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【模型】中国の中国製はすごく安かった ~マッチボックス 1/76 モントゴメリーのキャラバン~

2023年現在の感覚だと、中国製品が身の回りにあることは空気のように当たり前で、安いもののみならず高いものでも大体製造元は中国製だったりするものだ。
特に品質が悪いというようなイメージを持つこともなく、かつての台湾製や香港製がそうであったように、かつては安物の代名詞だったものがいつの間にかそうではなくなり、気が付いたら普通に当たり前の存在になっている。
かつては安かろう悪かろう、安心できない、インチキくさいというようなイメージを持たれることもあったが、さて中国製ということについてちょっと語ってみたい。

ひとくくりにMADE IN CHINAといってもいろんな分け方ができるのだが、まずは海外に輸出して外貨を稼ぐものか、それとも中国国内市場向けなのかで話は大きく変わるのである。

貿易で輸出する製品は基本的に仕向け先の仕様でOEM生産されることから、基本的にはその国の言語でローカライズされ、品質基準も仕向け地の法規や商習慣などが反映される。
例えばIKEAの雑貨は世界中で同じものが販売されているが、結構大部分が中国製だ。
IKEAは原産国をしっかり店頭でも表示しているのですぐわかるのだけれども、私がよくIKEAで買い物をしていた2008年当時にしてもIKEAは中国製であることをマイナスイメージとは特にとらえていないことが印象的だった。
というのは店の壁にSweden Design, Sweden Qualityと誇らしげに書いてあり、スウェーデンの品質基準に準じているのでこれはりっぱなスウェーデン製品ですよということだ。
当時私は商社マンとして中国に駐在し品質管理等を担当していたのだけれども、会社としてこういうことを堂々と言えるのがとてもかっこいいと思ったものだ。
日本向けの中国製品の作り方は大きく分けて二通りあって、日系企業が自社工場で自分で作る場合と、現地のよさそうな商品を見繕ってOEM発注する場合に分けられる。
前者の場合は日系の会社が本国と同じような設備と管理手法で作るので、出来上がる品物は基本的に本国と同じ、単にそれをオペレートしたのが日本人なのか中国人なのかという違いに過ぎない。
後者の場合は発注元が工場に対してさまざまな連絡交渉を行い、中国のローカル商品を日本で通用する日本商品に仕立て直すことが行われる。
工場視察を行って工程改善を量産前に要請することもあれば、製造過程で品質確認のためにかつての私のような品質マンがやってきて大暴れすることもある。
最終的には第三者検品機関を経由して合格したものが日本向けに出荷されるという流れでやってくるので、そもそもが中国国内向けの製品の作り方とは根本的に違うのだ。

ひるがえって中国国内向けの製品とはどんなものか。
中国のローカル市場といっても最近はGDPの増加に伴い生活水準も大きく向上したようで、世間一般の国とさほど変わらなくなってきたが、かつて中国はラーメン一杯2元(30円くらい)という時代が存在し、年収が1万元(15万円くらいか)を超える農家は「万元戸」といって羨望の対象だった時代がわりと最近まであった国だ。
日本でいう高度経済成長が1990年代から2000年代にやってきたようなもので、貧乏だったころの中国の記憶を持った世代は今でもまだなんとか現役だ。
なので、ローカル向けとなるとそんな時代を反映した「おおらかさ」が炸裂するようなことが多かったもので、換言するなら「何が起きても不思議じゃない」世界がかつては広がっていた。
中国は歴史的にだまし合いで商売をやっていたこともあり、嘘インチキ紛らわしいといったことはまるで珍しくなかった。
自分が損をしないためには自分が賢くなる必要があり、またもめ事で負けないためには自分が強くなる必要があるのだけれども、おかげで外国人の私もずいぶん強くなったものだが、つまりはそういう世界で流通しているのが中国向けの中国製品ということだ。

