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緑の魔女を使ってみる

「緑」という色が持つイメージについて考えてみると、「飲み過ぎて顔がミドリ色になる」というものを除いては、概ね肯定的なイメージで使われることが多いような気がする。
信号機の緑はだいたい世界共通で「進め」の意味で、計器盤のパイロットランプも緑色は「正常」を示すようになっている。
ために航空機の点検で問題ないことをall greenと唱和するようで、正常で注意喚起の必要がないということだろう。
映画「フィフス・エレメント」では未来の口語表現ということでAre you Okay?の意味のことをGreen?と言っていたのがおかしかった。
このように緑色とは「正しい」「間違いがない」という意味合いで使われるようである。
そういえば戦後西ドイツの警察はナチスドイツ時代の極端な反省からプロイセン時代からの伝統のかっこいい制服を廃止してどうも意図的にかっこわるい制服にしたのだけれども、特に色がやたらに野暮ったい緑色、それも国防色のような渋い色合いなどではなくトノサマガエルのようなみっともない原色を採用したのも、ナチスと違って今の我々は正しいんだということをアピールするためなのかもしれない。

ちょっと前までのドイツ連邦警察

緑色がよいイメージで使われるのはなんといっても環境に関する事柄だろう。
Green Peaceという団体があるくらいだし、中国でも環境にやさしい製品は「緑色XX」というように表現される。
そういう背景があって、「緑の魔女」という名称も、ロシア文学に出てくる魔女のばあさんみたいな凶悪なものではなくて、どうやら「いい魔女」なんだろうなというような予測が成り立つのである。
これが赤い魔女だったら東京オリンピックのソ連の女子バレーボール選手団みたいだし、紫の魔女だったらなんだか暴走族上がりのような感じがするが、緑だから少なくとも悪者ではなさそうだ。

洗濯洗剤「緑の魔女」

この「緑の魔女」という洗剤はドイツのもので、製造は日本で行なっているようだけれどもドイツ製品というだけで私にとってはなんとなく霊験あらたかなものを感じる。
どうも私はドイツ製品を過剰にありがたがる癖があって、ヤワでしゃらくさい日本製品が嫌いな反動でDeutcheland, Deutcheland Uber alles in der welt!(世界に冠たるドイツ)というドイツ連邦共和国国歌1番のサビを歌い出してしまうくらいなので、もしかすると私はどうかしているのかもしれない。

さて、世の中には比較文化という面白い分野があって、同一のフォーマットのものから民族性を見出すという楽しい学問だ。
昔妹尾河童というイラストレーターが「河童がのぞいたXX」というシリーズの本を出していて、その中でドイツのヴァルターP38とソ連のトカレフTT33という拳銃からそれぞれの民族性を比較するという面白い考察をやっていた。
ドイツ人が作るものはとにかく徹底していて、類まれな高性能をこれでもかと盛り込むのではなく、とにかく確実に動作し機能することを志向するようで、前述のP38拳銃の安全装置は単に引鉄を引けないようにするような単純なものではなく、撃鉄を安全に開放し撃針もロックがかかるというように二重三重の安全機構がワンアクションで実現できるようになっているなど徹底している。
対してソ連のトカレフは安全装置そのものがなく、道具の運用における考え方そのものが根本的に違うというようなことが書いてあった。
私個人でもドイツ製品を使って思うのは、派手な機能などよりもまず道具としてきちんと使えるために動作が確実で無駄がなく壊れたりしないしっかりした設計と仕様を重視しているという点に大変好感が持て、つまりは私が大嫌いな「よい商品」などではなく「よい道具」に徹しているということだ。

ドイツにはDeutche gruntlichkeit(徹底するドイツ)という哲学があって、地道に足のついたことをまずしっかり固めるという考え方がある。
確実性というものに大変重きを置いていて、そのためか私のタイプライターに使われているドイツのマイナスネジは日本のネジの二倍は硬い気がする。
工作精度や素材の強度も十分吟味されていて、とにかく「きちんと」「真面目に」作っている印象を強く受ける。
ドイツ製品はかつてカメラのLeicaが有名だが、ライカの良さとはなんだろうかということをカタログスペック的に語ろうとすると、意外にもキャッチコピー的に語れるようなことが少ないことに気がつく。
ライカの良さは1にも2にもまずは壊れないことだといえる。
昔韓国のカメラマンに聞いた話では、どんな状況でも確実に動くという信頼性がライカ以外のカメラとまるで違うのだそうだ。
道具として安心して使えるということは他社製品と差別化を図るためのキャッチコピーとしては日本では弱すぎるのだろうが、そういうモノづくりをするドイツを私は大変尊敬している次第だ。

若い頃中国に留学していた時に、ドイツ人の友人がいた。
Ich hatt` einen Kameradenといったところだろうか。
いろんなバカなことを1994年当時の中国でやったもので、
Haha, you Japanische lazy great geographer Kurosaka lost again!
Shut up you fuckin` Deutcher, go back your fuckin` Deucheland!
などと言い合いっていたものだが、私の写真の師匠でもあって、いろんなことを奴から学んだ気がする。
奴の部屋はいつも綺麗に整頓されていて、無駄なものがなく、カメラ機材もいつもピカピカだった。
建築の学生だったことから字や絵も几帳面で、書くもの全てが図面のように見えたもので、我々が描くものとは鉛筆の線からして違う気がした。
特にすごいことをやっているわけではないのだけれども、やることがいちいちちゃんとしているので結果基礎的な素養に大きな開きが出てくるようだ。
これはライカのカメラにも言えることで、ライカ公司は当たり前のことを当たり前にやった結果すごいカメラを製造していると言える。
そんなドイツ人が作るものを私は無条件でありがたがる習性があって、この洗剤「緑の魔女」にも大変期待をかけているのである。

この「緑の魔女」という洗剤は単に自然分解されにくいケミカルな化合物が使われていないというような消極的な環境にやさしい製品ではなく、生化学的に汚れを分解するという積極的に環境にやさしいという点が大変気に入っている。
つまり、単に服の汚れを落とすだけでなく洗濯機自体やその先の配管まで綺麗にするというもので、本当にそうならこれはすごいことだ。
この洗剤はだいぶ前に買ったものだがコストコで買った巨大なアメリカの洗剤があるうちは使えず、今朝になってようやくコストコの洗剤がなくなったので今晩初めて使ってみた。
使ってみた感じとしては、妙な匂いがする香料が一切使われていないので洗濯物はほぼ無臭、洗濯機が綺麗になるかどうかはさすがにまだわからないが、しばらく使ってみて配管の内側を覗いてみようかと思っている。
効果があるようなら食器用洗剤も試してみようと思っており、ゆくゆくは10リットル入りのものを買ってわが家の定番洗剤として長く付き合ってみたいものだ。

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