私は、天川太陽が大好きだ
「マンガといえば」で、思い浮かぶものがないという方はいないだろう。
「おらワクワクすっぞ」や「海賊王にオレはなる!」から「バスケがしたいです」などは、いっそ知らないという方のほうが少ない気がする。王道だけでも枚挙に暇がない。とにかく日本は、マンガにあふれている。
そんな中で、もし私が尋ねられたとして挙げるタイトルは少々マイナーだ。
作者の方のアカウントから引用しておいて、失礼なことこの上ないのは承知の上だ。が、残念ながら万人が知る知名度ではないと言わざるを得ない。
とても口惜しい。
読んでいない方には、必ず勧める。
とにかく素晴らしいのだ。
天川太陽は、主人公である。
実に泥臭く生真面目に、理想を追い求める。
業界最大手を向うにまわして奮闘する弱小ゲーム会社の企画チーフである。
件の業界最大手は、彼の古巣でもあるのだ。
設定こそ全く異なるが、これは冒険譚である。
勝てるはずのない巨大な相手に敢然と立ち向かう。
武器らしいものは何もない。
悩み、呻き、吐いてでも理想に向かうことをやめない。
知恵こそあるが、いっそ勇気なら人並みだ。
舞台がゲーム業界というのだけで、間違いなく冒険譚である。
「東京トイボックス」からはじまる物語は、チームとしての奮闘と成長と、主要メンバーとの別れもあり「大東京トイボックス」へと続き、わりと社会問題っぽいところにも切り込みつつ「だってばよ」級の大団円を迎える。
どれと比べても遜色ない冒険譚である。
ライトノベルの流行りほどは異世界に召喚される可能性がない現実を知っていれば、せいぜい異業種くらいのほうが素直に感情移入できる。
苦悩と葛藤の、いつか仕事で感じたことのある胃の痛み。
勝ち目のない競合で足元をすくう快感。
そして、信念。
仕事で新しいプロジェクトに加わることが決まったときや、行き詰ったときなどに必ず読む。
この物語の主人公である天川太陽には「仕様を一部、変更する!」という、とっておきの(わりに乱発される)決めゼリフがある。
私も、よくやる。
残念ながら一部変更されるのは、私自身の仕様であることが多いのだが。
さておき、間違いなく天川太陽の影響である。
このたび前段の通り、デジタルリマスター版が出版されたのだそうだ。
「タブレットで読むのはなぁ」という方は是非とも仕様を一部、変更してみて頂きたい。きっと、いつか必ず出るであろうデジタルリマスター書籍版も欲しくなること請け合いである。
私も自宅に全巻あるが、デジタル版でも購入し始めたところだ。
デジタルで読み返すことは、あるいはないかもしれない。
が、その全巻データが格納されているタブレットは私のお守りになる。
きっと仕事の上で。
タブレットの中とはいえ天川太陽にいられては、逃げだけは打てない。
是非ご一読いただきたい。
赤ジャージの、ブレながらも揺らがない生き様を。