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【模型】地べたを塗る ~マッチボックス 1/72 ミニスケールの付属品~

最近模型の上手な飾りかたについて考えている。
模型単体で机の上に置いておいても、それは単に置いてある模型にすぎないのだけれども、もし模型が「何かの上」に乗っていた場合、途端に何らかの意思を持ってそこに「飾ってある」という見え方が生まれる。
薄板製のディスプレイも結構雰囲気がよく、飾り台の上に乗っているだけで「飾ってある」感がとても上がる。
多分、そういうディスプレイがあるだけで「この中の空間は外とは違って1/72の空間ですよ」という演出効果が働くからではないかと思っている。

もっといいのはダイオラマで、情景模型というやつだ。
こうなると映画のワンシーンを作るようなもので、とたんにその場にストーリーが生まれる。
もっともダイオラマになるとかなりの寸法になるので、デスクの脇にさりげなく飾るというものではなく、それそのものをひとに見せるために専用の場所を設えるというような具合になるため、狭いアパート暮らしでは中々そうもいかないが、これの小さなものならどうか。
ビネットといわれる小さな情景模型だ。
いわば模型を飾るための展示台に風景を切り取って再現するといったもので、手軽な工作でできる上に見栄えも模型単品で飾るよりよほどいい。

そんな情景を再現したベースはやっぱりやろうと思った場合ちょっとハードルが高い。
ところが大昔のマッチボックスのミニスケールのキットにはインジェクション成型でそういった情景ベースを再現したものがおまけで付属していて、モールドは甘いながらもなかなかに雰囲気がよいものだ。
こういうものは塗装次第でどのようにでも化けるもので、初めはちょっとハードルが高いかと思って敬遠していたのだが、いざ塗ってみるとこれが大変楽しい。
細かい塗り分けを筆塗りでやるのかと思うとちょっとげんなりするかもしれないが、塗り分けがはみ出してしまってもウォッシングすればほとんど目立たないし、説明書に色指定がないため好きな色で塗るということはとても自由度が高くて面白い。
今回は、そういうキット付属のお手軽ベースを塗ったお話だ。

以下2008年2月11日のmixi記事より転載、追記を行った

イエスのヤッさんに言わせればこの世は南蛮の神さんが6日でこしらえたとかいうことだがとんでもない、オレの足りてるところをお前の足らんところに足してみようじゃないかということで淡路島を始め八百余州ができたのだという国だってあるんだ。
さて、本日は建国記念日であり実にめでたい。
なんとなれば天祖肇国のころを思いやって、地面をこしらえるのは如何ばかり気持ちいいものであろうかと思わないでもないが、なに地面をこしらえるだけならオランダ人でもできる。
オランダ人どころか佐賀藩にせよ長州藩にせよ、そうやってこしらえた地面は石高に乗らないので額面XX万石、実質XX万石という差益を使って維新回天が実現できたのだ。
ともかくも本日はわが国ができてから2668年になるそうだ。
そういうわけで、せっかくなので地べたをこしらえてみようと思った。
古事記式にやれないのがつらいところである。

先日香港の友人が東莞のわが家に来た際に、一連のプラモを一通り見た上で、ぜひダイオラマにせいとのたまった。
いくらなんでもそこまで本格的にやるつもりはなかったのだが、なるほど机の上や神さん棚の上でタバコの箱サイズの戦車がカブトガニよろしくひしめいているだけではどうにも精彩を欠く。
そこで、マッチボックスのキットには簡易ダイオラマがインジェクション成型で付属しており、こいつを塗装すればとりあえず地べたになることを思い出したのである。

そういうわけで、マッチボックスのキットからダイオラマベースのパーツを切り出してみる。
石畳の上に路面電車の軌道が走っているもので、モールドは甘いがなかなか説得力のある造形だ。
今まではマッチボックスのキットは本体だけ作ってダイオラマベースは捨てていたのだが、塗装しだいでは結構いけるかもしれない。
というわけで、塗ってみた。

マッチボックスのキットはランナーごとに成形色が違うので未塗装でも雰囲気がいい
まずは全体をラッカーのマホガニーで下地塗り
なんだかこういうチョコレートのようだ

つづいて細かいほうの石畳をエナメル6色で塗り分ける。
多少はみ出したり色がかぶってもぜんぜんかまわない。
境目のへこんでいるところはあとでウォッシングするときにどうせみえなくなってしまうのだ。
そういうわけで、ランダムに6色を使って埋める。
なんだか塗り絵をしているような気になる。

