【noteで学ぶ腸内細菌⑩】「痩せ菌」とも呼ばれる人間の腸内にもっとも多く存在するバクテロイデス菌
こんにちは(o・ω・o)虫圭です。
noteを開いてくださってありがとうございます。
腸内細菌⑩です。
今回から「腸内細菌ってどんなのがいて、どんな役割や健康への影響があるの?」という細菌の具体的詳細を学んでいきます。
今回は、人間の腸内でもっとも多いとされるバクテロイデス属の菌についてです。(バクテロイデス以外にも優勢菌はいます)
▪️ざっくり学ぶ【バクテロイデス属】
バクテロイデス属の菌たちのことです。
Wikipediaに記載されているだけでも39種のバクテロイデス菌がおり、未発見のものもまだ多く存在すると考えられています。
基本的には酸素に弱く、酸素下に置かれると死滅します。
人間の口腔内から腸内に渡り存在し、人間の体内に存在する細菌としては最も多いとされる「最優勢細菌」として有名です。
【日和見菌】であり、善性にも悪性にも働くとされていますが、ちゃんとごはん(プレバイオティクス)をあげていれば圧倒的に善性に働くことから、近年は【体内共生菌】とも呼ばれているそうです。
▪️バクテロイデス・フラジリス
菌の特徴
バクテロイデス・フラジリスは、偏性嫌気性グラム陰性棹菌です。
偏性嫌気性菌にとって酸素は致死的要因として作用し、菌種によっては、酸素に暴露されると数分で死滅するものもいますが、この菌は偏性嫌気性菌の中でも比較的酸素耐性があり、数時間、酸素に暴露してもほとんど死滅しないといわれています。また、ヒトの口腔内から腸内までの細菌叢を構成する優勢菌のひとつであり、基本的には病原性は低いですが、体の抵抗力が弱くなったときに病気を惹き起こすこともある細菌です。
嫌気性菌感染症の原因菌
普段は無害であるバクテロイデス フラジリスを含む嫌気性常在菌が、体の中で本来無菌状態であるべき部位(血管や腹腔内)に入り込むことによって感染が成立することを嫌気性菌感染症といいます。重症化すると敗血症や腹膜炎等になることもあります。また、バクテロイデス フラジリスの多くは、β-ラクタマーゼという薬剤耐性に関わる物質を産生することにより、臨床の現場で頻用される抗菌薬のペニシリンなどを不活化させるため、この菌が感染患部から検出された場合は慎重に有効な薬剤を選択する必要があります。
有用な働きも
近年の研究で、有用な働きをするバクテロイデス フラジリスの研究例が報告されています。腸炎発症モデルの無菌ネズミの腸内に、ヘリコバクター ヘパティカスという腸炎原因菌とこのバクテロイデス フラジリスを同時に植え付けると腸炎を発症しなかったそうです。
このバクテロイデス フラジリスはポリサッカライドAという糖質分子を分泌し、この物質が免疫のバランスを正常に保って腸の炎症を抑制している可能性があります。
⇒ヤクルト中央研究所より
▪️バクテロイデス・クラルス
菌の特徴
バクテロイデス属の細菌は、ヒト腸内における最優勢菌群の1つです。2010年、バクテロイデス属の新菌種を3株分離しました。そのうちの1つであるバクテロイデス クラルスは、偏性嫌気性のグラム陰性桿菌で、菌体の大きさは0.5~1.0× 0.7~2.9マイクロメートルです。芽胞を作らず、また運動性を持ちません。グルコースを代謝すると、乳酸、酢酸、コハク酸を作ります。
真珠のように輝くコロニー
細菌を寒天培地で培養すると、コロニーが形成されます。縁にゴツゴツとした凹凸があるコロニーを作る菌種や、表面がつるっとなめらかなコロニーを作る菌種など、コロニーの色や形状は菌種によってさまざまです。バクテロイデス クラルスの場合、コロニーの表面がつるっと滑らかで、真珠のように乳白色に輝いていました。そこで、コロニー形状にちなんで「輝いている」という意味のラテン語からクラルスと命名しました。
余談ですが、希釈した糞便を寒天培地に塗抹して培養すると、白や黄色やピンク、大きなものや小さなもの、表面が滑らかなものや波打ってゴワゴワしたものなど、非常に多様なコロニーが形成されます。これらを眺めていると、腸内細菌叢が多様な植物の群生している様子(フローラ)に例えられていることを実感できます。
⇒ヤクルト中央研究所より
▪️バクテロイデス・オレイシプレヌス
菌の特徴