そんなわけなので中国向けの中国製品は値段は安いのだけれども、代わりに「何があっても知らんぞ」というリスクのおまけつきなのを知らずに外国の貿易会社などが不用意に「これ安いなあ、日本で売ればもうかるなあ」と仕入れてしまったら、いろんなひとびとが大変な目に遭うのである。
まず製造元が日本向けの出荷実績を持っていなかったら大変だ。
製造が始まる前に品質にかかわる話をしっかり行わなければならないのだが、こういうものは不良品とみなすということを事細かにしっかり伝えておかなければならない。
もし相手が日本人なんていう世界で一番めんどくさい客を相手にしたことがないなら、知らなかったことで後でもめるのは相手にとっても災難だ。
大体が日本から注文をもらったというと、「品質が日本でも通用する」とか「工場のレベルアップにつながる」というイメージで喜ぶ中国メーカーがかつては多かったが、2000年代に入ると次第にそうではなくなり、「日本以外の国でならどこにでも通用するものが不良品扱いされる」という理不尽に直面することで工場のラオバン(中国語で経営者のおやじといった意味)は厳然たる事実に気が付くのである。
日本からの仕事はえらく細かくやり取りが必要なので、業務量が他の国向けのオーダーの10倍くらいかさむ。
また仕様の決定権がない奴が日本側の担当者だったりするので仕様の決定が恐ろしく遅く、かといって最終的な納期は動かない。
品質についてはパッケージはおろか出荷用段ボールのへこみにまで文句を言われる始末で、肝心の製品検品と手直し対応が泥沼のベトナム戦争みたいになる。

そんなめんどくさい日本向けオーダーは、細かい、めんどくさい、量が少ないの三拍子そろったものなので、アメリカ向けのオーダーに比べるとまるでもうからないどころかリスクばかりあって、ローカルのメーカーからしたらとても歓迎されるものではないのである。
ひるがえって受け入れる日本側にしたところで、往々にして全数開梱検査の上良品と不良品を選別するというバカみたいに無駄な作業が展開される。
この作業を「検品」と呼んでいる会社もいるが、こんなものは検品ではなく「選別という作業」だ。
抜き取り検査で信用できないような作り方をしている製品をなぜ買うのだということ自体が問われるべきで、60円で仕入れた製品を100円で売るならともかく、2円で仕入れた製品を100円で売るようなマネをするからこういうことになるのだ。
かくて日本の貿易会社の倉庫には全数選別ではねられた不良品の山ができ、かつ「これはXXXには出せるけどYYYには出せないな」とか「これは廃棄しかないが部品は使えるから捨てられない」などと、さまざまな等級に分けられた不良品でスペースが埋め尽くされるのである。
こうして多くの人を不幸にしつつ「よいものだけが」日本市場に並ぶという(ことになっている)のが日本向けの中国製品だ。

そんなわけで、今回は「中国で売っている中国製品」のお話だ。
今から15年前の話なので、値段等も含めてなんだか昔話のような感じがする。

※以下は2007年12月20日のmixi記事より転載加筆を行ったもの
 文中に出てくる1元はおおむね16円くらい

現在中国はよくも悪くも世界の工場であり、その圧倒的な製造コストの安さで世界を席巻しているのは紛れもない事実だ。
その安さの一番の理由は低賃金出稼ぎワーカーの奴隷労働によるものだが、どうもそれだけではないようだ。
安価な一次材料が豊富に得られることや、工場設立のイニシャルコストが安価であること(もっともカントリーリスクまで含めた場合果たして安価であるかどうかは疑問)も挙げられよう。
ともかく中国は安物を作らせたら世界一なのであり、その背景のひとつである「工具類」の安さについて、今回思い知らされた次第である。

さて、今オフの時間はもっぱら模型を作っているが、だんだんワザが身についてくるにしたがって道具がどんどん増えてくる。
始めは広州方面に出張するたびにチマチマと模型店で揃えていたのだが、ただでさえ高い模型用の工具を海のこちら側で貿易マージンを含んだ値段で揃えていたのでは破産してしまう。
よく考えたら私の駐在している常平鎮は典型的な工場街であり、毎日の通勤路に並んでいる工具屋街には紙ヤスリからマシニングセンタ用コレットチャックまでなんでも揃うではないか。
ヨシと思い、仕事の帰りに工具屋を何軒かハシゴをしてきた。

まず紙ヤスリである。
1軒目の店で2000番はないかと聞くと、1500番ならあるという
模型用にしてはちと粗いが、よかろう。
ばら売りでやや高くついたが1元だ。

それから店のおやじにAB膠(2液混合エポキシ接着剤)はないかと聞くと、あるという。
エポキシ接着剤は汎用性が高くいろんなものの修理にも使えるので重宝しているが、なにせ毎回A液とB液を何かの上に出してよく混ぜて使うので、容器にへばりつく分や作り過ぎた分などで結構ロスが出てしまう。
そういうわけで、割りとなくなるのが早いのがエポキシ接着剤なのである。
「大きいのと小さいのがあるがどっちにする?」
なに、大きいのがあるのか、それはありがたい。
大きい奴を見せてくれというと、練歯磨きのチューブくらいある巨大なのが2本入ったパッケージを持ってきた。
なるほどこれだけあれば生涯エポキシ接着剤には不自由しないであろう。
いくらかねと尋ねるとなんと11元とのこと、これ日本で買ったらいったいいくらにつくのだろうと思いながら合計12元を払った。

