デザインシンキングとは?―『デザイン経営』講座
■社内に“自信”を与え、社外に“共感”を生む、デザイン経営
こちらでは、デザインの力を活かして経営や事業の推進力を高めたいリーダーに向けて、TCDが日頃取り組んでいるブランディングのテーマから、旬な内容をピックアップしてお届けします。
今回は、デザイナーだけでなく、ビジネス界でも活用の広がる「デザインシンキング」について見ていきたいと思います。
1. デザインシンキングとは?
2. クリティカルシンキングとデザインシンキング
3. デザインシンキングの効果的な活用方法
上記の流れで、日常的な業務で使える「デザインシンキング」をまとめてみたいと思います。
1. デザインシンキング(デザイン思考)とは?
一般的に「デザインシンキング」への関心が高まったのは、2000年代に入ってからになり、元々デザインシンキングとは、プロダクトデザインにおけるデザイナーの思考プロセス(またはそのデザイン過程)を指す言葉でした。そのデザイナーの思考プロセスをビジネスの現場でも活かそうといった動きが活発になりました。
特に、アメリカのデザインコンサルティング会社であるIDEOの創設者トム・ケリー、後のCEOティム・ブラウンの活動の影響が大きかったと思います。
こちらではアカデミックな説明は省きますが、デザインシンキングの中でも特にデザイナー、非デザイナー関わらず活かせるのは「拡散」と「収束」のプロセスではないかと思います。
2. クリティカルシンキングとデザインシンキング
商品開発やプロモーションプランなど、多くのアイデアを出すシーンがあります。デザインシンキングではこのプロセスで多くのアイデアを「拡散」させ、プロトタイプに「収束」させていきます。
このプロセスは、クリティカルシンキングでいう「MECE」に近い思考プロセスだと思います。
少しMECEについて説明をします。
こちらもアメリカのコンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが開発したフレームワークですが、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略で、日本語では「モレなくダブりなく」と訳されます。
例えば商品開発のシーンでターゲットを選定する場合、〜20歳まで、21〜40歳、41〜60歳、61〜80歳以下、80歳以上と分類すると、モレなくダブりのない一覧が出来あがります。
以下の「日本の人口構成」も、モレなくダブりのない状態ですね。
このように「拡散フェーズ」では、あらゆる可能性を検討していきます。
プロダクトデザインであれば、主にその新商品を使うのはどの世代なのか?またどの世代まで網羅する必要があるか?ここでヌケモレがあるとプロダクトの機能性に問題が出てきます。
こうして、あらゆる可能性を検討しておくことはデザインテーマに限らず、営業活動アイデアやイベント企画を考えるときなど、あらゆるシーンで有効なのではないでしょうか。
ちなみに、マーケティング戦略を考える際には「4P」というフレームワークがあります。Product、Price、Place、Promotionの頭文字ですが、こちらもMECEの一種です。商品開発を考える際「商品」のことばかり考えていたのでは市場における優位性は築けません。
こうしたフレームワークを活用することで、「思いつき」ではなく「ロジカル」にアイデアを創出、またヌケモレなく俯瞰して思考プロセスを「拡散」することが可能になります。
3. デザインシンキングの効果的な活用方法
さて、あらゆる可能性、選択肢が揃えばそれを「収束」させていきます。ここからがデザインシンキングの醍醐味です。
●グルーピング
例えば「営業活動における初面談時に重要な要素は?」といったテーマで様々なアイデアが出されたとしましょう。
そこで「拡散」させたアイデアをまずグルーピングしていきます。50、100とあるアイデアをまとめていくと、多くても10くらいのグループに収束されるのではないでしょうか。「事前準備ファクター」「第一印象ファクター」など、いくつかのグループに分けることができると思います。
ここで重要なのは、どういった共通項を見つけ出してグルーピングしていくか。色や形など物理的な要素で分けていくことはいたって簡単ですが、そうでないことの方が多いでしょう。どういうルールで、どういう意味があってグルーピングしていくか、ここでしっかり「言語化」していくことが必要になります。
これまでデザイナー/非デザイナー混合で様々なワークショップを行ってきましたが、この「言語化」に関して言うとデザイナーが上手ですね。日頃から情報を整理してそれを言葉にする習慣があるからだと思います。逆に言うと非デザイナーの方もそうした習慣を身につけることで、日常的に「デザインシンキング」を活用できるようになると思います。
●マッピング
そうして分類したグループを、次はマッピングしていきます。
「営業活動における初面談時に重要な要素は?」、どのような軸を立てるかで戦略が随分変わります。例えば縦軸を「独自性」とし、上にいくほどオリジナリティ要素が強く下に行くほど一般的な要素とすると、「第一印象」はあまり差のつけにくい部分なので「一般的」寄りにプロットします。
また横軸を「アプローチ方法」とすると、機能訴求で攻めるか、情緒訴求で攻めるか、営業スタイルごとに象限ができあがります。
●フォーカシング
上記のグルーピングがうまく仕分けられない場合は改めて軸の立て方を再検討します。
このように思考プロセスを「言語化」して「視覚化」していくことで、取るべき戦略がクリアになり、またなぜその戦略を選ぶべきか、論理的に道筋を示すことができます。
そしてこのポジショニングマップを俯瞰して眺めながら、市場や競合他社、自社の強みなどをかけ合わせながら、勝ち目のある象限にフォーカスを絞り込んでいきます。
さて、デザインシンキングについて見てきましたが、いかがだったでしょうか?
上記でご説明した「拡散」と「収束」のプロセスは、課題把握、競合分析、アイデア、実装、どのフェーズでも活用することができます。何かしらの「気づき」がございましたらぜひ一度お試しいただければと思います。
クリティカルシンキングとは?―『デザイン経営』講座
(TCD Corporationサイト)