2010年に分離したバクテロイデス属細菌の1つであるバクテロイデス オレイシプレヌスは、偏性嫌気性のグラム陰性桿菌で、菌体の大きさは1.0~1.9 ×1.4~55マイクロメートルです。芽胞を作らず、また運動性を持ちません。グルコースを代謝すると、酢酸、コハク酸、ギ酸、乳酸を作ります。分子生物学的手法を用いた解析の結果、ラットの糞便中にも恐らく同種の細菌が存在することが示唆されています。
菌体にはオレイン酸が豊富
細菌の細胞膜の主な構成成分は脂肪酸であり、また菌種によって脂肪酸の組成パターンは異なります。つまり、どのような種類の脂肪酸が、どれくらいの割合で菌体内に存在するのかということは、菌種を分類する際に1つの目安となります。バクテロイデス オレイシプレヌスの場合は、バクテロイデス属の他の菌種よりもオレイン酸が多く含まれていました。そこで「オレイン酸が豊富」という意味のラテン語からオレイシプレヌスと命名ました。
⇒ヤクルト中央研究所より
▪️バクテロイデス・フラクサス
菌の特徴
2010年に分離したバクテロイデス属細菌の1つであるバクテロイデス フラクサスは、偏性嫌気性のグラム陰性桿菌です。菌体の大きさは1.0~1.4×1.0~2.5マイクロメートルですが、まれに7.5~52マイクロメートルまで伸長する細胞もあります。芽胞を作らず、また運動性を持ちません。グルコースを代謝すると、コハク酸と酢酸を作ります。
はかない命
細菌を培養する際、培養時間があまりにも長すぎると死んでしまう菌種が存在します。バクテロイデス フラクサスの場合、液体培地や寒天培地に植えてから1日程度で増殖が頭打ちになり、更に1日ほど培養を続けると一気に死滅してしまいます。これほど短時間で死滅する腸内細菌は珍しいため、この菌種を分離した当初、何度も実験中に死滅させてしまい、頭を悩ませられました。
短時間のうちに増殖し、すぐに死滅する性質にちなんで「はかない」という意味のラテン語からフラクサスと命名しました。
⇒ヤクルト中央研究所より
(o・ω・)<本筋とは無関係ですが、名前の付け方に情緒があって、「ああ、人が研究しているんだなぁ」と実感しました。「儚いバクテロイデス菌……」
▪️利己的な優勢菌
この記事では、バクテロイデスなどの日和見菌が、マンナンなどの腸内細菌のごはんを一人占めしていることが紹介されています。
バクテロイデスが腸内優勢菌であることの証左と言える内容です。
また、バクテロイデスなどの日和見菌は腸内の前方に、ビフィズス菌などの善玉菌は腸内の後方(大腸)に多く分布しているという研究もあり、日和見菌がごはん多く食べ増殖するのも頷けます。
▪️「痩せ菌」とも呼ばれるバクテロイデス
バクテロイデスは善玉菌と共生関係にあり、食物繊維などを主食としています。
痩せ型体型の人の腸内細菌を調査した研究では、バクテロイデスが多いとされており、バクテロイデスが「肥満の抑制」に一役買っているとされています。
善玉菌や日和見菌が食物繊維を分解し、発酵させる過程で「短鎖脂肪酸」という酸を出す。短鎖脂肪酸とは、身近でいう酢酸や酪酸のことだ。酸には悪玉菌を抑制する働きもある。
この短鎖脂肪酸を作りやすい代表的な腸内細菌こそ、善玉菌と共生する日和見菌、バクテロイデス門のバクテロイデス属だ。さまざまな研究でやせ型の人に多く検出されており、いわゆる「やせ菌」と呼ばれている。
食物繊維をたくさんとると、食物繊維が大好物である善玉菌と日和見菌が共生して増え、やせ型の腸内細菌叢になる。生成される短鎖脂肪酸も増えるので、やせやすくなる。
「短鎖脂肪酸が腸から吸収されると、脂肪組織がそれを感知し、脂肪を燃やしてくれるといわれています。また、短鎖脂肪酸がたくさん発生すると、小腸から『インクレチン(GLP‐1)』というホルモンが出ます。このホルモンには食欲を落とす効果もあります」(青江教授)
全身の交感神経節にある短鎖脂肪酸のレセプターに短鎖脂肪酸が結合して交感神経節が刺激され、代謝も上がるという。
⇒腸内に「やせ菌」を増やす3つの食べ物はこれだ東洋経済オンラインより
▪️感染症を予防する【バクテロイデスと免疫】
バクテロイデスには免疫力を高める役割もあるとされています。
