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【模型】アメリカの航空母艦はでかい ~トランぺッター 1/700 アブラハム・リンカーン~
前の記事で大型船を扱ったので、その後に作った同スケールの航空母艦の記事もアップしてみたくなった。
以下は中国時代の2014年12月4日にMIXIでアップした記事で今から9年前のものになるのだけれども、このキットを作ったのは当時勤めていた会社が総経理逃走により空中分解しどえらい目に遭った末に無職だったころで、前のコンテナ船を進呈した物流会社の社長さんより依頼を受けて製作したもの。
報酬が2000元くらいだったか、ありがたいことだ。
※以下2014年の記事の転載
何年か前のことだが、アメリカの航空母艦が香港に寄港したことがあって、一度見に行ったことがあった。
さすがに10万トンものフネなのでKowloonのフェリーターミナルに横付けするというわけにはいかないらしく、青衣島の先に沖止めしてあったものを馬湾から上環へ連絡するフェリーの窓越しに見たのだが、圧倒的な存在感だったことを覚えている。
視界に入ってからすれ違うまで数分程度しかなかったのだが、10万トン級のフネというものは乗り物とは思えないくらい巨大で、付近にいる一般の船舶とはまるでスケールが違う。
そういえば10万トンクラスの船といえば以前Hapag-Lloydのコンテナ船Colombo Expressを作ったことがあったが、あの船はたった24人で運用されているのに対し、アメリカの原子力航空母艦は3200人もの人間が乗っており、ひどく少なかったりひどく多かったりで両者とも極端だが、その3200人のうち大多数は入隊後2-3年の水兵だというから、民間企業でいえば3000人クラスの工場が入社2-3年の人間によって運営されているようなもので、軍隊の教育システムと人事管理は大したものだ。
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乾舷がひどく高く、普通のフネとはスケール感が違う
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船体のかなりの部分が格納庫で、内部には巨大な空間があることがわかる
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さて、この空母を作る機会がやってきた。
半年ほど前のことだが、前述のコンテナ船を奥様の会社の社長室に展示してもらうことになった。
奥様の会社は物流関係で、オフィスにコンテナ船の模型などがあるとサマになるのだが買うとずいぶん高いらしく、私の作品は大変喜ばれたようだ。
よその支社から出張された方に「これって年間何本くらいコンテナ使ったら船会社からもらえるんですか?」などと聞かれることがあったそうで、おどけた社長さんは「そうですね、XXXX本くらいかなあ」などと適当なことを答えていたんだそうだ。
そのうち別の支社から発注が来るといいななどと思っていたら、ちょっと前に意外な注文がやってきた。
なんでも航空母艦を作ってほしいとのこと、大きなフネに飛行機がずらっと並んでいるのを見てみたいという注文だ。
特に艦種にこだわりはないらしく、それでは見かけがハデなアメリカのニミッツ級原子力空母にしてやろう。
これなら私も一度香港で見たし、それなりに思い入れもないわけではない。
そういうことでキットを入手したのが9月、途中さぼりながらぼちぼちと進めていたのがようやく完成した次第だ。
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なんでもトランぺッターのニミッツ級空母のキットは日本のピットロードが監修しているのでかなり出来はいいらしい。
なおニミッツ級といってもフネによって微妙に違いがあるのでそのあたりのバージョン展開にも対応しているらしく、不要パーツが結構あった。
さて、かなり大きなキットで部品点数も多い上に艦船模型であることから塗っては組んでの繰り返しになるのでダンドリが重要だ。
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まずは黒サフで下地
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飛行甲板はタイヤブラックを明るめに調色したもので塗装、繋止孔はニュートラルグレーを流し込んでおく。
なおこのキットは格納庫もかなり再現されているのだが、カットモデルにでもしない限りまず見えないので床面の塗装だけであとは省略することにする。
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船体も黒サフで下地。
トランぺッターの艦船モデルは喫水線の合わせ目がなかなかうまく合わないので、このあたりの整形にわりと手間がかかるのが難点だ。
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飛行甲板のラインは塗装にしようか迷ったのだが、とりあえずキット付属のデカールを使ってみた。
ただまっすぐ張るのが難しく、よく見ると歪曲してしまっている部分もあるので、面倒でもマスキングで塗装したほうが無難だったかもしれない。
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甲板をマスキングしてキャットウォークを軍艦色1で塗装する
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船体も同様に軍艦色1でグラデーション塗装しウォッシングをかけた後、喫水線以下を艦底色で塗装する。
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艦橋の窓はクリアパーツが用意されているので、チマチマとマスキングテープのコマ切れを張り付ける
なお、あっさり仕上げる方針だったが艦橋の屋上とマストの一部に汎用エッチングパーツの手すりを使ってみることにする
中間の写真がごっそりないのだが、正直言って艦載機が難物だった。