それからヤスリが必要だ。
先日ちょっとした工作をやった時に生乾きのパテを削ったせいで、タミヤのマークが入ったブランド品の3本組ヤスリはどれもすっかり目詰まりしてしまっており、うち1本はあろうことかヤスリ面に瞬間接着剤をこぼしてしまったので完全にダメになってしまっていた。
そういうわけでヤスリを置いていそうな店で見当をつけ、6本組になった奴が壁に吊ってあるので見せてもらった。
よく見るとこれはダイヤモンドヤスリなので金属加工には便利だが模型を作るには破壊力が大きすぎる。
一応値段を聞いたところ、6本組で12元だというではないか。
内地ではその値段では1本も買えないであろう。
そうではなくて普通のはないのかと聞くと、あると言って10本組ものおおげさなセットを引っ張り出してきた。
もともとヤスリは平と丸の2本さえあればコトは足りると思っていたのでこんなにぎやかなヤスリ一族を迎え入れた日には机の上の工具立てが完全にヤスリに占領されてしまうではないか。
ばら売りはしないのかと聞くと、しないのだそうで、ならば10本セットでいくらなんだと聞くと、なんと12元だというではないか。
すると1本1元ちょいか?
ヤスリ自体は私がこれまで使っていたタミヤの星マーク入りのものよりも数段上等で、これでできない加工はあるまいと言わんばかりのさまざまな形状が揃っており、焼きがよく入った黒光りするヤスリ面は「いかにもワタシ硬いですよウヒヒ」という迫力に満ちている。
そういうわけで、ヤスリ10本組を12元で買った。
これから必殺のヤスリワークが楽しみだ。

最後に瞬間接着剤を買う。
これは買うのを忘れていたのを後で思い出してコンビニで買った。
こちらのコンビニにも若干の生活雑貨コーナーがあり、瞬間接着剤もそこにあった。
厚紙にミシン線が入っていてほしい分だけパッケージを切り分けるタイプの包装なので、二つを切り取る。
チンケなローカルコンビニなので陳列棚にいちいち値段が出ていないが、どうせたいしたことなかろうと思ってそのままレジに持って行く。
「3元ですね」
なんだと?一つが3元なのか、それともふたつで3元なのか?
聞くと、ふたつで3元だという。
するとひとつがたったの1.5元か。
まったく安いにもほどがある。

そういうわけで、結構買い込んだ割りには使ったカネは27元(約430円)、恐るべき安さだ。
付加価値の高いものを作ることが日本の産業の生命線だというが、逆に考えれば付加価値の低いものを作らせたら大陸にかなうわけがない。
なるほど日本の産業が片っ端からオーダーを大陸に取られるわけである。


さて、模型だが最近は大陸のパチモンキットなどたちの悪いものを作っていたせいか、ちょっと箸休めに気楽に作れるものに手を出したくなった。
そんな折に広州のプラモ屋街を捜索していると、レベルの1/76の品揃えがやたらによい店を見つけた。
ほほう、これが噂の元マッチボックスの金型をレベルが買ったって奴か。
30年近く前のキットにしては40元という値段はなかなか強気であるな。
そうこうしてさらにチンケなプラモ屋を冷やかすと、なんと元のマッチボックスのキットがあるではないか。
しかも大陸で成形しているので値段が恐ろしく安く16元(256円)というびっくりにもほどがある値段だ。

上海製のマッチボックスのキット

それはよい、すばらしいとばかりに以前の私であればカネにモノを言わせて赤毛沢東(100元札)1枚分買って帰るところなのだが、大陸パチモンキットでシゴき上げられた今の私はそうではない。
なにせパッケージも説明書もフルにパクりまくったタミヤのWLが8元で売られている土地である。
マッチボックスといえどパチモンではないといえる確証などなく、大量に買い込んでは永久死蔵コーナー行きにしてしまうのではかなわない。
そういうわけで最初は1個を試験購入してみて慎重に進めることにした。

パッケージの印刷はなんだか写真複写みたいでボヤけているあたり実にパチモンくさいのだがキットはしっかりしていた。
マッチボックスの成形材料はやわらかいとは聞いていたが、なるほどやわらかくデザインナイフ一本でパーツの切り出しができる。
これはラクチンで、まるでビッグワンガムを作っているような気分になる。
ヤスリがけでバリが粘ってなかなか取れないのにはちょっと往生したが、細いパーツをカンナがけしていて折れにくいというのはいいことだ。
ちょっと癖になる切り出し感であった。