鉄道の軌道や倒れた石像などを塗りわけ、軍艦色で塗った石畳には軽くバフでドライブラシをかける。

この後にエナメルでウォッシングをかけるので一旦エナメルの塗装面を固定するためにラッカーのクリアーを吹くが、ここで失敗、一気に吹いてしまったのでエナメルの塗装面がほじくりかえされてしまった。
最初は薄く軽く吹いて乾燥させてから十分に吹くべきであったが、まあリカバリがきく範囲なのでそのまま進める。

クリアーが乾燥したら、今度はフラットブラックをエナメルシンナーでシャブシャブにしたものでウォッシングをかける。
薄めた塗料をへこんだ部分にいきわたらせ、全体の塗装面を落ち着かせるのが目的だが、この時点ではただの汚い真っ黒。

これをただちに拭き取る。
つやありクリアーの上からふき取るので簡単に拭き取れるのがありがたい。
なるほど細かい石畳の塗りわけのはみ出しはほとんど気にならなくなった。

エナメルの乾燥を待ってさらにつや消しのクリアーを吹き、細部のレタッチを行い、クリアーが乾ききる前にタミヤのウェザリングマスターで表面が砂をかぶった表現を行うと、なかなか落ち着いてきた。
乾燥を待って完成。

そういうわけで、ベースに戦車を載せてみる。
うむ、なるほど地べたがあるとなかなか説得力が出てくる。
マッチボックスのキットに付属しているものはほとんどヨーロッパのものなのでドイツのティーガーがよく似合う。
地べたを作るのもなかなか面白いものだ。

なお地べたがなくとも簡易的に何らかの情景を表現することはできる。
これは富士演習場の一コマを想定して撮ったものだが、

実際にはこのように撮っている。
構図を引き算で不要物を切り取るようにすると、単にこれだけでもそれらしい写真は撮れる。

2023年3月13日追記

模型を飾るということについては、ささやかだが私は少し恵まれた環境にいる。
というのは、公民館のような広大な屋敷に住んでいる、というのではなく、本業として木工所を経営しているのだけれども、ディスプレイとなるベースを作るための材料や器材には事欠かないことだ。
それで、これまでプラモデルのコンテストに出品するときは自前の木製ディスプレイに乗せていたのだけれども、どうも作品よりこちらの方が目立っていたような気もする。

フジミの登呂遺跡

さて模型を飾っておく上で悩ましいのが埃の付着だが、これを回避するためのアイディアが降りてきた。
ダイソーなどの100円ショップでプラスチック製のディスプレイケースが売られているのだけれども、あれのカバーを使えばいいではないか。

ダイソーの100円商品のコレクションボックス

この種のディスプレイケースは通常だと1000円くらいだが、100均で100円となるとさすがに恐ろしく安い。
が、ベースが黒成型の薄っぺらいものなので、どうしても安っぽく見える。
ならばこれにぴったりに合わせたベースを木製で作ったらいいではないかと思ったのだ。
なおダイソーの商品は紙巻されていない部分はむき出しなので透明カバーにどうしても傷が入ることがあるが、そんなものは2000番くらいのペーパーをかけタミヤのファインコンパウンドで磨いてしまえば新品以上の透明度になってくれる。
そんなわけで、作ってみたのがこちら。

コレクションケース用木製ベース エボニー
同じく色違いのウッドナチュラル
明るい色のベースは暗い色の模型を引き立たせる効果がある
コンテストに出すときは透明カバーを取ればそのままディスプレイになる
普段飾るときはカバーがあるので繊細なバイク模型でも安心
いろんなサイズのダイソー製品に合わせて作ってみた

ベースを木製にしたことでなかなか雰囲気がいいが、はてこういうものは市場ではいくらなんだろうと思って調べてみたところ、なんと市販品でこういうものはないことが分かった。
そうか、ではうちが世の中に供給しようではないかと思って急遽製品化を決定、定番製品として扱うことにした。
お値段はダイソーの100円商品用のもの(2種あり)が1000円、大きな300円商品用のものを2000円とした。
見方によっては「こんな端材みたいなものを削って磨いてオイルフィニッシュしただけの板きれを1000円で売るとは何事か」とも思われるかもしれないが、ダイソーの透明カバーと併せて1100円で木製のディスプレイケースが手に入ると考えると、逆に安いような気もしてくる。
こいつはそのままディスプレイケースとして使ってもいいし、この上に情景を盛り付けてビネットにしてもいい。
飾り方次第で模型はどのようにでも魅力的になれるものだと思う。


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