最近のキットらしくクリアパーツで成形されているのでキャノピーが透明にできるのがありがたいのだが、なにせ透明なのでパーツの成型がやりづらく、パーティングラインがほとんど見えないのには往生した。
今にして思えばキャノピーだけ適当にマスキングゾルで保護しておいて軽く黒サフを先に吹けばよかったのかもしれない。
それにしても最近の1:700の航空機はパーツ点数がものすごく、F/A-18などは本体・尾翼2枚・増槽2個・ノーズギア・メインギアの7パーツで構成されていて、特に斜めに角度をつけて接着する尾翼には往生した。
塗装の手順としては、
1)キャノピーのマスキング
2)エアクラフトグレーで塗装
3)ランディングギアをアクリルガッシュの白で筆塗り
4)動翼およびレドームをニュートラルグレーで筆塗り
5)タイヤをラバーブラックで筆塗り
6)ノズルをチタンシルバーで筆塗り
7)デカール貼
8)半ツヤのクリアコート
となる。
ただ、F/A-18のように大きなバブルキャノピーならマスキングもやりやすいがC-2やSH-60のような小さなコックピット窓をきっちりマスキングするのは私の手には負えなかったので、これらは透明とせず後でロイヤルブルーの明度を下げたもので筆塗りした。
そうやっていろいろゴチャゴチャやっていたが、艦載機が本日すべて完了したので晴れて完成となった。
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私が実物を見たのと似たようなアングルだ。
キットの艦載機はランディングギアもちゃんと再現されているのでこういうアングルで見てもなかなかサマになる。
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このアングルが個人的に一番気に入っている。
なお、撮影に使ったスタンドは別のキットのもの。
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実物を見るように喫水線から見上げるアングルは迫力がある。
なお、スクリューのシャフトはブラケットと一体成型だったが一部変形していたので0・8ミリ真鍮棒に置き換えた。
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この辺りはもう少し頑張って手すりを取り付けたほうがもっと見栄えがしただろう。
実物ではこのへんのゴチャゴチャ感のインパクトが大きかった。
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飛行甲板にF/A-18の尾翼がごちゃごちゃ見えるのは楽しい。
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空母は甲板に飛行機をゴチャゴチャ並べてナンボだ。
このキットには18機くらいが付属していたが、かなりを作業ミスで失ってしまったのでちとさみしい。
香港の模型屋で1:700の現用航空機をだいぶ探し回ったのだが見つからず、ちょっと遺憾だがこれで仕上げることにした。
まあ、今回だいぶノウハウがわかってきたので次に生かそう。
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E/A-6のみ主翼を折りたたんでみた。
本来であれば発艦直前以外の飛行機は主翼を折りたたんでいるのが本当なのだが、そうするとただでさえ数が減ってしまった飛行機のカサがさらに少なくなって甲板がスカスカになってしまうので、模型映えを重視して敢えて翼は展開状態とした。
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黄色い作業車両もちゃんと付属しているのがうれしい。
ただ大型クレーンのトラスはパーツでは一体のムクみたいになっていたので、これはプラ棒で作り直した。
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本当ならば離陸状態であればアンテナは倒しておくべきなのだろうが、クリアケースの幅の制約があって、立てた状態とした。
ならばジェット噴流よけの壁が立っているのはおかしいのだが、模型映えすることはとりあえずやっておきたいというのがモデラーの悲しい業(ごう)だ。
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この艦橋とマストが実によくできている。
最近のトランぺッターのキットはあなどれない。
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こうしてみると、マストにもテキトウでいいから手すりを付けるべきだった。
密度感がぜんぜん違ったはずだ。
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昔見たように、格納庫から向こうが見えているようにした。
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これを今週末奥様の会社の社長室に納品するのが楽しみだ。
それにしても艦上にごちゃごちゃと何かが並んだものを作るのはなかなか楽しい。
そのうち空母ミンスクでも作るか。
あれなら近所に浮かんでいるのでいつでも実物を見に行ける。
(註:当時中国の深圳の塩田には明思克公園といって、旧ソ連海軍太平洋艦隊の旗艦だった空母ミンスクが係留してある一種の軍事アミューズメントパークがあった)
いや、ゴチャゴチャ乗せるのなら強襲揚陸艦も悪くない。
あれもたまに香港に来るので参考資料には事欠かない。
うーむ、作りたいものが増えるのは難儀なことだ。
2023年2月26日追記
依頼を受けないとここまで大きい模型はなかなか作らないのだけれども、フネ自体は結構単純な一方で艦載機がとにかく手間がかかったことを覚えている。
そういうものをごちゃごちゃと甲板に並べるのが楽しいのだけれども、これは前作のコンテナ船にも通じるようだ。
ところでこれ大きい船のはずなのだけれども10万トン越えのコンテナ船を作った後だとなんだか拍子抜けするくらい小さかったことを覚えている。
いや空母が小さいんじゃなくてコンテナ船がでかすぎるのだ。