面倒なことが嫌いなんで(だから面倒なことをたくさんさせる中華パチモンキットは大嫌いだ)基本的に素組みで進める。
トラックはなんでも英第8軍のモントゴメリー将軍がアフリカで鹵獲したイタリーのトラックを気に入って自前の指揮車にしたということらしい。
そういえば、エンジンがキャビンの中にあるところまでは英軍のマタドール軍用トラックと同じだがフロントグリルの形がちょっと違う。
古いキットの割にはなかなかパーツの合いがよく、見る見るかたちになるのでおもしろい。
塗装だが、このタイプのトラックといえば昔見たルパン3世の映画で埼玉県警の機動隊がこいつに乗っていたのが妙に印象に残っていたのでクレオスの軍艦色2で仕上げることにした(英軍の色指定がよく分からないというのが真相)。
もっともデカールを貼らないとなんだか物足りないので英第8軍のデカールをそのまま貼った。
考証もへったくれもないのだが、雰囲気は悪くない。

ダイムラーMkⅡ偵察車のほうはパネルの合いが今ひとつで苦労した。
1/76なのでとにかく小さく、多分故ジャイアント馬場(実物を福井で見たことがある)の親指の先のほうがはるかに大きいだろう。
塗装は同じく軍艦色2で仕上げたが、香港海防博物館で見たフェレット偵察車のイメージでグレーの2色迷彩にしてみた。
キットについていたブレン軽機はディティールがお粗末な上に脚がたたんである状態で、説明書ではこれを適当に乗せろとあるがどうにも格好が悪い。
従って2脚と銃身を切り取ってプラ板に0.6㎜プラ棒と伸ばしランナーのテーパーがかった部分で自作した。
弾倉が短いのがまだ気になるが、大体ブレン軽機の雰囲気は出たようだ。
塗装は面倒なのでガンメタル1色とする。
ともかく1/76のミニスケールになるとヘタにウェザリングをすると却ってウソくさくなるので、博物館モデルのように精密かつ大胆な省略を行うのも正解かもしれないと思い(ヘタクソの言い訳)、今回の場合基本塗装を行ってからスミ入れを行う程度にとどめておいた。

そういうわけで、足掛け2日で急造したキットだが、マッチボックスはカッチリした組みあがりがなかなか楽しいキットだった。
そういうわけで、次は何を仕入れてこようか。

大味で昔のビッグワンガムのようなディテールだが雰囲気は悪くない

2023年3月10日追記

えらく円安が進んだ現在、安い中国製の時代が遠い昔の話のように感じられるのだけれど、昔は確かに安かった。
というと今が残念なように思えるかもしれないが、安いことは必ずしも正義ではない。
今私は起業して曲がりなりにも個人事業主という経営者になったので、安いということが示す恐ろしさを知るようになった。
値段には適正な額というものがあるもので、無理をして安くした商品は、それにかかわる多くの人を不幸にする。
従業員の給料が安いのも単価がが安いからであるならば、品質が安っぽいのも仕入れコストが安いからだ。
そういうものに100%の品質など期待するべきではなく、売るほうも「これは30点の製品ですので安い値段をつけていますから品質は覚悟してください」という風にふんぞり返っていればよいと思う。
少なくとも中国はそういうことで成り立っていて、それはそれで個人がしっかりすればいいだけの話だ。

ここで登場した謎のマッチボックスのキット、これはイギリスの老舗模型メーカーなのだけれど、ここが昔出していたミニスケールの金型が中国に流れてきていて、なぜか上海製マッチボックスのキットというのが広州のプラモ屋でえらく安く投げ売りになっていた。
多分正規製品ではあるのだろう、ただし16元という値段は当時としても常軌を逸している。
このキットはやがて広州の模型屋から姿を消してしまったのだが、別の店でドイツレベルから発売されている似たようなキットを買って開けたらずばり同じものだった。
多分金型がレベルに譲渡されてレベル製品になったということだろう。
海外からの輸入品になってパッケージも変わり40元という値段で堂々と売られていたが、本来はこれが適正価格なんだろう。
個人的にはマッチボックスのキットは接着剤が使えるビッグワンガムみたいで作るのが楽しくて好きだった。
ランナーも3色くらいに分かれているほか、「地べた」が付いているのもマッチボックスのミニスケールの特徴で、今でもたまに作ってみたくなる。
しまった中国時代広州でもっと買い込んでおけばよかったと思わんでもないが、未来の需要が読めるなら私も木工屋をやらずにもっと儲かる仕事をしているに違いない。


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