腸内細菌は食餌成分の違いにより影響を受けますが、Bacteroides属細菌(バクテロイデス菌)はオリゴ糖類をはじめとする難消化糖類を利用して生育出来ます。Bacteroides属細菌が増えたことにより健康を害するようなことがあまり多く認められず、実際にマウスに整腸効果を有するフルクトオリゴ糖を食べさせると、Bacteroides属細菌が増えることが認められます。
ノトバイオートマウスを用いた試験においてBacteroides属細菌は小腸免疫器官であるパイエル板におけるIgA抗体の産生誘導能が、マウスでの優勢菌であるLacobacillus属細菌よりも強いことが認められました。
また、Bacteroides属細菌を投与し定着させることで小腸や盲腸リンパ節の胚中心の形成を誘導するとともに、総IgA産生を増やすことも認められました。
さらに、Bacteroides属細菌の菌体成分によるT細胞の活性化や炎症抑制も認められ、これらを通じて生体の生理機能にも大きな影響を与えていると考えられます。
⇒健康・栄養に関する学術情報
バクテロイデスと免疫より
⇒参考論文細野 朗「バクテロイデスと免疫」
腸内細菌学雑誌 27:203-209, 2013より
Iga抗体とは
外敵の侵入を防ごうと働く粘膜免疫ですが、粘膜面で主体的に活躍している免疫物質があります。それが「IgA抗体(以下、IgA)」です。
抗体とは、侵入してきた病原体にくっついて、これを無力化するように働く免疫物質。タンパク質でできており、免疫グロブリンとも呼ばれます。
IgAは、特定のウイルスや細菌だけに反応するのではなく、さまざまな種類の病原体に反応する(くっつく)という、守備範囲の広さが特徴です。
IgAが低下すると病気にかかりやすくなります。このことは、上気道感染症(風邪)の発症と唾液中のIgA濃度の関係を調べた研究でも確かめられています。
同時に、IgAが低いときは、疲労感も高まっています。
⇒大塚製薬乳酸菌B240研究所
予防の立役者「Iga抗体」より
簡単に言うと、バクテロイデスにフラクトオリゴ糖を与えるとIgA抗体を生成して、感染症などの病気から守ってくれる。
ってこと(o・ω・o)The.有能
▪️バクテロイデスを増やす食品
水溶性食物繊維を多く含む食品
大麦・オート麦
ゴボウ(根菜類)・オクラ
アボカド・キウイ
昆布・わかめ・ひじき(海藻類)
上記に挙げた食品は、食物繊維の中でも【水溶性食物繊維】が豊富で、バクテロイデスなどの日和見菌と善玉菌のごはんになります。
フラクトオリゴ糖(フルクタン)を多く含む食品
タマネギ・チコリ・アーティチョーク
ちなみに、フルクタンの中でも、
短鎖フルクタン⇒フラクトオリゴ糖
長鎖フルクタン⇒イヌリン
と呼ばれ、分類されています。
食物繊維のなかでも研究データが多く、機能の高さに定評がある食物繊維です。
感染症対策としてバクテロイデスにごはんをあげるなら、タマネギなどのフラクトオリゴ糖を意識して栄養を摂ると良いかもしれません。
▪️バクテロイデスによる健康的害
最後に、バクテロイデスによる感染症を紹介します。
嫌気性、胆汁耐性、無芽胞性及びグラム陰性桿菌のバクテロイデス属は、腹腔内敗血症や菌血症など重篤な感染症を引き起こす。
特に腹腔内敗血症はバクテロイデスによる最も一般的な感染症である。バクテロイデス菌血症は一般的に血栓性静脈炎、転移性感染症、高ビリルビン血症によって特徴付けられ、死亡率は高い。
⇒DISEASE: Bacteroides 感染症より
人間と共生関係にあり、感染症予防の免疫力に効果を発揮するバクテロイデスですが、満足にごはんをあげず、腸内環境が荒れると、一気に悪玉菌として働きます。
これが日和見菌と呼ばれる所以です。
かなりの文量で紹介しました(o・ω・o)
バクテロイデスは人間の腸内でもかなりの量存在する細菌ですので、見付かっている種類も多く、データもかなりの量です。
そして有益性もそうですが、腸内フローラが荒れたときのバクテロイデスによる害も解っています。
一長一短であることは問題ですが、害が発生する条件さえ理解していれば身体の強い味方になりますので、バクテロイデスに美味しいごはんを食べさせてあげましょう(o・ω・o)
今回はここまでです。
(*・ω・)ここまで読んでくださって、ありがとうございます♪
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それではまた(o・ω・o)ノシ