、新しい鑑賞に出会えると思うと、胸がワクワクして、早く次を開催したい。
そう思えた、初めての鑑賞会でした。

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